2021年01月15日

フリーライフ 第4話

 しかし、ひどい男もいるもんだ。自分の不満のはけ口なのか、弱い者をいじめる性格なのか、私にはわからないけど、旦那さんが変わるとは思えなかった。だが、2,3日して、彼女はうちに飛び込んできた。


「高木さん」

「あれ、斎藤さん、いらっしゃい。」

玄関のドアを閉めたとたん、へたりこんだ。

「大丈夫?」

スカートから見えた足には、青い痣があった。彼女の唇からは血が見えた。私は洗面台へ連れていき、絞ったタオルを渡した。


 ようやく、リビングの椅子に腰かけた彼女は、あまりに痛々しかった。顔や頭、腕に足に、打撲がたくさんあった。ひどく殴られたんだろう、唇は腫れていた。まともに食事でできてなかったみたいで、かなりやせ細っていた。このままだと本当に死んでしまうだろう。


「食べれる?」

「いいです。」

「ゼリーがあるから、口の中の傷を気にしないで食べれると思うよ。」

「・・・ありがとう。」

なんとか、ゼリーを食べて、スポーツドリンクを飲むと、そのまま気を失ってしまった。私は救急車が必要なのかもって思ったけれど、ちゃんと息をしていたので、彼女を抱いて、ベットへ連れていき、寝かせた。


 しかし、なんてひどい旦那なんだろう。もう、絶対に戻すことなんかできない。前より、怪我が増えている。私は知り合いの弁護士に連絡した。翌日、彼女が目を覚ましたので、知り合いの弁護士を呼んだ。彼は証拠として、彼女の怪我の箇所、すべてを写真に収めた。そして、すべての怪我がいつどのようにしてできたのかを詳細に聞き出し、記載していった。


「離婚なさりたいですか?」

「はい、もう無理です。」

「傷害罪で訴えることもできますけど、どうされますか?」

「離婚できて、慰謝料がもらえればそれで・・・」

「そうですか、わかりました。」

「じゃ、お願いしますね。」

私は弁護士にお願いした。彼は早速、旦那の元に行ってくると家を出た。


 弁護士がいると話は早い。旦那は観念して、離婚届にサインして、損害賠償と慰謝料を支払うことになった。ものの2週間ほどで解決することができた。その頃には、彼女の怪我も完治していた。食事もしっかり食べていたので、ちょっとふっくらして元の体形に戻ったようだった。


「いつまでもお世話になるわけにはいきません。住む場所を見つけます。」

「ゆっくりでいいですよ。」

「高木さんって、本当に優しいんですね。」

「まあ、みんなには無害と思われてますよ。」

彼女はニッコリ微笑んだ。

「仕事は、またクリーニングサービスへ行ってみます。」

「そうですか。じゃ、またうちをお願いしようかな?」

「はい、お願いします。」

彼女はうれしそうだった。


 それから、斎藤さんは近くのマンションを借り、生活を始めた。仕事は自分に合ってると言って、クリーニングサービスに再度、勤め始めた。私はその会社にお願いして、斎藤さんに来てもらうことにした。なんか、もとに戻って、私としてはうれしかった。また、毎週金曜が待ち遠しい。話をすればするほど、斎藤さんはとてもいい子だということがわかる。それにとても要領よく仕事をこなし、いつも後半の1時間ほどは、お茶会になっている。


「高木さんは、本当にどんな仕事をなさっているんですか?」

「だから、無職ですよ。」

「そんなわけないでしょ?こんなところで暮らされて、家賃だって高いでしょうに。」

「まあ、正体を明かせば、投資家なんですよ。」

「投資・・・ですか?」

「そうです。だから、パソコン1台あれば、仕事できるんですよ。」

「時間的にかなり余裕があるんですか?」

「ですね、実際に仕事してるのは、1週間に2,3時間くらいですからね。」

「えっ、そんだけなんですか?」

「はい、興味あります?」

「はい、いったいどうやってるんですか?」


 私はざっと自分の投資家への道を話した。会社勤めとネットビジネスで貯めた資金で、投資を始めたこと、ただそれだけ。あとは、世界経済を確認しているだけ。それ以外は自分の好きな時間に充てれるということ。彼女は目を輝かせて聞いていたが、なんか自分のやっていることは、まともな仕事ではない感じがした。今は年間の配当を月割りにして使っているだけだし、経済状況が荒れたら、元手がどうなるかわからない。とてつもないギャンブルなのだと説明した。


 私は私のやり方を勧めない。やっぱり、これはギャンブルなのだから。すべての元手を失くしてしまってもいいくらいの覚悟がないと、できないことだ。これから先のことは何もわからない。過去の実績は、結果論なのだ。この実績が未来永劫続くというわけではないのだ。だから、私は3年間、何もしないで暮らせる貯金を持っている。これには手をつけないのだ。これがあれば、投資していたお金が全部なくなってしまっても、アルバイトでもすれば、なんとかなると思っている。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | フリーライフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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