人なんか嫌いだ! 第13話

 ひさしぶりに行儀の悪い連中がやってきた。数人いる。こんな山まで何しにきたんだ。キャンプならそれなりに設備が整っていない場所じゃないと、めんどくさいだろうに。

 その日は、適度に雲があって、日差しが出たり隠れたりして、楽しい景色になっていた。ボクはその移りゆく様を木陰でのんびり楽しんでいた。こういう景色はずっと見ていても、飽きないね。ほんと、いつの間にか、夕方まで見続けてしまう。ああ、今日もいい一日だったとほっこりしてたことに感謝している。

 さて、そろそろ帰ろうかと思ったところに、植物たちがささやき出した。数人の若者たちが、キャンプして、騒いでいるみたい。まあ、そのうち帰るだろうからほっておくことにした。だが、1日経ってもなかなか帰らない。ボクは様子を見にいくことにした。少し離れたところから様子を伺うと、6人の男女が適当に遊んでいるように見えた。まあ、遊んでいるだけなら、いいか。ボクは一旦戻っていった。

 2日が過ぎたが、まだ、彼らはその場所にいるようだった。天気もあまり良くないので、そろそろ帰った方がいいと思うので、一旦、その旨を話しに行こうと思った。彼らは相変わらず、大声上げて、遊んでいる。適当にたき火もしてるし、大丈夫か心配になる。ボクは近くまで行って、声をかけた。
「こんにちわ。」
「びっくりした。あんた、誰?」
「この山に住んでいる者ですが、天気が良くないので、そろそろ戻られた方がいいかと思います。」
「あんた、ばっかじゃないの。雨降ったって、テントがあるから、大丈夫なんだよ。」
「恐らく、そんなテントじゃ、役に立たないと思います。」
「なんだと、ケンカ売ってるのか?」
「いえ、本当にやばい天気になると思うので、そろそろ引き上げた方がいいと思いますよ。」
「オレらの勝手だろ?ほっとけよ。ばーか。」

 だめだ。こんな連中、相手にするだけムダみたいだ。でも、ここらへんの地形はちょっとやばい気がするんだけどな。ボクは、駐在さんのところにいくことにした。あのおまわりさんなら、なんとか対応してくれるだろう。ここから、どんなに急いでも、1日かかる。仕方ない。

 結構速足で急いだが、途中、雨が降り始めた。なんとか、駐在さんのところにたどり着いたころは本降りになっていた。
「こんちわ。」
「こんな雨降りにどうした?」
「若者がキャンプしていて、帰るよう促したんですが、全然だめなんです。その場所はちょっと良くない場所なんですよ。」
駐在さんは机に地図を広げてくれた。ボクはその地図を見て、大体の場所を指さした。
「ここは崩れて、土石流が起こりそうな場所なんです。」
「大急ぎで救助を要請しよう。」
「男3人と女3人でした。」
「わかった。ありがとう。」
「じゃ、先に戻って見ます。」
「君も気をつけろよ。」
「分かってますよ。」

 ボクはまた、1日掛かりで戻っていった。雨は結構降っている。こんな調子だと、本当にやばい気がする。植物のささやきは、この雨で全然聞こえない。

 ボクが彼らの場所に着いたときは、やはり、木々がなぎ倒され、テントの後影もなかった。すでに、救助の方々が来ていたが、多分、なかなか見つからないだろう。若者は時に無謀な行動をする。残念だが、仕方がない。ボクは、自分の住まいに帰っていった。数日後の雨が止んだ後、全員の遺体が見つかったそうだ。

 今日はなぜか植物が騒がしい。また、ボク一人の世界が邪魔されるのかと思っていたが、そこにきたのはロッキーだった。ロッキーはボクを引っ張る。さては、ミキさんに問題が起こったか。急いで、ロッキーについていった。そこには、ミキさんが横たわっていた。頭から血を流していた。そばに老木が落ちていた。この木の枯れた木、と言っても、かなりに太さだ。その木が割れて落ちてきたのだろう。運悪く、ミキさんに当たってしまったようだ。幸い、頭部の陥没はなかった。でも、結構、血がでている。止血の葉っぱの汁をミキさんの頭にかけた。たぶん、脳震とう?かもしれない。

「ロッキー、ありがとう。」
やはり、ロッキーがいないとこういう場面ではだめだ。ボクはミキさんが気が付くまで、ロッキーと寄り添うことにした。夜は結構冷えるから、ロッキーと一緒にミキさんにくっついて寝た。なかなか、目を覚まさない。大丈夫かな。

 ボクがこの場所に来てから3日が経った。ミキさんはようやく目を覚ました。
「おはよう。良く寝てたね。」
「あら、私、どうしたのかしら。」
「頭に老木が当たって、気を失ってたんだよ。」
「そうなの?そういえば、頭が痛いような・・・」
「まだ、安静が必要かもね。」
「そっか、だいぶ寝てた?」
「ボクが来てから3日くらいはね。ところで、何たべる?」
「じゃ、例のトマト、ちょうだい。」
「了解。」
ボクら三人はトマトを食べた。

 自然の中で暮らしていると、こんなこともある。最悪、死ぬことになっても、ボクの場合は本望だ。動けなくなったら、いつ死んでも仕方がないくらいの気持ちでいる。それ以外は、楽しい暮らしを過ごせるのがいいのだ。

 ミキさんは多少頭痛がするらしいが、もう大丈夫だといって、ロッキーと帰っていった。本当は頭の検査を受けるべきなんだろうけど、ボクらはこういう暮らしを選んで生きているので、これでいいのだ。



(つづく)


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