変わりゆく未来 第40話

 しまった、知美は小さいときからの幼馴染、確かにそれ以前だなんて、ありえない。
「あ、私、用事あるから、帰るわね。元気そうでよかった。またね。」
そう言って、カズちゃんは帰った。そのほうがよかった。追及されるのは、私だけでいい。

「千鶴子、いったい今の人は誰なの?」
「ちょっと前に東北へ行ったでしょ。あの時に知り合って、よくしてもらったのよ。」
「でも、ナオって呼んでたわ、どういうこと?」
「その時、私が偽名を使ったから。」
「そういうことだったの。」
よかった、なんとかつじつまが合ったんで、納得してもらえた。でも、あぶないところだった。

「なんで、東北へ行ったの?」
今度は母親が問いかけた。
「別にいいじゃない。」
私は突っぱねた。
「もうおしまい。私は怪我人よ。これ以上、いい加減にして。」
そう言って、二人を追い返した。

 私はカズちゃんに連絡を入れた。
「あのあと、なんとかごまかしたわ。だから、もう大丈夫。」
「ごめんね、思わず、ナオって言っちゃって。」
「東北の旅行で知り合って、よくしてもらった人ってことにしてるから。」
「了解、ありがとう。」

 私は、2週間ほどの入院で、その後は自宅療養することになった。実際は1週間もしないうちから、歩けるようになったので、割と治りが早かったみたい。その間にいろいろ考えて、私はカズちゃんの近くにいたいと思うようになった。だから、会社を辞めて、知美とは遠くなるけど、カズちゃんの近くに引っ越しすることを決めた。

 完治してからは、行動が早かった。人知れず、退職願いを出して、会社を辞めた。知美には、一応言っておいたが、私の行動が信じられないと言って、かなり怒られた。それでも、私はもう決めていた。引っ越し先はカズちゃんの近く。2,3か月くらいは何もしないでも生活できる。でも、その間に仕事を探すつもり。

 こちらに来て、買い物しているときに、突然、震えが起こった。知らない男の人が近づいたときのことだった。おそらく、危ない人だと思った。近寄ってはいけない人だと思った。あれからというもの、そういうことにも敏感になっているように感じた。

「ねえ、ナオ、仕事どうするの?」
「どうしようかな、カズちゃんのところじゃ、私を知っているほかの人たちがいるからね。どこか、違うところを探さないと。」
「わかった。就職できたら、お祝いさせてね。」
「ありがとう。」

 なんとなく、ここがいいんじゃないかなって思ったところに、面接に行ったら、案外すぐさま採用が決まって、働けることになった。だが、初めての出勤の日、私は驚くしかなかった。

 その会社は、渡辺社長の会社だったのだ。いつの間にか社名が変わっていて、気づかなかったけれど、懐かしい顔ぶれをみてすぐにわかった。こんなことってあるのだろうか。私は感激のあまり、涙が止まらなかった。

「今度の新人、泣いてたでしょ。そんなに会社に入れたのがうれしかったのかな。」
「変わった子ね。」
「でも、ちゃんと働いてくれるかしら。」
「どうでしょうね。」
「案外、お茶くみで終わるかもよ。」

 いろいろ言われていたけど、私はとってもうれしかった。ここで働けるなんて、思わなかったし、また、みんなと一緒だなんて思わなかった。私の部下だった子たちは、それなりのポストについている。そのうちのひとりの下についた。

「よろしくお願いします。」
「結構、大変だけど、頼むわね。」
「はい。」
ああ、なつかしい。あんまり変わっていないし、作業も問題なくできる。次に何を頼まれるのかもだいたいわかる。こんな楽しい仕事、本当にうれしい。

「ちょっと、あの子、すごいわよ。」
「えっ、どうしたの?」
「一言ったら、十以上やってくれるのよ。すごすぎ。」
「そんなにできる子だったの?」
「初日に泣いていたから、大した子じゃないと思っていたけど、そうでもなかったね。」
「ほんと、びっくりよ。」

 私は他部署の人たちの仕事を見て、だいたいどうしてほしいのかわかったので、予めどんどん用意しておいた。
「おいおい、あの子、すごいじゃないか。」
「今回の採用は大当たりだな。」
「でも、なんとなく、誰かに似てない?」
「誰に?」
「姿形じゃなくて、その仕事振りが。」
「ええ~、そんな人いたっけ?」
「たぶん、知ってる人なんだけどな。」

 一カ月ほどして、私が所属する部署の懇親会があった。それぞれの部署の懇親会には、必ず、社長がくるのだという。私はかなりドキドキしていた。あの渡辺社長に会える。だけど、社長は、遅れてくるとのことだった。

 懇親会の席で、私は改めて、挨拶をすることになった。
「新人の青木千鶴子です。まだ、知らないことも多いですが、よろしくお願いします。」
「こんな短期間で、どんなことでもこなしてくれる期待の大型新人の歓迎会です。みなさん、乾杯。」
「かんぱ~い。」



(最終回へつづく)


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