人なんか嫌いだ! 第18話

 それから、1ヶ月、なんとか、ツリーハウスは完成した。これからはこの家で寝泊まりできる。割と広いし、部屋も客部屋も用意できているから、誰が泊まりにきても、大丈夫だ。
「愛子さん、ありがとうございました。」
「いえいえ、たいして役に立っていたかどうか。」
「そんなことないですよ。助かりました。」
「そうであれば、よかったです。」
「また、遊びに来たときは、客間もあるし、どうぞ寄って下さいね。」
「あの、お願いがあるんですが。」
「なんですか?」
彼女は顔を紅潮させていた。言いにくいことかな。それなら、言いだせるまでゆっくり待ってあげよう。
「あの、このまま、ここに住まわせて頂いていいですか?」
「全然OKですよ。部屋もあるしね。好きなだけ、居て下さい。」
「そういう意味じゃなくって。」
「ん?どういうこと?」
「お客としてではなくて、トシさんのそばに死ぬまで一緒にいたいんです。」
彼女はそれを言い切ると、下を向いた。
「特に問題ないと思います・・・えっ?それって?」

 ボクはあまりに鈍感過ぎるのかもしれない。これは、ボクと結婚したいということなのか?いやいや、そこまでではなく、彼女になりたいということなのか?ボクは今の今まで、そこまでの意識はしていなかったのに、急に愛子さんを女として、意識している自分に気が付いた。あかん、自分が完全に赤面している。こんな顔を見られたら、恥ずかしい。今は、下を向いてくれているのでよかったが、これは大変なことになった。ボクは急に言葉が出なくなってしまった。どうしていいのか、わからない。頭が真っ白になるってこういうことなんだ。

 かなり、無言の時間が流れた気がした。何か言わなくっちゃ。そう思っても、何を言っていいのかわからない。こういう時に、ミキさんがいれば。ああ、どうしよう。かなり、動揺している。ボクだって、決して嫌いなわけではない。というか、以前から素敵な人だなとは思っていたのだ。まさか、自分を好いていてくれるなんて、思いもしなかったので、今、どうしていいのか分からない。めっちゃ、困った。

「あの、愛子さんのお気持ちはよくわかりました。で、・・・」
「で?」
「で、自分としてはまだ心の準備ができていなくって・・・」
何言ってるんだろ。しっかり、しろ。
「わかりました。」
えっ、何が分かったのかな?
「いろいろありがとうございました。」
そういうと、ツリーハウスから降りていった。えっ、どういうこと?ボー然としているボクを尻目に、彼女は去っていった。まあ、仕方ないか、今まで女性と付き合ったことないし、また、一人になっただけだ。ボクはそう思うようにした。だが、・・・ミキさんがきた。

「おーい、トシくん。」
「あ、ミキさん、こんにちわ。」
ミキさんはスルスルと上がってきて、
「いったい、どういうこと!アイちゃん、振ったの?」
「いや、あの・・・」
「アイちゃん、泣いて帰っちゃったわよ。」
「・・・」
そんなこと言われても、どうしていいのか、わからんやん。ボクは散々ミキさんにまくし立てられて、何も言えなかった。

「ごめん、ちょっと言い過ぎたわ。」
「いえ、すみません。」
ボクは自分が誰とも付き合ったことがなくって、どうしていいのかわからなかったこと、決して、愛子さんが嫌いじゃないこと、本当はボクも一緒に居たいこと、ゆっくり、口にした。ミキさんは、何も言わず、じっと、聞いてくれた。

「じゃぁ、ほとんど、アイちゃんが勘違いして帰ってしまったということなのね。」
「はい。ボクも言葉足らずで申し訳ないです。」
「なぁ~んだ、お互い、好きだったのね。」
「そういうことになると思います。まさか、ボクのことを好いていてくれているなんて、思いもしなかったので、ずっと、友達止まりなんだろうなと思ってたので。」
「トシくんは奥手なんだね。」
「だって、こんなボクを好いてくれるなんて、ありえないと思っていましたから。」
「それがそうじゃなかったってことだよ。」
「でもさ、どうするかな?アイちゃん、もう来ないかも知れないよ。」
「仕方ないですよね。」
「トシくん、それでいいの?」
「だって・・・」
「もう、この際、男になって、迎えに行ってきなよ。」
「えっ、そうなんですか?」
「そうよ。そうしなさい。」
「でも、心の整理が・・・」
「何言ってるのよ。男なら行ってくる。がんばれ。」

 ボクは愛子さんの住所をミキさんから頂き、行ってこいって言われても、どうしたもんだか、迷っていた。行ってもどうやって、話をしたらいいのか、全然わからない。そんなこと考えると、心臓がバクバクいうし、ものすごく、緊張してしまう。ちゃんと、話ができるのだろうか。



(つづく)


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