人なんか嫌いだ! 第11話

 どれくらい経ったのかわからないけど、ボクは目が覚めた。からだは動かない。多分、猟銃で撃たれたんだろう。でも血は止まっていた。植物がボクの血を止めてくれたみたいだった。恐らく、猟師はボクを見て、ほったらかしで、帰ってしまったのだろう。そのまましとけば、死んで土に帰るか、肉食の動物たちに処理されるか、いずれにせよ、ボクの後始末は自然に任せたのだろう。

 猟師は責任逃れをしたのだ。だが、ボクは死なずにすんだが、動けない。このままだと、本当に熊や猪などに食われてしまうだろう。まあ、それでも仕方ないな。いろいろ考えたが、どうしようもないので、ある程度諦めが付いたところに、ロッキーがやってきた。ロッキーはボクのそばについてくれた。ボクは安心した。動物はロッキーが追っ払ってくれるだろう。だけど、ボクが治るまでかなりかかるかも知れない。大丈夫だろうか。

 ボクは適当に植物を育てた。実ったものはロッキーと二人で食べた。体力をつけないと、治るものも治らない。やがて、傷もだいぶ癒えて、多少は動けるようになってきた。そんな時に、ミキさんがやってきた。

「ロッキーがなかなか帰ってこないと思ったら、やっぱり、あなたのところにいたのね。」
「ロッキーには感謝ですよ。」
「ところで、なんでそんなところに、なんで寝てるの?」
「実は・・・」
ボクはすべての事情を説明した。

「病院とか行かなくて大丈夫だったのね。」
「ロッキーのおかげでね。」
「だけど、ひどい猟師がいたものね。私も気をつけなくっちゃ。」
「ですね。」

 ボクはミキさんの肩を借りて、もう少しいい場所へ移動してもらった。
「まあ、ここならあまり雨に当たることもないし、ちょっとはましじゃない?」
「うん、ありがとう。」
「もうしばらく、ロッキーにいてもらっていい?」
「全然OKよ。」

 それから、どれくらい経っただろうか、ボクはようやく歩けるようになった。だが、撃たれた場所が膿んできた。それはだんだんひどくなってきたと思ったら、玉が出てきた。たぶん、異物が体内から押し出されたのだろう。そんなことが数回あって、恐らくすべての玉が出てきた。これは、ボクだけの特殊な例なのか、普通そうなのかわからないけど、やがて、元通りの生活ができるようになった。

 ミキさんと相談して、あちこちに連絡用の仕掛けをつくっておくようにした。そうすれば、猟師がきて、その仕掛けにふれたら、ボクたちにわかるようになったし、なにかあれば、ミキさんへも連絡が取れる。スマホの時代に、原始的だが、これが役に立つのだ。

 ある日、仕掛けからの連絡で、その場所に行ってみた。植物たちもボクにささやいていたので、どちらの連絡でもわかるのだ。そこには、小さな女の子が一人でいた。迷子か。だが、その子の足には、無数のマダニが皮膚を食い破ってパンパンになっていた。こりゃひどいな。

「大丈夫かな?」
ボクは声をかけた。その子は思わず泣き出した。
「今、悪い虫をやっつけてあげるから、ちょっと待ってね。」

 彼女はすぐにボクの言うことがわかったみたい。ボクはたき火をして、細い枝の先を燃やした。一旦火を消して、真っ赤になった先端をマダニに押し付けた。マダニはポロっと落ちていく。あとはそれの繰り返しだ。全部、やっつけて、あとは、痛みどめの葉っぱの汁を塗ってあげた。

「もう、大丈夫だからね。」
そう言ったら、今まで我慢してじっとしていたが、こらえきれなくなったのだろう、ボクに抱き着いてきて、また、泣き出した。
「大丈夫だよ。安心してね。」

 まあ、しばらく、止まらんだろうな。待つしかないか。ボクは優しく背中をさすってあげた。そこにロッキーが来てくれた。ロッキーはその子の手をペロペロなめてくれた。やっと、泣きやんだので、ボクはいつもの甘いトマトを差し出した。
「おいしいよ。食べてごらん。」
 一応、ボクが食べないと食べないだろうから、ボクが食べてみせた。ついでにロッキーにも食べさせた。それをみて、すぐにその子も食べた。
「甘くて、美味しい。」

 ようやく、しゃべったか。安心してくれたかな。しばらく、木漏れ日の中でほっこりした。彼女もしばらく眠っていた。まあ、一人で緊張してたし、お腹一杯になって眠たくなったのだろうね。今日はここで、お泊りだな。ボクも寝るとするか。ロッキーも付き合ってくれた。

 彼女は翌日まで、しっかり眠っていた。朝、起きると、いくつかの種類の実とフルーツを食べた。もう、彼女の顔に不安はなかった。
「ところでお名前はなんていうの?」
「アリサ、4さい。」
「賢いね。アリサちゃんね。じゃ、お家へ帰ろうか。」
「うん。」
ボクらは、道なき道をボチボチ歩き出した。アリサちゃんは抱っこしてたから、元気そのものだった。

 昼過ぎには、アスファルト道にでた。ここからはもうすぐだ。ボクらはいつもの駐在さんちへ行った。
「こんにちわ。いますか?」
「はーい、おおどうした?」
「迷子をつれてきました。」
「いつも、ありがとうね。確か、捜査依頼が出てたな。えっと、アリサちゃんかい?」
「うん。」
彼女は元気に答えた。
「ちょっと、マダニにかまれているんで、その対処をお願いします。」
「了解しました。」
「じゃ、ボクらは帰りますんで。」
「お昼、いっしょに食べないか?」
そんなわけで、ごちそうになった。

 食事の途中で、さすがは駐在さん、私の服の破れと黒いシミを見つけて、こう言った。
「んっ、怪我したの?」
「はい。」
「でも、それかなり大きな怪我じゃない?」
「まあ、でももう治りましたから。」
「でも、その傷痕は・・・銃?」
「まあ、もういいですよ。治ってますから。」
「これは、散弾銃じゃない?」
「だから・・・」
「よくない。よく死ななかったものだ。これは犯罪だよ。犯人を見つけて逮捕しないと。」
「まあ、なんとか生きとったから、いいですって。次回からはそんな目に合わないようにしますから。」
「刑法上は君がどうこう言っても、犯罪だからだめなんだよ。」
「そうなんですか。じゃ、仕方ないですね。だけど、どんな人がボクを撃ったのか、わかりませんよ。分かるのは、日時と場所くらいです。」
「じゃ、教えてくれ。」

 そんなわけで、大体の日時と、大体の場所を話したけど、本当に捕まるのかな?防犯カメラなんてないしね。でも、日本の警察はすごいもので、当日にボクの山に入り込んで、狩猟をしていた人物を特定し、逮捕してしまった。

 まあ、殺人未遂というわけなのだ。それに、救助しなかったということもあって、かなり長い実刑があるようだ。ボクはもうどうでもいいけどね。だから、民事はしない。お金もらっても、使わないから問題ないのだ。



(つづく)


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