人なんか嫌いだ! 第14話

 ほとんどの場合、熊との遭遇は、お互い避けるようにしている。ボクもだけど、熊の方もボクを避ける。だから、襲われることはまずない。だけど、なかには襲ってくる熊がいる。ボクの匂いを嗅いで、追っかけてくる。これにはまいった。やめてって言っても、やめてくれない。木の上に逃げても追っかけてくる。そうなると、やっつけてしまわないとこっちがやられてしまう。

 とにかく、からだ中にドロをなすり付けて、ボクの匂いを分からなくするか、葉っぱの汁をつけまくるか、しないと、絶対、追っかけてくる。そんな状態で、罠を仕掛ける。だけど、この死闘は結構長く続く。向こうもなぜか必死だ。なんでボクを追いかけてくるのか分からないけど、必要に追いかけてくる。

 ついに罠に掛かった。ボクは先をとがらした木の棒を熊に突き刺した。そんな一撃では、彼はなんでもないようだった。だから、数回、あちこちに突き刺した。何回、刺しただろうか、ようやく、動かなくなった。彼は人間の味を知っているんだろう。だから、ボクを必要に追いかけてきたのかも知れない。

 と、そこにロッキーとミキさんがやってきた。
「あれ、熊、退治したの?」
「こいつ、必要に追いかけてくるんで、仕方なく。」
「たまにいるよね、そんな熊。」
ミキさんの話では、ミキさんも追いかけられたことがあったようだ。でも、そんなときは逆襲するのだそうだ。ミキさんもすごい人だ。ボクらは熊を解体して、毛皮を使えるようにすることにした。

 静かでのんびりした朝、突然の大音響と地響きがした。いったい、何事なんだろう。ボクは木に登り、周辺を確認した。ミキさんの山の方で、煙が上がっている。飛行機が落ちたか。ミキさんは無事なんだろうか。すぐに、植物たちが安否を教えてくれた。大丈夫だ。でも、誰かが亡くなったようだ。

 一応、行ってみることにした。大きな音が間近で聞こえたような気がしたが、結構遠い。半日以上かかった。そのころにはヘリコプターも飛んでいた。大きい飛行機かと思ったが、セスナくらいの飛行機だ。

 搭乗者は4人。3人はアウト。生きている1人は、すでにミキさんが手当していた。ロッキーもいる。よかった、無事だった。その人もあまり芳しくない感じだ。早く、病院に連れて行ってほしいものだ。

「ああ、トシくん、止血頼んでいい?」
「OK。」
ボクは止血の葉っぱを摘んで、怪我してる個所を包んだ。消毒の汁もかけた。だんだん、血が止まっていく。まあ、なんとかなるかもね。そこへ救助隊がやってきた。
「あなたたちは?」
「先に着いたので、止血とかしてました。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、あとはお任せします。」
「わかりました。」
「よろしくです。」
ボクらは、手を放して、あとは見守った。

 先に着くと現場検証させられるから、ほんとは嫌なんだけど、仕方がないね。
「こんなこともたまにあるのよね。」
「えっ、そうなんですか?」
「静かに暮らしているのに、たまらないわ。」
「ほんとですよね。」
「ミキさん、若いと思うんですが、いつからここにいるんですか?」
「そうね、かれこれ、20年以上かな。」
「そんなにですか?」

 ボクはかなり驚いた。だって、30くらいかな?って、思っていたのに、20年以上もこの山に住みついているなんて。大先輩だ。ボクでさえ、まだ10年も暮らしていないのに。話は戻るが、過去にはヘリも墜落したことがあったらしい。住宅街ではなく、山に墜落だったからよかったという言い方をされると、むかつくと言う。まあ、そうだよな。山はボクらの庭なんだから。

 その日は怪我人の運搬、遺体の運搬で終わってしまった。ボクらは面倒臭いので、引き上げることにした。とにかく、人命救助したんだから、あとは勝手にやってよって感じだ。

 植物がざわざわしている。よく耳を澄ますと、あぶない、あぶないって言っている。こんなこと言ってるなんて、初めてだ。ボクはあまり気にすることなしに、出かけた。景色のいい場所を見つけにだ。ある場所で、植物がすごく騒ぎ出した。ちょっと注意深く、周りを見ると対動物用の罠が仕掛けられていた。うっかり、踏んだりすると、足を持っていかれる。へたすりゃ、骨が砕けてしまうかもしれない。いったい誰がこんなものを仕掛けたんだ。ここらへんはボクの庭なのに。

 とにかく、危なくないように、罠を解いておいた。この周辺を慎重に歩いたら、もう3つほど罠を見つけた。当然、全部解いておいた。さて、どうしたものかな。ボクは犯人を見つけようとここでしばらく野宿することにした。

 2日後、やってきたのは、おっさんが2人。
「こんにちわ。」
「おっ、びっくりした。こんなところで人に出会うなんて。」
「ここらへんはボクの庭なんで、罠を仕掛けないで下さいね。」
「そんなん知るか。」
「だって、ボクがかかったら、どうするんですか?」
「こんなところにくるヤツが悪い。」
「だから、ここらへんはボクんちの庭なんですって。」
「まさか、おまえ、この罠を勝手に解いたのか?」
「だって、あぶないでしょ。」
「いいかげんにしろよ。せっかくの罠が。」
あ~、だめだ。こういう考えの人とは、絶対に合わない。彼らはまた仕掛けようとする。
「いくら、仕掛けても、ボクが解いておきますので。」
「なんだと。お前、死にたいのか?」
なんで、死なないとあかんのだ。
「だって、ボクがかかったら、大怪我しますよね。だから、やめて下さい。」
「だったら、こんなところに来なきゃ、いいんだ。」
だから、ボクの庭だって。
「まあ、いいですよ。あなた方が帰ったら、始末しておきますから。」
「ばかやろう。この罠、結構高いんだぞ。お前に払えんのか?」
知らんやん。

 ボクは、いくら言っても押し問答なので、ボクは何も言わずその場を離れた。後ろで何か吠えていたが、完全に無視だ。しばらくして、また、様子を見にこよう。仕掛けてあったら、全部解いて、捨てておこう。そう決めた。ボクんちの庭なんだから。



(つづく)


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