小説 「アレスグート」  第5話

「で、どうしてわかったんですか?」
「いやいや、こればかりは企業秘密ですって。」
「そんなこと、言わずに教えてほしいです。」
「ほんまに無理ですって。」

まあ、たいがい信じてもらえないしね。そんな話から始まっていろんな話をした。
「で、そろそろ、教えてくれませんか?」
「よっぽど、知りたいんだね。」
「はい、お願いします。」
「じゃ、手を出して。」

 恵美の手を取って見ると、ああ、またやってしまった。全部見えた。
「実はね、これだけであなたの健康状態がわかるんです。」
「そうなんですか?すごいじゃないですか?」
「あのとき、手をふれたでしょ?それでわかったんですよ。」
「じゃ、今、私はどんな状態ですか?」
ちょっといたずらっぽい目をして、聞いてきた。
「やめとこう。」
「え、なんで?教えて下さいよ。」

 恵美はリンパ腺をガンにおかされていた。まだ、小さなものだったけど。
「じゃ、オレのいうことを信じて、いますぐ病院へいこう。」
とたんに恵美の顔色が変わった。
「うそ、うそでしょう?」
「マジだよ。」

 恵美はオレのいうことを信じてくれるのか、分からなかった。だから、病院へ行ってオレと同じ診断をしてもらったほうがいいと思った。
「じゃ、どんな状態なの?」
「知りたい?オレの言うことと、医者の言うことが同じだったら、信じる?」
「わかったわ。だから、教えて。」
「ガンだ。それもリンパ腺ガン。これ、進行早いよ。」
「うっそ~。からかってるでしょ?」
「だから、病院へいこう。」

 やっぱり、信じてない。
「早ければ早いほどいい。すぐに病院へいこう。」
さすがに、恵美の顔色が悪くなった。完全に怒っている。
「そんないい加減なこという人だったなんて。」
「でも、君の肩こり、言い当てたろ。」
「あっ。」
そうだった。と言わんばかりの顔になった。


 「よし、行こう。」
オレは恵美を連れて、病院へ向かった。病院で恵美は衝撃を受けることになった。診断はオレの言う通りだった。さすがに顔が真っ青になっていた。
「私、死んじゃうの?」
「いや、死なないよ。医者はああ言っていたけど、大丈夫だよ。」
「なぜ、そんなことが言えるの?気休めなんて言わないでよ。」
そんなに怒らないでオレの話を聞いてほしいんだけど。

「オレの能力、これだけだと思う?」
「どういうことよ。」
「きみのガン細胞を全部吸い取れるからね。」
「ほんとに?」
「だから、信じてっていったろ?」
「ほんとにほんと?」
「だけど、絶対、周りの人にはこのことは内緒だからね。」
「うんうん。」


 医者が翌日、家族の人を連れてくるようにと言われて、恵美は母親と病院に訪れた。その時に医者に言われたのは、1年宣告だったらしい。またもや、オレのこと忘れて、母親とわんわん泣いて大変だったらしい。

 「オレのこと、信じるっていったよね?たったら、なんでそんなに泣いてるの?」
「だって、お医者さんが、、、、。」
言葉にならない。
「心配しなくていいよ。ぜんぶ治してやるよ。」

 しばらくして、恵美をオレのボロ家に連れてきた。
「オレのいうことをほんとに信じてくれよ。そうでなかったら、治せないんだ。」
「うん、わかった。」
と言いながら、まだ、半信半疑の顔をしてる。
「恵美の指をちょっとキズつける。そこからガンをすべて吸い取るからね。」

オレは安全ピンで彼女の指をちょこっと刺した。
「痛っ!」
その指をくわえた。とたんに、恵美の体中のガン細胞が流れてきた。
 医者はもって1年なんて言ってたけど、どう見ても初期だったので、そんなに時間はかからなかった。あっという間に、終わった。恵美は気を失っていた。
 ここからが大変だ。相変わらず、苦しい。吐くことはなかったが、しばし、トイレに座ったまま。いつもの通り、後始末をして、恵美のもとへ。恵美はお気楽に寝ていた。まあ、そうだろ。悪いものが無くなってるんだからね。
 しばし、添い寝をして、恵美の顔を見ていた。やっぱ、美人だね。こんな娘が彼女だったらいいのにな。

 しばらくして、恵美が目覚めた。
「あら、寝ちゃったのね。」
「よう、生還した気分はどう?」
「え、本当にガンなくなったの?」
「きれいさっぱり、吸い取ったわ。」
「うそ?」
「うそちゃうで。病院に行って確認してみたら。だけど、絶対にオレのことは内緒だからね。」

 病院で大変なことになったそうだ。まったく、がん細胞が見られないとのことだった。
「うそみたい。どうなっているの?」
「だから、言ったろ?」
「あなた、魔法使いさん?」
「ああ、そうさ。」

 それ以来、つきあうようになった。オレの能力については口止めした。毎回、手を握って確認する。だから、いつも健康体だ。
 それに最近は、必要な栄養素も分かってしまう。だから、ずっと健康体でいられる。この能力は地味だけど、なかなかいいと思っている。ちょっとなら、すぐにトイレに駆け込む必要がないのがわかってきた。
 また、今は手から吸い取れるようになっていた。恵美には黙っているが、多少脂肪を吸い取って、オレ好みに体型を維持している。脂肪が吸えるなんてことはずっと黙っていようっと。
 当の本人は、太らない体質だと思っているかもしれない。恵美はオレと付き合うようになってから、風邪を引いたことがない。そりゃそうだ、熱が出る前に、すべて吸い取っているんだからな。それは、恵美も知っている。恵美の家族はオレと付き合うようになって、元気になったと思っているようだ。インフルにもかからない。結構、便利な能力だよな。

 恵美と付き合いだして、2年が過ぎた。やっぱり、そろそろかな。でも、恵美の方が高給取りだ。なんていっても、商社OLだもんな。まあ、二人で共働きなんだから、まあいいか。
 しかし、考えてみたらオレの能力って、健康診断ってことだよな。で、悪いところがあれば、その場で取り除ける。でも、あんまりいろんな人に言うと、絶対、大勢押し寄せてくるに違いない。それが一番の不安材料ってことだ。だけど、つい、言ってしまうってこと、あるんだよな。



(つづく)


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