人なんか嫌いだ! 第15話

 長いこと、一人での時間を楽しんだ。こんなに誰からも干渉されないこともめずらしい。一人になりたいといって、ここにきたけど、侵入者によって、干渉されることが多いということがわかった。でも、今回は本当に長いこと、一人でのんびりできた。こんなときでも、自分から会いたくなる人もいる。ミキさんやロッキーだ。彼らはそばににても、お互いを干渉することはない。だから、居心地がいい。

 あるとき、ロッキーがきた。久しぶりだ。なにやら、ボクをつれていこうとしている。だから、ついていくことにした。多分、ミキさんが呼んでいるのだろう。何かな?

 半日ほど歩くと、ミキさんに合流した。
「あ、ミキさん、お久しぶりです。」
「トシくん、久しぶり。」
「何か、ありました?」
「緊急というわけではないのだけれど、友達がきたので、紹介しようと思って。」
「そうなんですか。」

 ミキさんのそばに背の高い女性がいた。ちゃんと、山にくる恰好をしている。やはり、こうでなくっちゃね。
「筒井愛子さんよ。」
「初めまして、トシといいます。」
「よろしくね。」
いい感じの人だ。
「トシは私と同じように、山で一人暮らしをしてるの。で、ちょっと、おもしろいことができるのよね。」
「はいはい、ではちょっと待って下さいね。」
ボクは例のトマトを育てて、彼らに手渡した。

「えっ、どこからでてきたの?」
「これが、トシくんの特技なのよ。」
「食べてみて下さい。」
「すごい甘さ。こんなトマト食べたことないわ。」
「でしょ。いつも、トシくんに会うときは頂いているのよ。」
「お気に召しましたでしょうか?」
「すごいですね。」
「じゃ、これもどうぞ。」
ボクはライチやキウイ、イチゴを手渡してあげた。
「ほらほら、季節感なしにいろんなものがでてくるでしょ。」
「びっくりですね。」
「食べてみて下さい。美味しいと思いますよ。」
「ほんとにすごい。いったいどうやって育てているんですか?」
「植物にお願いしているだけです。」
「え~、そうだったの?」
「ここだけの話、植物たちがいろんなこと教えてくれるんです。それに、お願いすると実をならしてくれるんです。」
「すごいですね。」
「へえ~、知らなかった。」
「内緒ですよ。」

 ボクらは愛子さんの持ってきたコーヒーをご馳走になって、のんびりとした時間を過ごした。
「トシくん、今日はどうする?」
「ひさしぶりだから、近所で野宿かな。」
「オーケー、ゆっくりしていって。」
「はい、ありがとう。」
「えっ、そんな感じなんですか?」
「まあね。」
愛子さんはボクらのやり取りにびっくりしている。まあ、普通じゃないからね。愛子さんはテントを張った。ミキさんも一緒に泊まるみたいだ。ボクはロッキーと一緒に葉っぱの寝床にゴロンだ。

 翌朝、葉っぱのコップに野菜や果物のスムージーを作って、彼女たちに渡した。
「朝はこれがいいですよ。」
「このコップ、葉っぱ?」
「うまく作るよね。」
「まあ、こういうものならいくらでも。」
「おいしい。」
「でしょ。」
「そういえば、ちょっといい場所見つけたんですが・・・ちょっと遠いか。」
「どのくらい?」
「1日半ほど。」
「また、今度、教えて。」
「わかりました。」
「えっ、どんな話してんの?」
愛子さんはびっくりしている。普通そうだよな。1日半も歩くって、まず、ついてこれる人はいない。でも、ミキさんたちは全然平気だ。だから、それが普通になっている。

「まあ、こういうことがボクらの日常なんで。」
「でも、その場所に行ってみたいです。」
「お、変わり者がここにもいたぁ。」
「ミキさんたら。」

 その日の午後、ボクは帰ることにした。
「また、いつでもどうぞ。」
「はい、でも連絡ってどうすれば?」
「ここらへんに来てくれたら、植物たちが教えてくれるので、ボクから会いにきますよ。」
「そうなんですか?」
「です、です。」
「妖精みたいな人ですね。」
妖精?そんなこと言われたこと、初めてだ。
「まあ、そんなことができるので、この山にいるんですがね。」
「また、よろしくお願いします。」
「は~い、またね。」
愛子さんもミキさんと同じで、悪い気がしない。一緒にいて、居心地がよさそうだ。また、会っても問題ないね。

 次に愛子さんに会ったのは、秋の色濃くなった頃。確かに景色は最高なんだけど、危険なことも多い。でも、きれいが先立って、危ないことは忘れがちになってしまうんだよね。

 例によって、植物たちが教えてくれた。でも、変だな、ミキさんとこじゃないのかな。ボクはそう思ったけど、早く会わないと、危ないので急いで彼女のもとへ行った。
「お嬢さん、こんなところで御一人では、危ないですよ。」
「あっ、トシさん。会えてよかった。」
「今日はどうしたんですか?ミキさんとこでは?」
「いえ、今日は、トシさんに会いにきたんです。」
「ボクに?」
ふ~ん、何なんだろう?



(つづく)


この記事へのコメント