人なんか嫌いだ! 第17話

 しばらくして、ロッキーが来た。ミキさんがコーヒーを手に入れたらしい。一緒に飲まないかとの誘いだ。ボクは、ロッキーと一緒に向かった。愛子さんのコーヒー、おいしかったなあ。そんなことを思い出しながら進んでいくと・・・

「えっ、来てたの?」
「はい、一緒にコーヒーでもと思って。」
「てっきり、ミキさんがコーヒーを仕入れたのかと思いましたよ。」
「ちょっと、びっくりさせてあげようと思ってね。えへへ。」
「してやられたって、感じですね。」

 ボクはうれしかった。なんたって、愛子さんがいる。あんなに人嫌いだったボクなのに、この人は別なのだ。その日は話が弾んで、楽しいひと時をすごした。

 翌日、愛子さんを見送ってから、ミキさんがこう言った。
「トシくんは、ずっとひとりでいるの?」
「はい、そう思っていますけど。」
「確かに私も一人だし、問題ないと思うけど。」
「でしょ、たまにこういう風に会えて、楽しいひと時があれば、十分ですよね。」
「そうだね。でも・・・」
何か、言いたげだな。
「どうしたんですか?」
「そう言えば、トシくんは定住してないよね。」
「そうですね、なんか家なんかなくても、十分かなと思うようになってきたんで。」
「そっか。今度さ、うちを改築したいんで、手伝ってくれる?」
「いいですよ。その時になれば、呼んで下さいね。」
「ありがとう。」

 なんか、言いたげなミキさんを後に、ボクは帰途に着いた。そう言えば、最近は適当に葉っぱで寝床を作っては寝ての繰り返しだったな。ミキさんの言うように、どこか、ちゃんとした家でも作るかな。

 自分の山に着いたボクは、山の中を歩きまわった。どこか、いいところないかな。ボクは2日くらい歩きまわって、いくつか候補を見つけた。その中でひとつ、面白い構想が頭の中に広がってきた。ボクは、その気に入った場所にある木に登った。その木からの景色を確認した。う~ん、いい感じだ。多少、ほかの木に遮られるところがあるけど、いい感じに見渡せる。ツリーハウスを作ろう。

 いい感じに6本の木が生えている。丁度、柱になる。この6本の木に、ひとつひとつに額を当てた。大丈夫、彼らはボクがツリーハウスを作ることを、許してくれた。

 さっそく、建設にとりかかった。でも、一人で、あまり道具もない中、かなり時間が掛かった。まあ、時間はそんなに気にならない。ボチボチでいいのだ。そう思うと気が楽だ。1ヶ月以上かかって、ようやく、床面が出来合上がった。ここに立つと、景色が最高だ。これから、毎日この景色が見えると思うと、わくわくする。

 そんな時、ロッキーとミキさんが現れた。
「あれ、そんなところにいたの?」
「ボクも今、建設中なんです。」
「ツリーハウスね、素敵だわ。」
「上がってきてください。」

 ロッキーは自分で上がって来れないから、つり上げることにした。
「すっごいね。いい景色。最高じゃない。」
「これからですよ。」
「楽しみね。」
「はい。」

 6本の木に囲まれたこの床面は、結構頑丈だ。下の地面から、木伝いに植物を成長させて、ここまで茎を伸ばして、実を生らす。
「お、すごいね。家に居ながら、収穫できるんだね。」
「はい、いい感じでしょ。」
「私も、ここに住もうかな?」
「ははは。」
「実はね、私んち、ほぼ完成したのよ。」
「えっ、そうなんですか。」
「そうそう。だから、今から、来ない?」
「いいですよ。行きましょう。」

 ボクは一旦、工事を中断して、彼らと一緒に行くことにした。1日ちょっとかかって、ようやく、ミキさんちに到着。
「おっ、いい感じじゃないですか。」
「でしょ。」
こじんまりした一軒家という感じだ。横にある大木の日陰になって、過ごしやしそうだ。中なら、愛子さんが出てきた。
「あれっ、来てたんですか?」
「はい、お邪魔してます。」

 なんでも、愛子さんもミキさんちの建築のお手伝いしていたということだった。でも、そんなに長いと大丈夫なのかな。
「ずっと、こちらにいらして大丈夫なんですか?」
「はい、全然大丈夫です。」
「愛子さんもこんな生活してみたいんだって。」
「へぇ~、そうなんですか。」

 また、変人が増えてきたもんだ。当面はミキさんちにお世話になるとのこと。なるほどね。だんだんにぎやかになってきたもんだ。
「でさぁ、トシくんち建設に人手がほしくない?」
「そりゃ、そのほうが早くできると思うけど、ひとりでもなんとか大丈夫かも。」
「ほら、アイちゃん。」
愛子さんは顔を紅潮させて、こう言った。
「私にもお手伝いさせて下さい。」
そりゃ、その方がありがたい。
「えっ、いいの?ありがとう。」
「アイちゃん、よかったね。」
ん?何がよかったのかな?まあ、ボクとしては、人手がありがたい。

 2日ほど、ミキさんちでお世話になって、ボクは愛子さんとボクんちの建築現場へ向かった。
「ところで、愛子さんは、いつまでここに居れるの?」
「いつまででも、大丈夫ですよ。」
「ご自分の家の方は、問題ないんですか?」
「はい。」
ふ~ん、そうなんだ。結構、自由がきくんだな。
「いずれ、こういう暮らしがしたいんで、今は社会科見学ってところです。」
「なるほど。」

 そうこうしている間に、例の場所に到着した。
「うわぁ~、すごい。」
「でしょ、いい感じなんですよ。」
ボクは彼女を上の床に案内した。そこから見える景色に、彼女はかなり感激していたみたい。
「トシさん、最高です。」
「でしょ、いい景色でしょ。」
「はい、最高です。」

 しばらく、ふたりでその景色に酔いしれていた。ボクも何回見ても素敵だと思う。
「ねえ、そこに木を伝ってる植物が見えるでしょ。」
「あ、はい、えっ!これ、トマト?」
「そうそう、あのトマトです。」
「こんな高いところまで、伸びてくるんですか?」
「まあ、そういうことです。」
ボクらは腹ごしらえして、しばし、景色を見入っていた。
「さあ、そろそろ、やりましょうか。」
「はい。」



(つづく)


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