変わりゆく未来 第36話

 その男は茫然としていた。たぶん、私の知り合いなんだろうけど、みんなにあれだけ言われていたので、怖い意識しかない。だから、からだが震える。
「こんなに震えてるじゃないか。おまえ、絶対痴漢だろ。」
隣人の男の人と、女の人が私を守ってくれた。私は女の人の部屋にひとまず、匿われた。外では、隣人の男の人と言い争いになっている。

 やがて、警察がやってきた。私も外にでて、話を聞かれることになった。結果、その男は、ここに近寄らないことをきつく言われて釈放。私は、なんとか自分の部屋に入ることができた。隣人の二人には、あとでお礼をしなくっちゃね。

 私が部屋でほっとしているとスマホが鳴った。取ると、さっきの男の声。
「いったい、どういうことだよ。ひどいじゃないか。」
「あなたは誰?」
「あ~?何言ってるんだよ。オレだ。」
「知らない。」
私は切った。

 その男は、桐嶋雄二という名前だった。私のスマホに登録されている。グループは会社になっている。こいつなのかな?私は知美に電話した。
「あ、千鶴子、どうしたの?」
「今、知らない男が玄関にいて、怖かった。」
「もしかして、桐嶋って言ってなかった。」
「今、その人から電話があった。」
「そいつは、大丈夫だよ。無害だから。」
「そうなの?怖かった。」
「たぶん、ショックで明日、会社にこないかもよ。」
「ええ~、どうしよう?」

 私は知美の話を聞いて、昔のPTSDの自分を、いつの間にか思い出してしまっていた。だから、男の人がどうしようもなく、怖く感じてしまっているのだ。このまま、自分の部屋にいても、もしかしたら、昔の男は鍵を持っていて、入ってくるのではと、不安になって、ほとんど寝れなかった。

 翌日、会社で、家の前にいた男の人、桐島くんに会った。当然、知美と一緒だ。
「話は内田さんに聞いたよ。」
「本当にごめんなさい。」
「まあ、そんな状況なら、オレでもそうするかもね。」
「すみません。」
「で、黒田には、まだ会っていないよな。」
「はい。」
「黒田は営業だから、毎日会うことはないと思うよ。」
「ちなみにオレは、技術開発部だからね。」
「だけど、大変だったな。」
「ありがとう。心配してくれて。でも、もう大丈夫だから。」
そう言ったものの、PTSDの症状がいつ出てくるかわからない。
「なんかあったら、オレたちが相談にのるからな。」
「千鶴子、私と桐島くんは味方だから、覚えておいて。」
「ありがとう。」
なんかすっごく、うれしかった。

 それからしばらくは、たぶん普通の日々を送っていけた。だが、それは突然起こった。私が家に帰ってきて、荷物を下ろし、椅子に腰かけたところに、突然、男の人が目の前に現れた。
「ひっ。」
「よう、久しぶりやん。なんでそんなひきつった顔してんだよ。」
この男が黒田?!
「帰って下さい。」
「そんなつれないこというなよ。オレとお前に仲だろ?」
恐ろしさのあまり、声が出ない。
「お前からもらったこの鍵も、大事に持っているんだ。また、やり直そうぜ。」
やっぱり、鍵を渡していたんだ。だから、家の中にいたのね。
「やっぱりよぉ、お前の方がオレには合ってるんだ。」
そういうと、私の腰に手をまわしてきた。逃げられない、そう思ったときにスマホが鳴った。
「ほっとけよ、お邪魔虫は。」
私は恐怖で声が出ない、体は震えてくる、で、意識が引きつっていくのが分かった。
「おまえ、汚な。」
私は引きつって、口から泡を吹いていた。完全に手足が引きつっている。自分ではどうしようもない。段々、意識が遠のいていく・・・



(つづく)

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