変わりゆく未来 第5話

 だけど、この部屋を一人で独占か。いいなあ。武田の稼ぎは結構いいのかも知れないなあ。さすがに、パソコンは個人使用という訳ではないらしい。とりあえず、スマホだけでいいという世代なのだろう。だけど、○フォンだなんて、贅沢なヤツだ。使い方はまだまだ初心者だけど、金額が高いのは知っている。よく、こんなん買ってあげたもんだ。まあ、自分が使うのだから、いいということにしょう。

「おにいちゃん、ご飯食べよう。」
「はーい、今いきます。」
母親と二人でご飯だ。
「おかあさん、今までとまったく別人格みたいなボクは気持ち悪くない?」
「何言ってるの?そんなことないわよ。」
「今までの自分がどんな自分だったのかわからないから、どのように振る舞えばいいのか分からない。」
「気にしないでいいのよ。今のあなたらしく生きていけばいいの。そんなことに気を使わなくていいの。」
「そっか、ありがとう。」
やっぱり、優しいおかあさんだ。でも、自分より年下なんだよな。笑うと可愛いな。武田はいい人と結婚したんだな。うらやましいよ。

 その後、しばらく自分の部屋でゆっくりしてたら、ユミが帰ってきた。早いものでそんな時間か。
「あら、ユミちゃん、今日は早いわね。」
「だって、お兄ちゃんが心配なんだもん。」
「相変わらずね。」
「うん。」
ドドドドっと階段を上がってくる音がしたとたん、
「お兄ちゃん、どうだった?」
と突然ドアが開いて入り込んできた。しっかり、寝たふりしてたけど、
「あ、寝たふりしてる~!」
とあっさり、ばれてしまった。仕方がないんで、
「なんともないみたいだよ。今までと感じが変わって気持ち悪いだろ?」
「そんなことないよ。あっちいけ~!とか言わないし、私は今の方がいいと思うよ。」
「また、突然、前のオレに戻ったらどうする?」
「ん~、今の方がいいから、ちょっとヤダな。」
「そっか。まだ、思い出せないことが多いから、いろいろと教えてな。」
「任しといて!」
そう言ったら、話題はあっという間に変わって、学校であったことなど、うんざりするくらい話し出した。私の心配はそんなものだったのか!まあ、小学生だし、そんなものかもね。とにかく、優しいお兄ちゃんとして、相槌打ちまくりで対応したが、もうたまらんわ。

 その夜、父親が帰ってきた。当然、母親は今日の話をした。私もその物音を聞いて、二階から降りて、父親のもとへ行った。
「大丈夫なのか?」
「はい、からだ的には何も問題ないようです。でも、記憶が全然ないです。どうして、こんなになってしまったのか、わかりません。」
「うむ、まあ、時間をかけてゆっくり直していけばいいと思うよ。ある日突然、記憶がよみがえることもあると思うしな。」
「はい、ありがとうございます。」
「今のヒロシは礼儀正しいし、そのほうがいいかもな。ww」
まあ、そうだろうな。いままで、どんなヒロシだったんだ。少なくとも、反抗期になることは多分ないと思う。家族にとっては、その方がいいだろうしね。
「明日は福田クンと学校に行ってみます。学校までの道のりも思い出せないし、クラスの様子もわからないので。」
「わかった。いい幼馴染がおってよかったな。」
「本当にそう思います。」
ということで、明日は、学校へ冒険に行ってくることにした。

 翌朝、福田に学校へ連れて行ってもらうことになった。駅までの道も多少複雑で分かりづらい。駅からは電車1本なのが助かる。学校へは最寄の駅から10分ほどだった。通勤時間を考えると、かなり時間が短くて助かる。でも、こんなにたくさんの荷物を持って学校に行っているのかと思うと、ぞっとする。自分の時はこんなに担いでいなかったように思える。

 福田には予め、グループの仲間を教えてもらっていたが、なんせ顔が分からない。教室へ行く前に、母親に言われていた通り、職員室へ行った。高木先生という担任の先生に私からも事情を説明するためだ。福田と別れて、職員室へ。

「おはようございます。高木先生いらっしゃいますか?」
「おーい、こっちだ。」
大きく手をふる男の先生を発見した。早速、先生の元へ行った。
「おかあさんから事情は聞いた。大変だったみたいだな。先生のことは覚えてるのか?」
「いえ、申し訳ありませんが、全然、覚えていません。」
「まあ、焦らずだな、ゆっくりリハビリするんだな。このあと先生と教室へ行こうな。」
「はい、よろしくお願いします。」

 こういったやり取りをしていると、大人の社会もあまりかわらんなと思えてくる。しかし、私という生徒はいったいどういう生徒だったのだろうか?教室のみんなの反応が気になり始めた。転校して初めて教室に連れて行かれる気分って、こんなんだろうか?

 チャイムがなり、先生と教室へ向かった。2年2組の教室だ。
「おはよう。日直!」
「規律、礼、おはようございます。着席。」
「今日は、武田のことでみんなに話がある。先生も詳しい原因はわからんが、武田は過去の記憶をなくすという病気で、みなさんのことを何もかも覚えていません。だから、みんなでいろいろと教えてあげて下さい。」
「え~。」
とか、みんなからいろんな驚嘆の声が上がった。
「はい、静かに!」
そう言って、先生は私に合図を送った。なんか、しゃべれって感じだ。
「自分のことも、今までどうしていたのかも思い出せません。みなさんの顔も名前もわからないので、本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」
「オッケー、まかしといて!」
それなりにいろんな賛同の声が上がった。


(つづく)

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