2021年02月08日

フリーライフ 第28話

 当日、私たちは発表会の最初から瑠璃の話を聞いていた。社長っぽくなってきたな。業績も更に良くなってきている。すごいもんだ。そうこうしているうちに、私たちの出番になった。ここから先は無礼講、私たちの好きにやらせてもらった。社員のノリがいいもんだから、終わってみれば、1時間も演奏してしまった。こういう音響のいいところも本当にいいもんだ。


「兄さん、美佳さん、本当にありがとう。すっごく、よかったわ。」

「いや、こちらこそ、こんないい場所でやらせてもらって、うれしかったよ。ありがとう。」

「いや~、よかったよ。久しぶりに感動させてもらった。」

両親もご機嫌だった。うまくいってよかった。私たちは、次の日、美佳が会社だからということで、家に帰った。


「なあ、美佳。」

「なぁ~に?」

「今日の立役者は美佳だから、これは美佳のものだよ。」

「何それ?」

私は分厚い封筒を渡した。

「えっ?何これ?」

「今日の演奏料だよ。」

「こんなに?」

「ああ、いいって言ったんだけど、今後またやってもらいたいし、ちゃんとビジネスとしてということなんだって。」

「でも、私はこんなにもらえない。」

「いいや、全額美佳に渡したいんだ。」

「だって、こんなにたくさん見たことないし。」

そんな問題じゃない。

「まあ、美佳の好きに使っていいよ。」

「手が震える~。」


 こうなってくると、事務所をつくらないといけないな。つまりは、いつまでも遊びでやってはいられないってことだ。美佳が会社に行っている間に、私は会社を立ち上げた。会社なんて、届け出さえすれば、すぐに立ち上がる。合同会社にすれば、費用も安い。社員は私たちふたりだ。今までの分は個人事業ということで、私の収支に入れておいた。だが、次からは、この会社での収支にする。そういえば、美佳の会社は副業を許してもらえるんだろうか。それを確認し忘れていた。私はメールを入れておいた。しばらくして、美佳から返信。総務部に確認したら、問題ないとのことだった。よし、美佳が帰ったら、説明しよう。


「今日、会社を立ち上げたよ。」

「えっ?ほんと?」

「会社代表は君だ。」

「ぶっ、絶対無理。」

「私も代表だよ。」

私は会社の仕組みを美佳に説明した。今後、演奏関連で売上が上がったら、会社の売上にしていく。この方が絶対節税できるし、社会的信用も上がっていく。最初は月1万円の給与だ。本格的に売上が上がったら、もっと上げていけばいい。美佳はちょっとしたお小遣い稼ぎくらいに思ったらしく、納得してくれた。


「だけど、美佳はしんどくない?」

「何が?」

「だって、会社と掛け持ちだよ。」

「ううん、大丈夫。楽しいから。」

「そっか。でも、我慢しないで、ちゃんと言ってな。」

「わかった。ありがとう。」


 会社を立ち上げたからといっても、今までと変わらない。通常は、新しい曲の練習をしてるし、たまにゲリラ・セッションに出向いている。住んでるマンションの集会室でもたまにやる。朝ランの川沿いでも楽しんでいる。たまにお呼びがかかると、演奏料をもらえるので、それは会社の収益に計上する。交通費等の経費計上も忘れないようにしないといけない。でも、今まで通り、スタンスは変えていない。あくまでも美佳と楽しんで、演奏できればいいのだ。


 久し振りに教室の先生から連絡があった。

「一度、遊びにきませんか?」

私たちはちょっと緊張しながらも、先生の楽団を訪ねた。

「先生、お久しぶりです。」

「かなり人気が出てきてますね。まあ、今日は気軽に見学していって下さい。」

そういうことで、楽団の練習を見学させて頂いた。クラシックの演奏を、生で聞くのは初めてだったので、かなりの衝撃だった。美佳は美佳で、楽しんで聞いていた。


「どうですか?ちょっとやってみますか?」

「いいんですか?」

「構いませんよ。」

私たちは、それぞれ今聞いたクラシックのサックスのフェーズを見よう見まねで演奏してみた。美佳のなかなかのもんで、ほぼ完ぺきに演奏してた。


「ふたりともすごいですね。クラシックは練習してなかったですよね。」

「そうですね、今日が初めてです。」

楽団のメンバーから歓声が上がった。

「じゃ、ふたりともこちらへ。」

私たちも練習に参加させてもらった。美佳もアルトサックスのフェーズをうまく演奏している。私もなんとか演奏についていった。曲が終わると、みんなにブラボーと言われたのだ。そんなによかったのかな。


「木島さんもすごいですね。はっきり言って、この楽団に入ってほしいくらいです。」

「本当ですか。びっくりです。」

美佳は感激している。美佳は正直、うまい。もう、私よりという感じもしている。

「おふたりとも、もしその気になったら、いつでも訪ねて下さいね。お待ちしてますから。」

これにはかなり感激した。だって、クラシックなんてやっていないのに、こんなに熱望されるなんて思いもしなかったからだ。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | フリーライフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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