2021年12月24日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第24話

 もう何度目なんだろうか。こうして病院で目覚めるのは。横に座ったマリアが寝てる。長いこと、そばにおってくれたんだろうな。

「よう、マリア。朝だよ。」

「えっ、ワタル、目覚めたの。よかった。」

マリアの目から涙が流れた。本当にオレは、いつトラブル・アトラクターから卒業できるんだろうか。オレはマリアの熱い唇を受け止め、もう大丈夫だと言った。


 オレが気を失っている間に、マリアは、オレのからだを見た看護師や医師に、この人、兵士?って何度も聞かれたらしい。まあ、一般人ではありえないほどのキズが残ってるもんな。

「マリア、オレがトラブル・アトラクターってわかったろ?もう止めといてもいいんだぜ。」

「大丈夫、すべて受け止めるから。」

さすが、警察官。そういえば、オレが撃たれた時、しっかり止血してくれていたらしい。そんな知識も持っていたのか。


 結局、10日ほど足止めをくらって、ようやく、スイスを出発した。オレは、マリアの母国語を使っているスペインにいくことを提案した。同じラテン系なんで、マリアも楽しいだろうと思った。だが、マリアは日本に行きたいという。じゃ、ということで、日本行きの飛行機を手配した。

「マリアもペルーに帰らなくて大丈夫なのか?」

「大丈夫。」

いったい、いつまで休みなんだろうか。オレと違って、期限があると思うんだけど。


 日本行きの飛行機は、日本の航空会社だったので、乗務員は日本人が多かった。これで普通に話ができる。んっ、マリアとだって普通に日本語で話をしてたんだよな、オレ。マリアの荷物は機内持ち込みできなかったので、身軽になったみたいだ。飛行機の中でも、マリアはお構いなしにキスをしてくるし、抱き着てくる。乗務員はニッコリ微笑んでいたが、いい加減にして!って思ってるに違いない。

「もしかして、ご夫婦ですか?」

となりの日本人の年配のご婦人が聞いてきた。

「ええ。」

おい、マリア、結婚なんかしてないぞ。

「いいわねぇ。」

「ありがとう。」

「最近は国際結婚も多いですもんね。」

「はい。」


 オレはかおりちゃんの行きたかったヨーロッパに傷心旅行に出かけたはずが、マリアと一緒に帰ってくることになった。やっぱ、かおりちゃんが仕掛けたことかな?そんなことを思いながら、日本に帰ってきた。


「日本ね。」

「そうだ、じゃ、とにかく、荷物をオレんちに置きに行こうか。」

「ええ。」

空港から2時間近くかかったが、久しぶりの我が家だ。

「ワタルの家ね。」

「そうだよ、上がれよ。あ、靴はぬいでね。」

「了解。」

オレは久しぶりに。コーヒー豆をゴリゴリやりはじめた。

「う~ん、いい匂い。」

マリアもうれしそうだ。ゆっくり、お湯を注いで、我が家流のコーヒーの出来上がりだ。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

「わたし、このコーヒーずっと飲んでたいな。」

「そういえば、飛行機の中で、夫婦だっていってよな。」

「だって、あれは・・・」

「いいよ。」

「えっ?」

「だから、OKだよ。」

「ワタル、ほんとに?」

「ああ。」

「大好き。」

マリアの恐るべき筋肉がオレに抱き着いてきた。オレたちは熱いキスを交わした。




(つづく)




posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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