2021年12月04日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第4話

「わたるサンは、彼女、いるんですか?」

「オレは1人が好きなんだ。」

「でも、一緒にいると楽しいですよ。」

「だから、1人が好きなんだ。」

「あ、ごめんなさい。」

「・・・」

「私、わたるサンが好きなんです。だから、私と付き合ってもらえませんか?」

「それは、無理。」

「やっぱり、好みじゃないですか?」

「そんなことじゃなくて、・・・」

「じゃ、お願いします。」

「だから、無理なんだって。」

「どうしてですか?」

まいったな。こんな時は、嘘ついて、あしらった方がいいんだろうけど、オレは嘘つくのが下手だから、困る。正直に言うか。

「オレはトラブル・アトラクターだから、君を危険にさらしてしまうんだ。」

「アトラクターって?何ですかそれ?」

「要は、トラブルを引き寄せる人のことだよ。」

「でも、過去がそうでも、これからはわからないじゃないですか?」

「君は死にたいの?」

「そんな・・・」

「自分のことは自分で守れる。でも、君のことを守れる余裕がない。オレの傍にいるということは、死の傍にいるっていうことだ。」

「意味、わからないです。そんなこと。」

まあ、そうだろうな。なんのことかわからないだろうな。オレからトラブルに引き寄せることもあるけど、トラブルから寄ってくることもある。そんな時に、自分だけで精一杯のことが多いんだ。


「わからなくて、結構。さあ、食べたら、帰ってくれ。」

「そんな、ひどい。」

「そうだ、オレはひどいヤツだから、あきらめてくれたらいい。」

「いいえ、本当は優しい人です。だって、私を助けてくれたじゃないですか?」

まいったな。

「ああ、あれは気まぐれだ。」

「わたるサンから感じるのは、優しさです。」

なんなんだ?この子は。

「とにかく、帰ってくれ。で、二度と来ないでくれ。」

「いいえ、また、来ます。もっと、わたるサンのこと知りたいです。」

オレが人殺しでもか。今までに、オレは何人も殺してきた。ケガを負わすなんて、しょっちゅうだ。


 そういえば、トラブルだけじゃなく、ある種の女はオレに興味を示す。面倒臭いだけだ。だから、オレは女に特殊な感情を抱かないようにしている。後々、面倒になるだけだからな。


 仕事の打合せの帰り、銀行に寄った。たまには通帳の記帳も必要だ。まあ、十分あるんで気にはしてないけど、個人事業主としては、やっておかないと後々面倒だからな。


 オレが順番待ちをしていると、数人の男たちが入ってきた。またか。

「ドア閉めろ。」

バァン。いきなり、拳銃の音が響いた。空砲じゃない、マジだ。

「みんな、伏せろ。早くしろ。」

「おっと、ベルなんか押したら命なくなるよ。」

「金をこのバッグに詰めろ。」

とにかく、この場をやり過ごしたら、解放されるだろうと、オレは思った。が、事情は変わってきた。銀行マンの誰かが、ベルを即座に押したみたいだった。それが、犯人にわかってしまったみたいだ。


「てめ~、押したな。」

バァン。いきなり、1人の銀行マンが打たれた。その瞬間、悲鳴が上がった。仕方がない。オレは犯人の人数を確認した。4人だ。みんな被り物をしているから、顔はわからない。拳銃を持っているのは・・・2人。あとは、刃物を持っている。

「早く、詰めろってんだ。何やってる。」

かなり、焦っているみたいだな。

「遅いと、また、死ぬよ。」

コイツ、なんか冷静。3人はひどく焦っているけど、1人だけ、冷静なヤツがいる。こういのが、一番厄介だ。

「早くしてね。あと30秒でまた撃つよ。」

「は、はい。」

女性の行員は、手が震えている。だから、なかなかカバンに入れれない。

「あと、10秒です。」

女性行員はもっと、震え出した。

「タイムアップ!」

バァン。男の行員が撃たれた。今度は頭に当たったみたいだ。こりゃ、即死だな。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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