変わりゆく未来 第38話

 何回も人生をリセットされてしまっている私は・・・、いや、リセットというのか、途中まで進んでいる人生に移り変わってしまっている私は、いい加減、嫌気が差してきた。なんで私だけ、こんなことになるのだろう。最初はよかったけれど、こんなにも移り変わってしまうと、もうどうしていいのかわからない。

 私は、どんなにこの人生で頑張って生きていっても、また移動してしまって、リセットされるのかと思うと、何もする気がおきなかった。こんなことを愚痴る相手もいない。いったいどうすればいいんだろう。2、3日休みを取って部屋に閉じこもっていた。

 そんな私のところに、連絡が入った。
「どう、ナオ。落ち着いた?」
なつかしいカズちゃんからだ。
「連絡ありがとう。大丈夫、なんとかやってる。」
「ほんと?大丈夫?」
「うん。」
「今度、そっちに行ってもいいかな?私一人だけど。」
「来てくれるの?うれしい。全然、大丈夫よ。」
「一晩、泊めてよ。」
「いいわよ。ぜひ、来てね。」

 数日後、カズちゃんがやってきてくれた。彼女に会えるのは本当にうれしい。
「本当に来てくれたのね。ありがとう。」
「ナオ、ひさしぶり。なんか、違和感は残るけどね。」
「外見が違うからね。ささ、入って。」
「おじゃまします。」
「ふ~ん、いい感じの部屋じゃない。」
「前の人のままにしてるの。」
「そう。」
「で、落ち着いた?」
「この人、いろんな問題を抱えていて、ちょっと大変なの。」
「どんな感じ?」
「なんか、実家とは断絶しているみたいだし、今は大丈夫なんだけど、・・・」
「何よ、どうしたの?」
「うん、それが・・・」
「言いにくいこと?」
「多分、前の彼氏の赤ちゃんをおろしているの。で、ちょっと、調子が悪いの。」
「え~、そうなの?」
「多分、大丈夫だと思うんだけど、大事をとって、あんまり無理しないようにしてるの。」
「もともとの自分じゃないからね。」
「これから先、いったいどうしていったらいいのか、ほんとはそれで悩んでるのよ。」
「そっか。私なら、話を聞いてあげられるよ。」
「それだけでも、うれしいわ。顔も見れたし。」
「そうね、今日はガンガン愚痴ってね。」
「ありがとう。」

 カズちゃんにいろいろ話をしているうちに、なんか心が晴れてきた。友達は本当にいいものだと思った。その日、私たちはお酒を飲みながら、遅くまでいろんな話をした。
「でも、私、この先、また移動したらって思うと、ほんとにやんなっちゃう。」
「えっ、どういうこと。」
「また、別の人のからだに移動した・・・ら・・・」
「えっ?」
しまった、思わず、言ってしまった。このことについては愚痴れないのに、飲んだ勢いで、やってしまった。

「それじゃ、やっぱり、浜口さんの言っていたことは本当だったの?」
どうしよう?困ってしまった。
「ナオじゃないってこと?」
「・・・」
「ねえ、答えてよ。」
「・・・」

 最初からの話はできない。元々、男だったなんて、絶対に言えない。
「カズちゃんには、本当のこと、言うわ。」
「本当のこと・・・」
「うん、最初の私は20歳のOLだったの。」
「それで・・・」
「最初の私は20歳で死んだの、で、気が付いたら、5歳の女の子になっていたの。その子は両親から虐待されてて、私はその虐待の真っただ中に移動したもんだから、今でもPTSDの症状がでるわ。それから、ナオになったの。」
「ナオになったときは・・・」
「うん、その5歳の子も亡くなったわ。」
「もし、今のこのからだから移動したら、間違いなく、この子も死んでしまうわ。」
「私は、延々と移動し続けるのかと思ったら、やりきれなくなったの。」
カズちゃんは黙って聞いてくれた。

「ごめんなさい。黙ってて。」
「そうだったんだ。じゃあ、本当のナオはもういないってことなのね。」
「ごめんなさい、うそついてて。」
カズちゃんは複雑な顔をして、しばらく、黙っていた。私はどのような判決が下されるのか、とっても怖かった。



(つづく)


この記事へのコメント