変わりゆく未来 第34話

 翌日、みんなにお別れを言って、私は一足先に、旅館を後にした。その日のうちに、地元の駅に着いた。果たして、内田さんはどんな人なんだろうか。ほどなくして、内田さんの方から声を掛けてきた。
「千鶴子」
「ありがとう。ここまで来てくれて。」
「何言ってるのよ。友達じゃない。」
私は内田さんにお願いした。
「変なこと言うけど、私の家知ってる?」
「ん?どういうこと?」
「私の住まいまで連れて行ってほしいの。」
「いいけど、ここからすぐよ。でも、あなたの家なんだから知ってるでしょ?」
「知らないの。記憶がないの。」
「え、どういうこと?」
「家でお話しするわ。」
「わかった。」

 私の家は、マンションの2階だった。中は2DK。結構、広い。
「ここが我が家なのね。」
「いったい、どういうことなの?」
「内田さんには、詳しく話をするわ。」
「内田さんなんてやめてよ。知美でいいわよ。」
「わかったわ。」

 私は、自殺寸前のところで、意識を失ったこと、その後は以前の過去を忘れてしまった自分がいたこと、知美からたくさんの連絡があったことを話した。
「まさか、自分が死のうとしていたなんて、とても驚いたわ。」
「全然、覚えていないの?」
「うん。なぜ、そんなことを、私はしたの?知美は知っているの?」
「ちずちゃんは、彼に振られたのよ。あいつは二股してたの。」
そうだったのか。でも、それが死ぬようなことかな。
「でも、それくらいで、なんで私は死のうとしたの?」
おかしな質問だけど、仕方がない。
「あなたはそれほど一途だったのよ。」
「そっか。」
「でも、今の様子をみてると、問題ないようね。」
「心配かけてごめんなさい。自分でもなんでそんなことで死のうとしたのか、わからないの。」
「なら、もう安心ね。本当に心配したんだから。」
「ごめんなさい。」
「いいよ。気にしないで。」

 私はいつも友達に助けられている。いつも周りにいい人がいる。ありがたい。
「ところで、知美と私の関係はどういう・・・」
「そんなことも忘れたの?」
「ごめん。私のことで知ってること、教えてほしいの。」
「仕方ないわね。」

 私と知美は、子供の時からの友人で、同じ会社に入社して今に至る。私と知美は、営業事務をしている。よかった、それくらいならなんとか対応できる。。。と思う。

 とにかく、会社への初日は、知美に連れていってもらえることになった。私は無断欠勤していることになっているので、部長に絞られることを覚悟しないといけない。いつも最初はドキドキする。でも、なんとかなるだろう。

 翌日、知美に案内されて、会社へ出かけた。私はスカートしか持っていない。まだ、そんなに女性化していないので、恥ずかしくて仕方がない。今日、絶対にパンツを買いに行こうと思った。せめて、足首まであれば、なんとかなるのだが、膝が見えるスカートはあまりに短く感じて、恥ずかしい。

 私は知美に連れられて、更衣室へ。そこで、制服に着替えた。これまた、短いスカートだ。同じように膝が見えるくらいの長さしかない。これに慣れるのだろうか。私たちが自分たちの席に行くと、もう部長は出勤していた。知美は私に目配せして、謝りにいけとばかり、指示を出した。

「おはようございます、部長。」
「お、久しぶりだな、青木くん。」
「このたびは無断欠勤してしまい、大変、申し訳ありませんでした。今後、このようなことがないよう、精進させて頂きますので、よろしくお願いします。」
「おお、一著前に、挨拶するじゃないか。こっちへ。」
私は別室へ連れられていった。ここで、御子小言なのだろう。

「本当に申し訳ありませんでした。」
「ちゃんと、悪いことしたと思っているようだな。」
「はい。」
「それなら、今晩、私に付き合いなさい。」
「どういうことでしょうか?」
「今回のことを多めに見てあげるから、付き合いなさいと言っているんだよ。わかったかな?」
こいつ、セクハラか?
「今日はちょっと用事があって・・・」
「無理だというのかね。」
「はい。」
「それなら仕方ないね。本来なら懲戒免職なのだから、君がそういうなら、しかたないね。」
「そんな。」
ついていったら、何をされるかわからない。とても怖い。どうしよう。


(つづく)


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