2021年11月28日

短編小説 「オッド・アイ」 第13話 最終回

 電話を切ったあと、ルイーザさんにこう言われた。

「なるほどね。夏休みに彼女作ったのね。」

「あははは。」

「図星でしょ。」

「でも、よかったじゃない。マリアも応援してくれてるみたいだし。」

「ええ、まあ。」

まいったな。ルイーザさんにもばれてしまった。

「というわけだから、3人さん、あきらめないといけないわね。」

「えっ?何ですか?」

こいつら、全然、わかってなかったんか。もっと、勉強しろよ。

「さあ、なんのことでしょうかね。」

オレはしっかり、ごまかした。まあ、いずれにせよ、前回の時に、お断りしたのだから、問題ないと思うけどね。


 久しぶりに木村と大石に会った。

「スペインはどうだった?」

「やっぱり、オレの性に合ってたよ。」

「上条は日本を離れるんだな。」

「ああ、向こうで友達もできて、オレが卒業したら、一緒に商売やらないかって誘われているんだ。」

「大丈夫か?」

「ああ、仲間6人くらいでやるんで大丈夫だと思うよ。」

「なんか、寂しくなるな。」

「いつだって、TV電話で会えるじゃん。」

「まあ、そうだけどな。」

「じゃ、今からいこうか。」

「オッケー。」

オレたちは、久しぶりにバカ騒ぎに興じた。こんなことをするのも、これで最後かもしれないな。だけど、オレのオッドアイはオレを不思議な次元に送ってくれたんだな。でも、それがどうしようもなく過ごしていたオレを、少しは有意義な人生にしてくれたんだ。感謝しなくっちゃな。


 オレがバルセロナに旅立つ前日にルイーザさんは送別会を開いてくれた。オレの仲の良かった仲間もみんな呼んでいいって言ってくれたので、みんな集まってくれた。

「なんか、本当に行っちゃうんだよな。」

「泣くなよ。」

「だって、寂しいじゃないか。」

「私たちだって、悲しいのよ。」

「おいおい、笑顔で見送ってくれよ。」

「そんなこと言ったって・・・」

まあ、なんやかんやと、オレと関わった連中だ。別れは惜しい。

「さあ、今日は楽しい送別会でしょ。みんな飲んでね。」

ルイーザさんも楽しくやってくれている。結局、就職が決まらなかった山内は、オレの代わりにこの店を手伝うことになったらしい。ちゃんと、スペイン語、話せんのかな。あとはルイーザさんにお任せだ。

「おい、上条、寂しいぜ。」

「大石まで、今頃何言ってんだ。ちゃんと、就職きまったんだろ。がんばれよ。」

「ありがとう。」

「木村、世話になったな。」

「いつでも日本に戻ってこいよ。飲みに連れってってやるからな。」

「サンキューだ。」


 その時だ、大きく揺れた。また、地震か。また、自分が違う世界に飛んでたらどうしようという不安に襲われた。

「今の大きかったよな。」

「もう、大丈夫かな。」

「大した事ないぜ。」

オレはスマホを確認した。連絡帳はもののままだ。

「上条、どうしたんだよ、スマホなんか見て。」

「いや、なんでもない。」

「ところでさ、明日は何時の飛行機だ?」

「フライトは昼からなんだ。」

「そうか、じゃゆっくりできるな。」

「ああ。」


 良かった、何もかわってないみたいだ。みんなは、オレの送別会に集まってくれている。ということは、何も変わってないんだ。バルセロナで、変な占い師が言っていたことがほんとだったら、オレはもうあんな体験はしないはずなのだ。マリアは相手にするなって言ってたけど、オレにはまともなことを言っていたように思った。


「どうしたの?」

「いえ、なんでもないです。」

「案外、寂しくなったりして?」

「ルイーザさん、それはないですよ。でも、・・・」

「でも、何よ?」

「ルイーザさんと離れるのは寂しいかと・・・」

「何いってるのよ。」

「彼女に会えるんでしょ。確か、サラって言ったっけ?」

「えっ、何?上条、お前、外人の彼女作ったのか?」

地獄耳の大石が割り込んできた。

「聞き間違いじゃないか?」

「いや、確かに聞いたぞ。サラとか言ってたな。」

「お前、よくスペイン語わかったな。」

「そんなとこだけは敏感なんだ。」

まいったな。なんてヤツだ。


 オレはみんなにもみくちゃにされながら、楽しい一時を過ごした。でも、あの地震のことが多少気になっていた。


 翌日、下宿を引き払い、カバン一つを持って、一人レストランで昼食を食べていた。そこへある人物がやってきた。

「よかったわね、あなたの思い通りになって。」

「高木さん、どうして・・・」

「私は結局元に戻れなかったわ。」

「だって、昨日、いたじゃん。」

「ふっ、それは今の私じゃないわ。」

「どういうことなんだ。」

「あのようなことは2回起こるのよ。あなたは、また元の自分に戻れた。でも、私は戻れなかった。そういうことよ。」

「なんで、そんなこと、知ってるん?」

「私だって、何もしなかったわけじゃないのよ。いろいろ調べたんだから。」

「そうだったのか。オレは見知らぬ占い師が2回起こるって言ってたんだ。」

「まあ、そういうこともあるわよね。」

「あなたの言うように、どうしようもないから、私は今の世界で生きていくわ。」

「こんなことに巻き込まれた縁だから、見送ってあげるわ。」

高木って、いいヤツだな。

「スペインで永住するんでしょ?」

「ああ、そのつもりだ。両親もいるし、姉もいるしな。」

「まあ、よかったじゃない。」

「ありがとう。」


 それから、オレたちは空港まで行った。オレの乗る飛行機ゲートまで、高木さんは見送ってくれた。さあ、これからはオレの新天地だ。楽しむぞ~。そう思うと、飛行機なんか、あっという間だ。バルセロナに着くと、税関でこう言われた。

「目の色が違うね。オッドアイか。」

「恰好いいだろ?」

「だね、で、観光かい?」

「いや、永住だ。」

「そうか、ようこそ、バルセロナへ。」


 マリアとサラが迎えにきてくれていた。今日は青空が広がった、いい天気だ。これからのオレは、きっといい人生になりそうだぜ。




(おわり)



posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | オッド・アイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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