変わりゆく未来 第33話

 その後、私の宿泊予定を確認させて頂いて、部屋に戻った。夕食までは時間がある。お風呂にでも行ってこよう。と、思うのだが、からだが動かない。やっぱり、気が重いのだ。
そのまま、夕食の時間まで、部屋に閉じこもっていた。あんまり、食欲はないのだが、ちょっとは食べておかないとと思い、食堂へむかった。そこには、佐々木さんたちもいた。

「あの、ここよろしいでしょうか?」
「どうぞ。」
私はあえて、同じテーブルに座った。
彼女たちはかなり沈んでいた。私は、ここにいるのにと言いたかったが、そういうわけにはいかない。
「なにか、あったのですか?」
私は声を掛けた。
「この旅館の若女将が亡くなったのよ。」
「若女将は、私たちの仲の良い友達だったの。」
「せっかく、みんなで久しぶりに会いにきたのに。」
「そんなことが・・・」
私はここにいるのに。

 その後はほとんど、話することもなく、淡々と食事をして、私は先に席を立った。
「ナオさんは、佐々木さんたちが今でも大好きだと思いますよ。でわ、お先に。」
私はそのまま、部屋に帰った。

「ちょっと、今の人、なんで知ってるの?」
「えっ?どういうこと?」
「だって、若女将がナオっていうことも、私たちが佐々木さんたちっていうことも、言ってなかったのに。」
「ほんとだ。なんで?」
「私、あとで聞いてくる。」
私は、ちょっと期待していた。佐々木さんが来てくれることを。

 こんこん。
「はい。」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
佐々木さんたちだ。3人とも来てくれた。
「さっき、食事の時にあなたが言ったことが気になって。」
「どういうことでしょうか?」
「私たちが確か、お話ししていないことを、あなたがおっしゃってましたから。」
「そうですか?」
「あの時、お話ししていない若女将の名前や、私の名前を言っていたので、なぜなんだろうと思って。」

 わかってくれるかな?私はかなりドキドキしていた。でも、こんな話していいのかな?私の中でかなり葛藤している。こんな話をしていいのだろうか。
「うまく説明できないです。」
「どういうことですか?」
どうしよう。わかってくれるだろうか。
「カズちゃん、私。」
「もしかして、ナオ・・・」
「うん。」
「本当にそうなの?」
「信じてもらえないかもしれないけど、私、橋本直美なの。」
「やっぱり、そうなのね。」
浜口さんも加藤さんも、信じられない顔をしているけど、理解してくれた。

「いったい、どういうことなの?」
「私もわからないわ。突然、このからだに私は入っているんですもの。」
「私はナオだって言ったらどうなの?」
「そんなことできないわ。」
「どうしてよ。」
「だって、このからだは青木千鶴子なの。まったく、違う人なのよ。ナオとして名乗り出たら、青木さんがいなくなってしまうもの。」
「これからは青木さんでいくしかないのね。でも、私たちにはナオと話ができるってことよね。」
「ナオは死んでしまったけど、私は青木さんとして生きていくしかないみたい。」
なんとか、分かってもらった。
「じゃ、私たちは青木さんとお友達になったということね。」
「そう、それでお願い。」
「で、青木さんの情報は分かっているの?」
「九州に住んでいるらしいの。」
「なんでこの旅館に?」
「びっくりしないでね。実は、自殺しにきたみたいなの。」
「え~、ほんと?」
「この青木さんの仲の良い友達から何度も連絡が入っていて、とても心配されたわ。」
「その人と話をしたの?」
「うん、ほっておくわけにはいかないから。」
「じゃ、すぐに帰るの?」
「いいえ、帰ったら連絡するって、言っておいたの。」

 そこまで、じっと聞いていた浜口さんが、口を開いた。
「ナオ、前に記憶をなくしたって言ってたよね。今回も青木さんとしては、記憶をなくした青木さんだよね?」
やばい。私が転々と移動していることがばれる。
「そうね。」
「じゃあ、ナオの前は誰だったの?」
「私は私よ。橋本直美。その前なんてないわ。」
「浜口ちゃん、考え過ぎよ。」
「そうそう。」
「私の考え過ぎかな?」
なんとか、疑惑はおさまったみたい。ほっとした。

 それからカズちゃんたちは一旦、自分たちの部屋に帰っていった。私は、内田さんに連絡をとって地元の駅近くで待合せることにした。やっぱり、みんなに言うべきではなかったのかな。ちょっと後悔してるけど、今度はみんなとつながっていることがうれしかった。



(つづく)

この記事へのコメント