翌日、オレはマリアに両親に会いにいくことを話し、実家へと向かった。
「ただいま。」
「あれ?ワタルか。どうした?」
「どうしたもなにも、1人息子の帰還だろうが。」
「前もって、連絡でもしてくれたらいいのに。おや、その人は?」
「マリア、オレの嫁はん。」
「へぇ?お父さん、大変だ。ワタルが嫁さん連れてきよった。」
改めて、オレは両親を前に、マリアを紹介した。
「マリアです。ペルーから来ました。どうぞ、よろしくお願いします。」
「マリアは日本語話せるから、安心してな。」
「おまえ、どこで知り合ったんだ?」
「旅先で一緒になって、そのまま、嫁はんにした。マリアは警察官で、日本でも警察に就職する予定なんだ。」
「どうりで、立派なからだしとると思ったわ。」
「ワタルより、背が高いんとちゃうか?」
「ああ、オレより高い。」
「今日は泊まっていけるんか?」
「そのつもりだけど、いいんか?」
「なんにもないけど、ゆっくりしていけ。」
「ありがとう。」
「マリアさん、じゃ、手伝ってけろ。」
「はい、おかあさん。」
マリアはおふくろと庭先に出て行った。
「まあ、突然だけど、国際結婚になっちゃったよ。」
「いいんだな。」
「ああ、オレが決めたことだ。」
「おまえさえ、いいなら、こちらは何も問題ない。」
「ありがとう、親父。」
「で、ペルーで結婚式するんで、どうかな?」
「そんなところまで、いけるか。」
「そういうと思った。だから、ハイこれ。」
「なんだ?」
「これで、ペルーでの結婚式を見れるから。」
「そうなのか。」
「操作がわからなかったら、隣の健介に聞いたらいい。」
健介はオレの同級生で、ずっと、ここに住んでいる。と、いいタイミングで現れやがった。
「ワタル、久しぶりやん。」
「おお、健介、相変わらずだな。」
「ところで、庭におる外人は?」
「オレの嫁はんだ。」
「おめ~、外人と結婚したんか?」
「ああ。」
「すげーな。」
「でな、ペルーで結婚式すっから、これで中継をやってくんない?」
「ええで、まかせとけって。」
まあ、そんなこんなで近所中の連中が集まってきた。当然、晩御飯時なんで、みんないろんなものを持ち寄ってきた。オレの実家は、すごい賑わいだ。マリアはペルーと一緒だと喜んでいる。
「ちゃんと、ワタルから紹介せんといけんわ。」
「わかったよ、マリアおいで。」
「おお。」
「ヒュー、ヒュー。」
「え~、オレの嫁さんを紹介します。マリアと言います。ペルーから来ました。」
「マリアです。よろしくお願いします。」
「マリアちゃん、よろしくね。」
「よろしく。」
マリアはみんなから、いろんな質問されても、笑顔で答えている。オレには耐えられんけどな。でも、ペルーでそうなることを覚悟しておかねば。
「マリアちゃん、座ってると、みんなと変わらないのに、立つと大きいのねぇ。」
足が長いってことだろ。それから、太い腕の話になった。警察官をしていて、トレーニングを欠かしたことがないからだと説明していた。それにもみんな、感心していた。
宴も終わって、あと片付けも終わり、ようやく静かな時を迎えることができた。
「日本もペルーと同じで、楽しかった。」
「よかったな。」
「ワタルでよかった。」
両親の目の前で、オレに抱き着き、キスされた。
「あんれまあ、仲の良いことで。」
「こういうことは、外人なんで。」
「どうぞ、ごゆっくり。」
マリアは離してくれない。まあ、付き合うか。オレたちは自分たちの部屋に行き、長い夜を過ごした。
(つづく)