変わりゆく未来 第37話

 私が意識を取り戻したとき、病院にいた。知美と桐嶋クンが助けてくれたとのことだった。彼らが私の家にビールと食べ物を持ってきたとき、偶然にも黒田が私の家から出てくるところだった。
「黒田、てめ~、青木さんに何をした?」
「いや、オレは何もしてない。」
「嘘をつけ。」
「千鶴子、倒れてる!」
「お前、覚悟しろ。」
「いや、本当に何もしてないんだ。」
「千鶴子、大丈夫。泡を吹いているわ。救急車を呼んで。」
「お前、やっぱり。」
「本当に何もしてないって。」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょ。手伝いなさいよ。」
「オレたちが来なかったら、青木さんが倒れたまんま、トンズラしたんだろ。」
「千鶴子、起きてよ。口の中、詰まってない?」
「息してるみたいだから、大丈夫っぽいな。」
「でも、あんた、救護者の救急義務違反で立派な犯罪よ。」
「そんな。」
「あんたみたいなヤツ、警察でしばらくお世話になるといいわ。」
「助けてくれよ。」
そんなわけで、私は救急車に乗せられ、黒田は警察で取り調べを受けているとのことだった。

「あ、千鶴子、気が付いたのね。よかったぁ。」
「ありがとう、知美。」
「やっぱり、千鶴子は大丈夫って言っても、まだ精神的にダメージが残っているんじゃない?」
恐らく、昔のPTSDの記憶が尾を引いているんだと思う。
「そうかもしれないわ。」
「よぉ、シュークリーム持ってきたぜ。食べよう。」
「桐嶋クンは食べることばっかりやね。」
「まあ、いいやん。」
この二人は、いい友達だ。一番、ほっとできる。

 私も目を覚ましたので、警察の事情徴収をうけることになった。
「ということは、あなたが家に入った時に、黒田さんがすでに侵入していたということですね?」
「はい。」
「黒田さんから暴力を受けましたか?」
「いえ、受けていないです。」
「じゃあなぜ、引き付けを起こして入院することになったのですか?」
「すごく怖かったからです。」
「つまり・・・」
「ハラスメント・・・」
「あなたはどうしますか?訴えますか?」
「どのような訴えができるのでしょうか?」
「家屋侵入、ハラスメントいずれも可能です。」
「家の鍵を返してもらったら、侵入の方はいいです。ですが、・・・」
「わかりました。ハラスメントで対処しましょう。」
「よろしくお願いします。」

 黒田は、私の半径200m以内に近づかないことに、裁判所の決定がおりた。私は鍵を返してもらったけど、やはり、鍵を変えることにした。知らない人が勝手に侵入されていたことがとても怖かった。玄関は鍵の付け替えでよかったけど、窓側にも、二重の鍵を掛けた。警備会社とも契約した。部屋に防犯カメラを設定して、私のスマホに連絡が入るように設定した。これで、知らない間に部屋に侵入されても、分かるのでちょっとは安心できた。

 あとは、駅から家までの道のり。たいがい、誰かの人通りはあるので、大丈夫だと思うのだけど、いつもドキドキしながら歩いていた。そんなことも、落ち着いてきて、私はふと実家のことが気になり出した。
「そういえば、私の実家ってどういう感じなんだろう?」

 実家に関する情報を、自分の部屋の中から探そうとしたが、全然ない。なぜなんだろう。知美は知っているのだろうか?
「ねえ、知美。ちょっと教えてほしいんだけど。」
「なぁに?」
「私の実家って知ってる?」
「知ってるよ。でも、帰らないんじゃなかったの?」
「私と実家に何があったのかな?」
「そっか。それも忘れてるんだ。」

 私の実家はとても厳格な家で、それに耐えられなくなって、飛び出してしまっていたのだ。その飛び出す前に、家出もしていたらしい。だから、完全に親を怒らせてしまって、帰ることができない状態にあるようだ。

「じゃあ、私は一人で生きていくしかないのね。」
「私も桐嶋もいるじゃん。」
「ありがとう。」
そう言ってくれているものの、私はどうして生きていけばいいのか、わからなくなっていた。



(つづく)


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