変わりゆく未来 第3話

 確かに妹はうざいかもしれない。いちいち、突っ込んでくる。たまらん。食事中、ずっとテレビがついていた。その中で、1つの事件をニュースが報道された。

「○×電鉄の車内で、会社員、高橋和夫さん42歳が突然倒れ、救急車で運ばれましたが、死亡が確認されました。そばにいた乗客の話によると、高橋さんは一度倒れましたが、すぐに回復し、問題なさそうに思われましたが、二度目に倒れた時には意識は戻らなかったとのことです。」

 それは、自分のことだった。マジか!?ということは、もう二度と自分には戻れないということだ。これから先、ずっと、この中学生として生きていくしかないのだ。でも、高橋という自分だったことは、ずっと内緒にしていないといけないな。そうなると、この中学生はいったいどこに行ってしまったのでろう?自分ではどうにもならないことは、考えないでおくべきなのか。

 さて、そうなると、これからどうしたらいいのだろうか?ん、やけに冷静な自分に気が付いた。あれだけ、テンパっていた自分だったのに、今はやけに冷静に考えている。外見がどんなに変わっても、自分は自分だ。性格は変わりっこない。とにかく、このままだと家族からおかしいと思われてしまう。すでに、妹には見抜かれているが、一度、母親にきちんと話をした方がいいだろう。温和な優しい人なので、分かってもらえるかも。とりあえず、記憶喪失になったことを相談しよう。

「あの、おかあさん、ちょっといいですか?」
「な~に?改まってどうしたの?」
「お兄ちゃん、やっぱり、変!」
 ほんとに妹はうざい。自分の部屋に行っててほしい。
「ちょっと、相談があります。」
「ますます、怪しい!!」
「ちょっと、ユミは自分の部屋に行ってて。」
「え~、私も聞きたい~!」
「ユミ、お兄ちゃんがそう言っているんだから、行ってなさい。」
「は~い。」
かなり不満そうに二階に上がっていった。

「どうしたの?」
「実は帰宅途中に記憶を失ったんです。自分が何者なのか、家がどこなのか、どんな家族構成かもわからなくなった。福田という友人に教えてもらったので、今ここにいます。」
じっと、私の顔をみていた母親は、マジな顔をして、
「明日、病院へいきましょ。」
 と言った。すぐに信じてもらえたのでほっとした。そうなると、確かに病院ってことになると思う。

「ヒロシの今分かっている記憶を教えて。」
「今の記憶は、福田くんに教えてもらったことだけです。この家の場所も、彼に教えてもらいました。僕が記憶を失った時に、たまたま、福田くんがいてくれたおかげで、ここまで帰ることができたんです。そうじゃなかったら、そのままずっと電車の中にいたかも知れません。」
「大丈夫?どこか痛いとこない?頭を打ったとか?」
「いえ、何もないです。本当に突然こんなことに遭遇したみたいです。」
母親は急に泣き出した。
「なんで、あなただけそんなことになるの?なにも悪いことなんかしてないのに。」
確かにそうだ。この中学生は何も悪いことはしていない。電車で騒いていただけだ。本当の彼は今どうしているのだろうか?私にはそれすら、わからない。
「おかあさん、泣かないで。体調は悪くないので、大丈夫だから。」
「でも、でも」
母親の涙は止まらない。

「あ~、おかあさん、泣かした!」
でた。また、妹だ。
「なんか、ひどいこと言ったんでしょ!」
「ユミには理解できないことだ。二階に上がっててくれよ。」
「だめ。おかあさん、泣かしたんだから、行かない。私はおかあさんの味方なんだから。」
 おいおい、お兄ちゃん大好きなんじゃないのかよ。でも、仕方がない。隠していてもわかることだし、逆に言っておけば、味方になることもある。
「わかった。ユミにも話をしておくよ。おかあさん、いいよね?」
「うん。」
「僕は、記憶をなくしてしまったんだ。だから、今までどんな人格だったのかもわからない。ユミが言っていたように、本当におかしくなったのかも知れない。」
「わかった。やっぱり、そうだったのね。」

 こういうことは、子供の方が理解しやすいのかもしれない。
「突然、そんな病気を発症したもんだから、おかあさんが泣き出しちゃったんだ。」
「それって、病気なの?」
こういうところが子供だな。
「それがわからないから、明日、病院に行って検査してくるんだ。」
「私も心配だから、一緒にく。」
「学校を休みたいだけだろ?」
「そんなことないもん。」
まあ、こんな会話になるよな。

 なんか、落ち込んでいる母親はとてもかわいそうだ。年齢的には、本当は私の方が上のような気がするけど、今は息子なのだ。
「からだは本当にどこも痛くもかゆくもないよ。でも、記憶がないことについて、頭の中の話かもしれないから、CTとかMRIとかの検査が必要かもしれないね。」
「お兄ちゃん、結構、物知りなのね。」
しまった。普通の中学生はこんなこと知ってる方がおかしいか。
「おかあさん、そんなに落ち込むことないよ。当の本人がそう言っているんだから。」
「そうよね、ありがとう。」
 ようやく、落ち着いてくれたみたいだった。でも、本当に優しいおかあさんでよかった。

「ただいま」
玄関の開ける音がして、男の声がした。父親の登場だ。
「おとうさん、お帰り~!」
ユミが出迎えた。
「あのね、お兄ちゃんが大変なの。」
早速、ユミの説明が始まった。えっ、だけど、この顔どこかで見たことが。


(つづく)

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