人なんか嫌いだ! 第2話

 ボクにとって危険動物は、植物たちが教えてくれる。特に熊や猪は要注意だ。でも、彼らはボクの生活エリアを通り過ぎていくだけなのだ。ボクは彼らが通り過ぎていくまで、そっとしているだけ。ムダな争いはしない。獲って食おうなんてこともしない。動物性蛋白質は、卵で十分なんだから。たまに、なかなか通り抜けていかないこともある。でも、辛抱強く待っていると、通り過ぎてくれる。

 滅多にないが、山火事も起こる。これには参る。せっかくのボクの家も焼かれてしまうのだ。でも、仕方ない。一から建築だ。まあ、こんなことがないと、マンネリの生活だからね。

 また、新しい家の設計図を思い浮かべて、自分の居住地を作っていくというのは、楽しい。だから、出来上がると、新しい家がうれしくなる。以前、まあいいかとあきらめていた部分が、今度は出来上がる。だんだん、理想の住まいに近づいてくる。だから、たまに山火事もいいのかもしれないと思うようにしている。

 ある日、男女二人が迷ってきた。大人は嫌いだ。どうしようか、迷っていたが、私の山をぐるぐる回っているだけで、一向に出ていけないようだった。これは、そのうち、二人とも、お亡くなりになってしまうだろうから、ちょっと助けてあげることにした。

 すでに数日迷って、フラフラになっている。水の摂り方も、食事の仕方も知らないみたいだ。よくこんな調子で山の中に来たもんだ。ボクは近寄って、声を掛けた。
「お二人さん、迷子?」
「えっ?人?人がいたぁ!」
女の人は泣き出した。
「助けて下さい、お願いします。」
「いいよ。」
「助かったぁ。」
よっぽど、死に瀕していたんだろう。でも、なんでここに来たのかな?まあいいや、とにかく、甘いトマトを食べさせてやろう。
「ちょっと、待っててね。」
ボクは彼らからちょっと離れた場所で、トマトの実を2個ならせ、彼らのところに持っていった。
「はい、トマト。甘いよ。」
「ありがとう。」
「ほんと。すっごく甘い。」
そういうとあっと言う間になくなった。
「生き返る~。もっとないですか?」
「あるよ。ちょっと待っててね。」
ボクがちょっと離れると、彼らはついてきた。

「だから、そこでちょっと待っててね。」
「一緒に行きますよ。」
「来ないで、そこで待っててね。」
「行きます。」
「じゃ、トマトはない。」
「なんで?いいじゃない。」
「じゃ、ここからはあなたたちで帰ってね。」
ボクはさっさと草むらの中を走って行った。彼らはわめいていたが、追いつけなかった。
「ごめんなさい。言うことを聞きますから、助けて下さい。」
「お願いします。助けて下さい。」

 ボクはしばらく様子をみることにした。若者はわがままだ。人の言うことなんか、全然聞かない。だから、こんな奴らから離れて暮らしたいのだ。というボクも、まだ若いのだけどね。だけど、こいつらも下手をすると亡くなってしまうだろうから、助けてやらないといけないのだ。小さな子供みたいに素直ならまだしも、全然素直じゃないから、嫌いだ。

「どうすんのよ。あの人、どこかに行っちゃったじゃない。」
「おまえが言うこときかないからだろ?」
「あんたがでしょ?」

 あ~あ、ケンカはじめやがった。そんなに元気なら、ほっとおこう。ボクは、自分の家に帰った。翌日、トマトにキウイを少々多めに持っていくことにした。毒虫に刺されたみたいだったから、痛み止め、腫れ止めの薬草も持って、あと、虫よけの葉っぱも持っていくことにした。

 近くに行くと、足が痛いとわめいていた。ムカデにやられたみたいだ。まだ、ケンカしている。どうするつもりだろう?しばし、様子を見ていた。
「もう、あの人こないのかな?」
「もしかしたら、救助隊に連絡してくれているかもよ?」
「でも、あの恰好、世捨て人みたいだったから、連絡なんかしてないかもよ。」
「どうすんのよ。」
「知らんやんけ。」
「あんたが行こうっていったからでしょ?」
「おまえが勝手についてくるからやんか。」

 あ~あ、また、やってる。夕方までに結論でなかったら、明日にしようっと。せっかく、いろいろ持ってきたけど、今日は帰ることにした。また、明日だな。ボクはいくつか残して、トマトなんかは持って帰った。ボクの食事だ。しかし、こういう時にケンカしているなんて、まだまだ余裕があるんだな。今日は、天気がいい。いい月夜だ。

 翌日、朝から彼らの近くに行ってみた。さすがに弱っている。でも、死ぬほどじゃないようだ。ボクは声を掛けてみることにした。
「お腹、減りましたか?」
「えっ?あの人?来てくれた?」
「どこ?どこ?」
「私の言うことを守ってくれるなら、そばに行きますよ。」
「はい、ちゃんということ、聞きます。」
「わかりました。」

 ボクは、彼らの前に姿を現した。
「この前はごめんなさい。」
「いいんですよ。さあ、これを食べて下さい。」
「あ、甘いトマトだ。」
彼らはしゃぶりついた。持ってきた野菜を次から次へと食べていく。
「少しは落ち着きましたか?」
「ありがとう。」
彼女の足は、ものの見事に腫れている。彼も、蜂に刺された痕があって、腫れていた。ボクはまず痛みどめ、腫れ止めの薬草をその腫れているところにつけてあげた。それから、虫よけの葉っぱの汁をかけてあげた。

「これ、なんですか?」
「痛みどめと腫れ止め、虫よけの薬草だよ。」
「え~、そんなんあるんですか?」
ちょっとは、素直になったみたいだ。
「ところで、救助隊に連絡はしてくれているんですか?」
「いいや、してないよ。」
「え~、あり得ない。なんでだよ。」
男の言葉が悪くなった。わがままだな。
「だって、ボクひとりでこの山に住んでいるし、下界への連絡方法は歩いていくしかないからね。」
「電話とかは?」
「そんなのないよ。」
「電気とか?」
「ないよ。」
「じゃあ、どうやって、町までいくんですか?」
「ぼちぼち、歩いていく、それだけだよ。」
「今から?」
「そうだよ。」
「道、知ってるんですか?」
「道はないけど、わかるよ。」
「だから、アスファルトの道のあるとこまで、連れて行ってあげるよ。歩けるだろ?」
「どのくらいかかります?」
「3,4時間ってところかな?」
「そんなに近かったの?」
「うん、そうだよ。」
「じゃ、行こうか。」

 まあ、夕方までには着けるだろう。ボクは道案内(?)をした。しかし、彼らは本当に何も持ってなかった。山に入る恰好ではないな。よく、そんなんで来たもんだ。彼らはよくしゃべる。うるさいくらいだ。黙って歩けんのか。ようやく、アスファルト道にたどりついた。
「ボクはここまで。」
「えっ、町にいかないんですか?」
「山が我が家だからね。帰るわ。」
「この道をそのままいくと、人家があるから、助けを求めるといいよ。」
「はい、これ、お土産。」
そう言って、キウイを数個渡した。もう、来ないでほしい。さあ、帰ろう。ボクは途中で野宿して、家に帰った。家も野宿に近いけどね。



(つづく)

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