2021年02月06日

フリーライフ 第26話

 私は芸能人じゃないし、普通に美佳と美佳の会社へ向かった。だが、私が来るということで、社内は大変だったらしい。美佳の会社は、結構大きなビルの上の方。受付では、私と美佳の姿を見るなり、立ち上がって挨拶された。美佳と一緒に、社長室へ招かれた。

「はじめまして、高木といいます。」

「おお、来てくれましたか、さ、さ、どうぞ。」

割と腰の低い社長だ。

「テレビで拝見しました。うちの社員の木島とセッションしているので、びっくりしましたよ。」

ほんとに美佳のこと、知ってたのか?

「ありがとうございます。」

「うちの創業記念式典で演奏してもらえるので、本当にうれしく思っています。」

「いえ、こちらこそ、ご指名頂き、ありがとうございます。」


 一通り、挨拶をしたら、総務部のスタッフと打合せをすることになった。式典の内容を確認して、私たちの出番、時間、待機場所等、詳細な打合せだった。まあ、それくらい事前にしておかないと、だね。


 打合せが終わった後、美佳と食堂へ昼食を食べに行った。これだけ大きな会社は、ちゃんと福利厚生の一環で、食堂があるものなんだな。だけど、そこにいる社員さんの注目の的になった。

「なんか、はずかしいな。こんなに見られると。」

「でしょ、私一人になったら、どうなるか、なんとなくわかるでしょ?」

「うん、うん。」

こりゃ、美佳も大変だ。


 私は食事をした後、美佳を残して、先に帰宅した。会社からの要望曲もわかったし、教室へ予約を入れた。売れっ子のプロになると、こんなことが毎日あるんだろうな。そうなると、ゆっくりする暇がなくなるな。やっぱり、今まで通り、ふたりで、やりたいときにやるというスタンスの方がいいかもな。


 その晩、やはり美佳の独壇場だった。私は楽しく、美佳の話を肴にワインを傾けた。式典はなかなかの盛り上がりになるんだろうな。有名になるということは、きっとこういうことなんだろう。でも、気持ちのいいものだ。


 式典当日、オレはかなり緊張していたが、美佳の顔を見てると大丈夫って気がしてきた。オレたちが紹介されて、早速演奏を始めると、みんな舞台の方に駆け寄って、一緒になって手拍子を始めた。美佳の名前も、社員さんから連呼され、とてもうれしそうに演奏していた。おかげで、5曲のつもりが、アンコールされてその後も数曲することになってしまった。でも、とっても充実感があった。美佳の嬉しそうな顔をみると、このセッションは大成功だったと思った。実際、会社からはとても感謝された。翌日には慰労会をセッティングされて、飲みに付き合わされた。たまにはいいけど、このようなことが毎日だと少々しんどいかもな。


「智志さんは、本当に仕事に行ってないん?」

「なにを今更?」

「本当に投資家なの?」

「だからどうしたん?何か不安なの?」

「だって私、何も知らないから。」

私は黙って、通帳を持ってきた。

「ごらん。」

「見ていいの?」

「いいよ。」

「これ・・・すごい。」

「だから、ハウスクリーニングをお願いして、食事もお願いしているんだよ。」

「それだけ、支払っても大丈夫というこうことなんだ。」


 ほんと、今更だ。私はずっと前から、経済的自由だから、好きなことができる。こんなそばにいるんだから、わかっていると思っていた私が、間違っていたのかもしれない。この際だからちゃんと説明しておいた。


 まあ、なかなかこういう生活をしている人はいないから、そうなるとどのように時間を使っていけばいいのか、わからなくなるのかもしれない。だから、美佳はこのまま会社勤めを続けるそうだ。私は特に反対はしない。彼女の思う通りでいいと思う。だけど、一緒に楽しみたいから、セッションはやっていきたいし、これには美佳も賛成してくれている。だけど、その先はどうするのかをまだ考えていない。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | フリーライフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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