2021年12月28日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第28話(最終回)

 しばらくして、オレたちは新居にいた。ここは空気がいい。まわりの自然も豊かだし、庭先で農園だって作れる。

「さあ、越してきたし、まわり近所への挨拶も終わった。ペルーへ行こう。」

「ワタル、ありがとう。」


 だが、ペルーまでは、24時間以上かかるフライトらしい。直行便はないので、乗り継がないといけないらしい。オレたちは、ロスでの乗り継ぎを選択した。そういえば、最近はトラブルがない。いいことだけど、なんか嫌な予感がする。でも、そんなことマリアに言えないしな。


 長いフライトの中で、オレはかおりちゃんのことを考えていた。彼女がヨーロッパに行きたいと言わなければ、オレは絶対に行ってなかった。オレとマリアとの出会いは、やっぱり、かおりちゃんが仕組んだことなんだろうか。そう思ったら、オレはマリアを大切にしないとと思うのだった。


 ようやく、ペルーについた。マリアは自分の庭のように、迷うことなく、タクシーに乗り、家まで走った。ここが、マリアの実家だ。結構、豪邸じゃん。オレはマリアに多少習ったスペイン語で挨拶し、家に入った。すごい、歓迎っぷりだ。オレが想定していた通り、日本のマリア状態だ。数日間のペルー滞在と結婚式、宴会をやり遂げ、オレたちは帰りの飛行機に乗った。ようやく、日本へ帰れると思うと、かなりほっとしている自分がいる。


 だが、その飛行機に嫌なヤツらが乗っていたのだ。ハイジャッカーだ。オレもマリアも気づいていた。犯人が何人いるのかはまだわからなかったが、オレがわかっているだけで、2人。マリアもその2人には気づいていた。

「マリア、何もするなよ。」

「わかった。でも、どうするの?」

「何人いるかを先に突き止めないと。」

「そうね。」

だが、それは簡単にわかることになった。突然、何かの合図で、ハイジャッカーたちが立ち上がったのだ。3、4、5、6人。6人だ。オレはすぐに、両手肘を爆弾化しようと思ったが、あんまり血肉が飛び散るとまずいので、両手首の小さな骨にした。すぐさま、爆破した。連中は刃物や拳銃を落とし、顔をゆがめて呻いている。近くの人たちが、凶器を取り上げ、犯人を押さえてくれた。だが、まだ、いたのだ、多分、主犯格だ。そいつか、取り押さえている乗客1人に切り付けた。オレはすぐさま、同じように爆破。ソイツも刃物を落とした。くそ~、7人いたのか。乗務員は医者がいないかと声を上げた。たまたま、医者と看護師が乗っていたので、救急救命をすることができた。


「また、ワタルの守護霊?」

「ああ、そうだな。」

「すごいね、ワタル。」

飛行機は最寄りの空港に一旦着陸することになった。結局、全員から聞き取りが行われ、数時間、拘束された。日本まで遠いな。


 ようやく、アメリカのロスで日本行きの飛行機を待っている時だった。変質者が子供を盾に大きなナイフを振り回している。またか。と思ったら、オレたちの近くで殴り合いが始まった。どうなってるんだ。オレはとにかく、変質者の手を爆破。刃物を落とし、痛そうにうずくまったところを、警官が取り押さえた。で、こっちは?殴り合いは2人だったのが、広がっている。まずいぞ。オレは目についた連中全員の手首を爆破。そのとたん、殴り合いはおさまった。だが、新たな暴徒が殴り合いを始めたので、それも爆破。沈静化するのだ。ようやく、誰も殴り合いをしなくなった。なんてところだ。


「ワタル、もしかして、ワタルがやったの?」

えっ、しまった。マリアに気づかれた?

「いや、オレじゃないよ。」

「でも、そうにしか見えなかった。守護霊なんて、うそじゃないの?」

だめだ。完全にわかってしまったみたいだ。

「いや、オレは知らないよ。」

「私にだけ、本当のこと、言って。」

どうしようか。マリアはどう思うんだろう。困った。

「ねえ。」

まずいな。もう、隠すことはできないよな。

「わかった。マリアにだけ、言うよ。」

「うん。」

「オレの能力なんだ。相手の骨を爆弾化して破裂させることができるんだ。」

「ほんとなの?」

「ああ、小さな骨なら、体の中で弾けるだけだから、血が出ることがないけど、大きな骨を破裂させたら、吹っ飛ぶ。」

「あの時の人たちの腕が飛んだのも、ワタルがやったのね。」

マリアは震えている。オレは別れを覚悟した。

「そうだ。ハイジャッカーたちもそうだ。オレがやった。」

マリアは震えて、手に顔をうずめて泣き出した。

「オレにはどういうわけだか、トラブルが多い。そんな時、身を守るためにしか、使っていない。今の場合は、沈静するためだ。トラブルが起こらない限り、こんな能力は使わない。でも、マリアがそんなオレが嫌なら・・・仕方がないな。」

「・・・」

「黙ってて、すまなかった。」

マリアはオレから去っていくだろう。仕方がないことだ。こんなヤツ怖いだろうしな。

「ワタル。」

「んっ?」

「でも、愛してるの。」

「どんなワタルでも、私は愛してるの。」

そういうと、オレに抱き着いた。オレはキスをした。

「ありがとう。」


 長い抱擁とキスのあと、マリアは微笑んだ。

「私だけの秘密にしてあげる。」

「ありがとう。」

長いフライトも終わり、ようやく日本に帰り着いた。オレたちは、新しい新居へと向かった。もう、何も起こらないでほしいと思った。マリアにしてみりゃ、オレがたくさんの人を殺したり、傷つけているのが嫌だろうし、やっぱり、警察官なんだからな。


 K市の警察に行くと、マリアは大歓迎を受けた。東京の前田刑事からの口添えだけじゃなく、ペルー警察からの推薦状もあったらしい。マリアはK市の警察官として、働けることになった。まあ、こんな田舎だからマリアを知らない人はいない。みんなに声を掛けられる。


 オレはオレで、今までと同じ仕事を続けた。長らく、休んでいたんで、かなり、お客さんたちは待っていたみたいだった。で、寝る暇もしばらくなかった。ようやく、落ち着いて、普段通りの仕事に戻ってからは、のんびりした生活が待っていた。オレはマリアと、たまに近くのスイスを見に行く。いいところに越してきたもんだ。マリアもうれしそうに景色を眺めている。オレは時たま、マリアからの連絡で、犯人逮捕を手伝ったりしている。それくらいはいいだろ。マリアも容認しているしな。この先、大きなトラブルはごめんだ。オレは、マリアと楽しく、暮らしていきたいのだから。



おわり




posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月27日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第27話

 翌日、オレはマリアに両親に会いにいくことを話し、実家へと向かった。

「ただいま。」

「あれ?ワタルか。どうした?」

「どうしたもなにも、1人息子の帰還だろうが。」

「前もって、連絡でもしてくれたらいいのに。おや、その人は?」

「マリア、オレの嫁はん。」

「へぇ?お父さん、大変だ。ワタルが嫁さん連れてきよった。」


 改めて、オレは両親を前に、マリアを紹介した。

「マリアです。ペルーから来ました。どうぞ、よろしくお願いします。」

「マリアは日本語話せるから、安心してな。」

「おまえ、どこで知り合ったんだ?」

「旅先で一緒になって、そのまま、嫁はんにした。マリアは警察官で、日本でも警察に就職する予定なんだ。」

「どうりで、立派なからだしとると思ったわ。」

「ワタルより、背が高いんとちゃうか?」

「ああ、オレより高い。」

「今日は泊まっていけるんか?」

「そのつもりだけど、いいんか?」

「なんにもないけど、ゆっくりしていけ。」

「ありがとう。」

「マリアさん、じゃ、手伝ってけろ。」

「はい、おかあさん。」

マリアはおふくろと庭先に出て行った。


「まあ、突然だけど、国際結婚になっちゃったよ。」

「いいんだな。」

「ああ、オレが決めたことだ。」

「おまえさえ、いいなら、こちらは何も問題ない。」

「ありがとう、親父。」

「で、ペルーで結婚式するんで、どうかな?」

「そんなところまで、いけるか。」

「そういうと思った。だから、ハイこれ。」

「なんだ?」

「これで、ペルーでの結婚式を見れるから。」

「そうなのか。」

「操作がわからなかったら、隣の健介に聞いたらいい。」

健介はオレの同級生で、ずっと、ここに住んでいる。と、いいタイミングで現れやがった。

「ワタル、久しぶりやん。」

「おお、健介、相変わらずだな。」

「ところで、庭におる外人は?」

「オレの嫁はんだ。」

「おめ~、外人と結婚したんか?」

「ああ。」

「すげーな。」

「でな、ペルーで結婚式すっから、これで中継をやってくんない?」

「ええで、まかせとけって。」


 まあ、そんなこんなで近所中の連中が集まってきた。当然、晩御飯時なんで、みんないろんなものを持ち寄ってきた。オレの実家は、すごい賑わいだ。マリアはペルーと一緒だと喜んでいる。

「ちゃんと、ワタルから紹介せんといけんわ。」

「わかったよ、マリアおいで。」

「おお。」

「ヒュー、ヒュー。」

「え~、オレの嫁さんを紹介します。マリアと言います。ペルーから来ました。」

「マリアです。よろしくお願いします。」

「マリアちゃん、よろしくね。」

「よろしく。」

マリアはみんなから、いろんな質問されても、笑顔で答えている。オレには耐えられんけどな。でも、ペルーでそうなることを覚悟しておかねば。

「マリアちゃん、座ってると、みんなと変わらないのに、立つと大きいのねぇ。」

足が長いってことだろ。それから、太い腕の話になった。警察官をしていて、トレーニングを欠かしたことがないからだと説明していた。それにもみんな、感心していた。


 宴も終わって、あと片付けも終わり、ようやく静かな時を迎えることができた。

「日本もペルーと同じで、楽しかった。」

「よかったな。」

「ワタルでよかった。」

両親の目の前で、オレに抱き着き、キスされた。

「あんれまあ、仲の良いことで。」

「こういうことは、外人なんで。」

「どうぞ、ごゆっくり。」

マリアは離してくれない。まあ、付き合うか。オレたちは自分たちの部屋に行き、長い夜を過ごした。





(つづく)


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2021年12月26日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第26話

 オレたちは早速、K市へ向かった。マリアは日本の電車も初めてだったし、タクシーも初めて、何もかも初めてづくしで、とても楽しかったみたいだ。K市の駅からレンタカーを借りて、ずっと登って行った。すると、山の感じがスイスっぽくなってきた。くるまを降りて、ローブウエイに乗っていくと、まさにスイスだった。

「日本のスイスです。きれい。」

「いい感じだね。」

「ワタル、ここに住みたいです。」

「いいねぇ。」

といっても、この場所では何かと不自由なので、市内に戻り、賃貸の一軒家を探してみた。すると、おいおい、オレのアパート以下の値段で一軒家があるじゃねえか。オレはマリアと不動産屋に案内してもらった。


「うわ~お。こんなに広い。いいねぇ。」

「築年数は30年ですが、平屋の一軒家で3DK、家賃4万円です。」

「ここらの相場はそんな価格か?」

「高いですか?なら、もう少し安いところとか・・・」

「まあ、今日は、ホテルに泊まるから、また、明日、伺うよ。」


 ホテルでマリアと話した。

「ここら辺の賃貸物件はめちゃ安いよ。」

「そうなの?」

「オレの仕事の収入でも楽勝だ。」

「なら、ここに住んじゃいましょうよ。広い部屋だったし、部屋も多かった。」

「くるまさえあれば、いつでもスイスの光景を見に行ける。」

「最高です。明日、警察署にも行ってみたいです。」

「わかった、連れていってあげるよ。」

「楽しみです。」

オレたちは、ホテルの山の幸のディナーを楽しんだ。


 翌日、オレたちは警察署を訪れた。

「はい、何か御用ですか?」

「警察に入りたいです。」

「はぁ?」

婦人警官はびっくりしてる。

「ちょっと、待って下さい。」

奥から男性警官がやってきた。

「じゃ、話はこちらで伺いましょう。」

オレたちは応接室に通された。

「私、ペルーで警察官してました。日本人のワタルと結婚したら、日本の警察に入りたいです。」

「ということです。今、募集してますよね。」

オレはポスターを指さした。

「確かに。ですが、いろいろと書類を用意してもらわないといけませんから。」

「わかりました。でしたら、用意するものを教えて下さい。」

こんな小さな町の警察なんで、あっという間にマリアの話は広まったらしい。オレは前田刑事に連絡を取って、このK市に住みたいことと、マリアがこの町で警察官になりたいと話した。そしたら、一応、連絡してくれることになった。


 オレたちは何件か一軒家の賃貸を見て、2人でこれという物件を決めた。2人じゃ広めの4LDKで、月4万5千円だ。当然、庭付だ。契約だけして、一旦、元の部屋に帰ってきた。


「あ、小林くん、K市の警察じゃ、えらい話になってるよ。」

「そうですか。」

「一応、口添えはしておいたから、書類作成してもっていったらいい。」

「ありがとうございます。」

ペルーからの証明書やらを取り寄せるのに、10日以上掛かったが、オレは肝心なことを忘れていた。婚姻届だ。結婚式はペルーでするとして、日本でこの届を出しておかないとだめだ。オレの両親もびっくりするだろうな。


「この紙はなんですか?」

「日本の結婚の届け書だ。」

「ワタル、大好き。」

マリアのキス攻撃は、セントバーナードにベロベロなめられている心境だ。オレたちは、一緒に届け出を出しにいった。

「はい、お受けします。」

「どういうこと?」

「結婚、成立ってことだよ。」

「ワタル、愛している。」

また、抱き着かれて、キス攻撃されまくった。役所の担当に、写真を取ってもらって、マリアは上機嫌だった。だが、見ている職員にしてみれば、ちょっと目をそむけたくなるだろう。

「結婚式はペルーでしような。」

「うん。」

さて、オレの両親に一応、紹介せんとな。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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