変わりゆく未来 第39話

 長い沈黙の後、カズちゃんは口を開いた。
「ナオ、あ、ナオって呼んでいいのか、わからないけれど、私は今のあなたが、ナオになってからのナオが一番親しみがあるの。だから、ずっと友達でいたい。」
私は感情が崩壊した。こんなに優しい言葉は聞いたことがなかった。

「あ、ありがとう。」
カズちゃんは私を抱きとめてくれた。私は本当に涙が止まらなかった。からだが震えてしまっていた。

「もし、また、移動しても、あなたにだけは、必ず連絡するからね。」
「お願いよ、絶対に忘れないでね。」
よかった、本当によかった。カズちゃんがいい人で。

 次の日、一緒にお昼を食べて、カズちゃんを見送った。すごく、気が晴れた気がした。もう大丈夫とまではいかないけど、どうしようもなくなったとしても、カズちゃんがいると思うと、本当にほっとした。なんとなくうれしくなって、駅からの帰りはルンルンだった。

 だが不意に、脇腹に激痛が走った。
「おまえのせいだからな。」
振り向くと、黒田がいた。私は一気に突き落とされた気分で、震えが止まらない。痛さより、怖さの方が先に立った。血がどんどん出てる。だけど、怖くて、怖くて、震えが止まらない。もう、このまま、私の人生も終わりなのかな。そう思うと、不思議とほっとする気持ちもあった。

「救急車を呼べ。」
「こいつ、逃げるな。」
「離せ。」
「止血するんだ。」
「気をしっかり持て。」
「ちゃんと、起きておくんだ。」
いろんな声が交錯する中、私は気を失った。

 私が目を覚ました時、真っ白な天井が見えた。生きてたんだ。すぐ、そう思った。でも、もしかしたら、違う人に移動してしまったのかもしれない。でも、いきなり、知美と見たことがないおばさんが入ってきて、私は移動していないことがわかった。

「あ、気が付いたのね。」
「千鶴子、大丈夫?」
知美は私にわかるように、こう言った。
「おかあさんも来てくれたわよ。」
この人、私の母親なんだ。

「大丈夫。まだ、痛みはあるけど。」
「おまえ、心配させないでおくれよ。」
「心配も何も、私は被害者よ。そんなつもりはないわ。」
「この子ったら。」
なんでか、わからないけど、反発した言い方になってしまった。

「知美、あいつは?」
「警察に捕まったわ。テレビでは、殺人未遂だって。」
「そう。」
「娘がこんな状態なのに、父親はこないのね。」
「チズ、おとうさんにそんなこと・・・」
なぜかわからないけど、ものすごく反発している自分がいる。

「おかあさん、もう帰って。」
「千鶴子」
「生きてるってわかったんだから、もういいでしょ。」
なんで、こんなひどい言い方になるのか、自分でもわからなかった。

 突然、ドアが開いた。
「ナオ、大丈夫?」
「あ、カズちゃん、ごめんね。心配かけて。」
「ナオ、本当に心配したんよ。でも、よかった、元気そうで。」

「ナオって・・・?」
カズちゃんがしまったという顔をした。私もそれに反応したことに、しまったと思った。
「ナオって、いったいどういうこと?」
「あなたたちはどういう関係?」
知美は疑惑の目をしている。困ったな、どうしよう。
「昔の知り合いよ。」
「そうそう。」
「ちょっと待って、私より前なんて、ありえないわ。」



(つづく)


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