2021年12月23日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第23話

「ところで、マリアは何歳なん?」

「私?29歳だよ。ワタルは?」

「オレ、32歳。」

「私の方が下なんだ。」

でも、身長は上だけどな。どうみても、180近いと思う。オレは176だから、それ以上だもんな。まあ、マリアはあまり気にしてるような感じじゃない。マリアは朝から結構食べる。それにしても、いつトレーニングしてるんだろう。

「だけど、いつトレーニングするん?」

「適当にやってるから、気にしないで。」

「そっか。」


 オレたちは、スイスへいくことにした。マリアは自分の荷物をオレに触らせない。なんでなんだろうと思ってはいたが、オレに荷物だけでも重いのに、一緒に持つことになったら、大変だから、自分で持ってくれた方がいいと思っていた。駅で、切符を買う間、ちょっと荷物から目が離した瞬間、また、チンピラが荷物を盗もうとしたらしい。だが、マリアのリュックは盗めなかった。やせこけたチンピラは、そのリュックが持てなかったようだ。

「私のリュックは持てないわよ。」

「なんで?」

「持ってみる?」

オレはマリアのリュックを持ってみた。なんだ?これ?めっちゃ、重い。どうなってるんだ?

「おもりが入ってるの。全部で、50kg。」

トレーニングってこれか。足腰が強くなるわけだ。腕には5kgづつのおもりを巻いていた。マリアの荷物を持ってあげようなんて気になったら、自滅してるわ。


 列車の中から見える山々の景色は最高だ。目の保養になる。マリアは完全にオレの彼女になっている。すぐにキスしてくるし、抱き着いてくる。まあ、コンパートメントだから、2人だけの空間なんで、問題はないけどね。だけど、途中から混んできて、2人だけの空間でなくなっても、その態度はかわらない。日本人のオレにはかなり恥ずかしいのだから、困ったもんだ。でも、オレたちを見ている、他の客は微笑ましそうな顔をしている。ヨーロッパなら、これが一般的なのかもしれない。


 スイスは、ほんと綺麗な山々が広がって、空気は澄んでいた、

「いい場所ね。」

「ほんとだ。もしかして、日本にも同じような場所があるかも。」

「いいなあ。やっぱり、ワタルと行きたい。」

「でも、オレが住んでいるのは都会だから、こんな景色は見えないよ。」

「引っ越したらいいんじゃない?」

「そうだな。」

考えてみれば、オレの仕事は都会でやる必要なんかなかった。顧客との打合せもオンラインでやればいい話だし、あとは全部メールに電話だ。帰ったら、長野とか、北海道とか、もっと自然豊なところで住むこともかんがえようか。


 オレたちは、もう少し山の方へ出かけてみた。日本でいう高山列車かな、これもなんかレトロでいい感じだ。さすがに寒くなってきた。マリアがくっついてるので、暖かい。マリアもそのようだ。駅に着く前にもう一枚着込んで、外に降り立った。多少、ガスが出てたけど、やっぱり、風景は最高だ。しばし、マリアと一緒に風景を楽しんだ。


 町へ戻ったオレたちは、レストランに入った。今日はここでゆっくりする。マリアはすでに予約していた宿をキャンセルして、この町のホテルに予約をいれてくれた。楽しい食事の時間が終盤に差し掛かった時、オレはトラブル・アトラクターだということを思い知らされた。


 突然、店に大きなくるまが突っ込んできた。窓際にいた客が飛ばされ、ひかれた。オレたちは奥の方にいたので、何事なんだとそちらの方を見た。くるまから3人の男が降りてきて、またもや乱射。オレはマリアをかばって、机の下へ隠れた。そこから、犯人を確認し、肩の骨を破壊、残る2人は肘を破壊。

「マリア、大丈夫か?」

「私は大丈夫。でも・・・」

「なんだ?」

「ワタル、血が・・・」

オレは気が付かなかったが、1発の銃弾がしっかりオレの脇腹を貫通していた。またか。それに気が付いたとたん、なんだか気が遠くなった。

「マリア、これでお別れかもな。」

「そんなこと言わないで、ワタル。」

だんだん、気が遠くなる途中で、サイレンを聞いた。なんとか、間に合うかな。




(つづく)





posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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