2021年12月26日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第26話

 オレたちは早速、K市へ向かった。マリアは日本の電車も初めてだったし、タクシーも初めて、何もかも初めてづくしで、とても楽しかったみたいだ。K市の駅からレンタカーを借りて、ずっと登って行った。すると、山の感じがスイスっぽくなってきた。くるまを降りて、ローブウエイに乗っていくと、まさにスイスだった。

「日本のスイスです。きれい。」

「いい感じだね。」

「ワタル、ここに住みたいです。」

「いいねぇ。」

といっても、この場所では何かと不自由なので、市内に戻り、賃貸の一軒家を探してみた。すると、おいおい、オレのアパート以下の値段で一軒家があるじゃねえか。オレはマリアと不動産屋に案内してもらった。


「うわ~お。こんなに広い。いいねぇ。」

「築年数は30年ですが、平屋の一軒家で3DK、家賃4万円です。」

「ここらの相場はそんな価格か?」

「高いですか?なら、もう少し安いところとか・・・」

「まあ、今日は、ホテルに泊まるから、また、明日、伺うよ。」


 ホテルでマリアと話した。

「ここら辺の賃貸物件はめちゃ安いよ。」

「そうなの?」

「オレの仕事の収入でも楽勝だ。」

「なら、ここに住んじゃいましょうよ。広い部屋だったし、部屋も多かった。」

「くるまさえあれば、いつでもスイスの光景を見に行ける。」

「最高です。明日、警察署にも行ってみたいです。」

「わかった、連れていってあげるよ。」

「楽しみです。」

オレたちは、ホテルの山の幸のディナーを楽しんだ。


 翌日、オレたちは警察署を訪れた。

「はい、何か御用ですか?」

「警察に入りたいです。」

「はぁ?」

婦人警官はびっくりしてる。

「ちょっと、待って下さい。」

奥から男性警官がやってきた。

「じゃ、話はこちらで伺いましょう。」

オレたちは応接室に通された。

「私、ペルーで警察官してました。日本人のワタルと結婚したら、日本の警察に入りたいです。」

「ということです。今、募集してますよね。」

オレはポスターを指さした。

「確かに。ですが、いろいろと書類を用意してもらわないといけませんから。」

「わかりました。でしたら、用意するものを教えて下さい。」

こんな小さな町の警察なんで、あっという間にマリアの話は広まったらしい。オレは前田刑事に連絡を取って、このK市に住みたいことと、マリアがこの町で警察官になりたいと話した。そしたら、一応、連絡してくれることになった。


 オレたちは何件か一軒家の賃貸を見て、2人でこれという物件を決めた。2人じゃ広めの4LDKで、月4万5千円だ。当然、庭付だ。契約だけして、一旦、元の部屋に帰ってきた。


「あ、小林くん、K市の警察じゃ、えらい話になってるよ。」

「そうですか。」

「一応、口添えはしておいたから、書類作成してもっていったらいい。」

「ありがとうございます。」

ペルーからの証明書やらを取り寄せるのに、10日以上掛かったが、オレは肝心なことを忘れていた。婚姻届だ。結婚式はペルーでするとして、日本でこの届を出しておかないとだめだ。オレの両親もびっくりするだろうな。


「この紙はなんですか?」

「日本の結婚の届け書だ。」

「ワタル、大好き。」

マリアのキス攻撃は、セントバーナードにベロベロなめられている心境だ。オレたちは、一緒に届け出を出しにいった。

「はい、お受けします。」

「どういうこと?」

「結婚、成立ってことだよ。」

「ワタル、愛している。」

また、抱き着かれて、キス攻撃されまくった。役所の担当に、写真を取ってもらって、マリアは上機嫌だった。だが、見ている職員にしてみれば、ちょっと目をそむけたくなるだろう。

「結婚式はペルーでしような。」

「うん。」

さて、オレの両親に一応、紹介せんとな。




(つづく)




posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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