2020年09月10日

変わりゆく未来 第6話

「じゃ、武田の席はあそこだから。」
「はい。」
窓側の後ろから3番目の席だった。まわりの人に、
「よろしくお願いします。」
と言ったら、
「クラスメートじゃん。」
と言ってくれた。どうやら、普通に受け入れてくれたようだった。

 そうなると、今度の問題は、授業についていけるかどうかだ。最初の国語はそんなに問題なさそうだった。文章読解とか、漢字とか、そんなのは一般常識だ。

 休み時間には興味本位の人たちの群れが押し寄せてきた。
「本当に記憶喪失??」
「誰かに殴られたとか?」
「うそなんじゃない?」
「頭の中に血の塊があるんじゃない?」
「じゃ、超能力使えんの?」
「まさか、余命何ヶ月とか?」
 おいおい、どんどん話が発展してくる?!発想が飛躍しすぎだ。そんなに質問されたら、答えようがない。たくさんの質問が出まくった後、静かになってみんな私に注目している。
「ごめんなさい。全然わからないです。」
「うえ~、ほんとかよ?」

 ある女生徒が突然言い放った。
「あ、文字が違う!」
ノートに書かれた私の文字と、それまでの文字が全然違うのだ。
「ほんとだ。もしかしたら、多重人格で違う武田くんが出てきているんじゃないの?」
「ホントは誰よ?」
しまった。そんなふうに言われると思わなかった。
「今までの武田くんに変わってよ。」
そんなことができるかどうかも分からない。
「ほんとに何もわからないんだ。人格が変わるとか、今までの自分とどうやって入れ替われるのかとか、多重人格なのか、ほんとに記憶がないのか、自分でもわからない。」
「演じてるだけなんちゃう?」
こいつら、ほんとにむかつく。ほっといてくれよ。
「おまえら、いい加減にしてやれよ。」
福田が助け舟。恩に着る。

 そんなこんなで、なんとか、お昼まで無事に過ごせた。お昼は4人で食べることになった。あの時の4人だ。
「いつからなん?」
「2日前の帰りの電車の時だよ。」
「そういや、おかしかったもんな。」
「すべて記憶が飛んで、何がなんだかわからなかった。」
「オレだったらどうするかな?」
「パニクって、無茶苦茶になってるやろな。」
「福田くんに助けられたよ。キミがいなかったら、自分の家にたどり着けなかった。」
「キミだって?ほんとにいつもの武田とちゃうな。」
「普段はどんないい方するのかな?」
「まあ、ブゥとか、おまえって言うだろな。」
「そうなのか。」
ちょっと、言い方を勉強しないといけないな。

 今日は疲れた。気疲れだ。明日はちょっと、ましになるだろう。さて、これから私はどんな生活を送っていけばいいのだろうか?40過ぎのオッサンが、中2になったんだから、人生のやり直しができている訳だ。本当はもっと喜ばないといけないのだろうが、慣れるまでくたびれる。

 今日の成果としては、私は帰宅部なのだが、本当はいろんな運動部に誘われていたらしいことが分かったことだ。ちょっとはスポーツができるヤツだったみたいだ。頭の程度はみんなが言うには、中の上程度のようだった。40過ぎだから分かることだが、ちゃんと運動していないとホントにからだが動かん。なにか、やったほうがいいようだ。そういっても、部活はすべて断っているし、朝、ランニングするとかしようかな。勉強も実際に働いた時に役に立つものを考えた方がいい。早い段階に資格をとるのもいいかも知れない。

「お兄ちゃん、これ教えて!ユミ、わかんない。」
あ~、やかましいのがやってきた。小学校の宿題くらいならなんとか教えてやれるだろ。
「あ、そっか。そんなふうに考えればいいのね。さっすが!おにいちゃん。」
「あのな。それぐらい自分で分かれよ。」
「ところでユミは将来何したいん?」
「ん~、まだ考えてないけど。」
「そっか。」
「お兄ちゃんはどうするん?」
「どうするかな?」
みんなにあれこれ、詮索されないようにするには、留学がいいかも。まったく、私を知らない人の中で暮らすのだから、ちょっとは気が楽だよな。多分、武田はそれくらい出しても、子供の教育には糸目を付けんだろう。ただ、この年からそんな体験させてくれるだろうか?すぐには、こんな話は難しいだろうな。

 しばらくはなんとかやっていくことができた。が、問題は学校で起きた。やっぱり、この年齢はそういうことを引き起こす年齢なんだろう。

 同じクラスの会田くんのノートや教科書にいたずら書きがしてあった。それも、マジックでだ。太っといマジックだから、文字が見えない。かなりやり過ぎだ。どうやら、やった連中も検討がつく。滝田さんとその一味なのだ。やったのは女の子たちだ。うらみを買いたくないから無視したいが、そんな訳にはいかんだろう。だが、会田くんは静かにそれをしまって、帰ってしまった。

「うざいヤツが消えたわ。」
滝田さんがそう言ったのを聞き洩らさなかった。いじめというのは、こんな感じなんだろうな。会田くんが思い余って自殺したらどうすんだ?
「もうやめとけよ。」
私は小声で彼女に言った。そうしたら、ものすごい目でにらんできた。やっぱりな。こういうヤツはそういう態度をするんだろうな。彼女は何も言ってこなかった。


(つづく)
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2020年09月11日

変わりゆく未来 第7話

 次の日、やっぱり、やられた。私のロッカーの中の体操服にいたずら書きがされてあった。その字でやった犯人が誰だかすぐにわかった。というか、滝田しかいない。だけど、証拠の話になると思うので、どうすればいいか分かっている。

 案の定、滝田はニヤニヤ笑っている。こんなひねくれたヤツがいるとなると、中学生は大変だな。
「これをやったヤツ、堂々と名乗りでてくでないか?まあそんな度胸もないだろうけど。」
滝田のヤツ、むっとした顔になった。
「これをやったヤツを割り出す方法を知ってるけど、警察呼ばなければならないから、今のうちに名乗り出た方がいいと思うよ。」
ふん、そんなことできるか!みたいな顔をしてる。

 そこへ先生が通りかかった。
「ん、どうした?」
「体操服に落書きをされたんです。あ、触らないで。」
「どうしてだ?」
「鑑識に検査してもらって、犯人を特定するからです。」
「ん?どうやって?」
「犯人は私の体操服に触っているはずなので、そのタンパク質を調べれば犯人を特定できます。」
「そうなのか?」
先生もびっくりしていた。
「いくら先生がだめといっても、私はその犯人に損害賠償を請求しないと気が済まないです。」

「警察呼びます。」
「武田、ちょっと待ってくれ。」
先生があわてた。そりゃそうだろ。学校が警察沙汰になったら、問題だからな。
「じゃ、今後、こんなことがあったら、学校が責任とるんですか?犯人になんのお咎めもせずに!」
まあ、ぐうの音も出ないだろうな。
「それじゃ、私はこの証拠の体操服をビニール袋にいれて、警察に持っていきます。」

「だけど、そんな検査で犯人わかるのか?」
福田が言った。
「日本の警察の鑑識はとってもすごい。衣服についた微量のタンパク質から、遺伝子を割り出し、犯人を突き止められるんだ。」
「すごいな。」
「まあ、やったヤツはやられた方の気持ちはわからないだろうから、当分牢屋に入ってもらって反省すべきだろうな。」
ちらっと、滝田の方に目をやった。さすがに青い顔をしていた。
「それから、損害賠償請求として、体操服代と慰謝料を請求する。数万円は取られるだろうな。こんなことがわかったら、世間的に親も白い目で見られるし、ヘタすると引っ越しないといけなくなるかもね。たぶん夜逃げだね。」
ますます青い顔している滝田には、いいお灸をすえた感じだ。
「おまえ、ほんとに変わったよな。すっごく、理性的な気がする。」
「そうかな?」
そうりゃそうだ、少なくとも30年ほど年上だしな。それなりの知識はある。

 放課後、私が一人の時に、滝田があやまりにきた。
「ごめんなさい。本当にごめん。ちゃんと体操服弁償するから許して。」
「いいよ。相手の気持ちが分かってくれたらそれでいいよ。体操服だって、なんとかするからいいよ。ちゃんと滝田さんがそういう気持ちになったことがボクはうれしいんだ。」
「ごめんね。」
彼女は涙を流してた。

「会田くんにもあやまっておいてね。なんだったら、付き合おうか?」
「自分で言うから大丈夫。」割と素直やん。だけど、もっとひねくれてるヤツもいるんだろうな。それから、職員室で、先生に警察のことは撤回した。ほっとしていたみたいだった。子供の社会も大変だな。

 さて、この体操服、どうやって母親に説明しよう?やっぱり、正直に話すしかあるまい。
「おかあさん、ちょっといいですか?」
「何かしら?改まって。」
「実はこの体操服なんですが、」
「え~、ひどい。どうしたの?」
「何~どうしたの、お兄ちゃん、いじめられてるの?」
また、二階からユミが降りてきた。すっごく、地獄耳なのか、聞き耳立ててるのか、こいつには負ける。

「ひどいね。死ねとか書いてある。こんなん、落ちないよ。」
「そうね、洗剤では無理かもしれないわね。でもどうしたの?ちゃんと説明してちょうだい。」
とりあえず、はじめから、順に理路整然に、かどうかわからないが、一通り説明した。
「ということで、あの子はちゃんとあやまったから、ボクは許したんだ。そういう気持ちになってくれたから、この体操服も弁償しなくていいと言ったんだ。おかあさん、ごめんなさい。余計な出費になってしまって。」
また、ほろほろ泣き出した。この人は本当に泣き虫だな。

「お兄ちゃん、優しすぎ!徹底的にこらしめないとだめだよ。」
ユミはやっぱり、そう言うと思った。
「わかったわ。ヒロシの気持ち、うれしいわ。お金のことは気にしないでいいから。」
この人はいい人だな。なんか、ほっとする。ユミはまだ、ブチブチ言っている。自分のことのように、おさまらないみたいだ。
「相手はちゃんと反省してくれたんだ。だから、もういいんだよ。」
「そんなこといっても、お兄ちゃんの体操服、こんなにして。」
もう、これから何事もなければいいのだが。

 次の日、急に人の輪が広がった。いつも4人グループで行動することが多かったけど、いつの間にか、滝田のグループも合流して7人で昼食することになった。まあ、和気あいあい的な感じで、男女ワイワイするのもそれなりに楽しいから、まあいいかって感じだ。やっぱり、この年代はこういうふうな感じで過ごすことが多いのかもしれない。別に1人でもいいのだが。

 放課後、帰りしなに一人の生徒が3人ほどの生徒に連れられて、路地へ入っていったのを目撃した。
「あれ、山岸くんたちだよね。」
「あれはほっとけよ。」
「かかわると面倒なことになるから、無視したほうがいい。」
路地が見えるところに来たとき、やっぱり、一人の生徒を山岸たちが囲んでいる。どう見てもお金を巻き上げているように見える。連中もこちらに気付いたみたいで、何やら叫んでいる。

(つづく)
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2020年09月12日

変わりゆく未来 第8話

「やっべぇ。」
「武田がじっと見るからやで。」
「オレ、知らんぞ。」
山岸たちがやってきた。
「何みてんだ。」
「文句あんのかよ。」
「言いふらしたら、ただじゃおかね~ぞ。」
こういう連中は見かけはどう見ても不良っぽい。
「こういことはやめた方がいいよ。」
「なんだと。」
「俺たちは、くれるというからもらっただけだ。」
「そうだよな、木島。」
「は、はい。」
「ほれ、みろ。」
「いくらくれると言っても、本当にもらったらだめだよ。」
「武田、いい加減にしろよ。」
「覚悟はできてんだろうな。」
「なんの覚悟なのかな?」
「こいつ、ふざけやがって。」
「ちょっと、こいや。」

 なんで、こんなこと言ったんだろう?今までの私は絶対こんなことに巻き込まれないように生きてきたのに。
「どこに行くの?」
「いいから、こいや。」
3人に連れていかれて、もっと人気のないところにやってきた。いきなり、胸ぐら掴まれて、
「おまえ、わかってんのか。こら。」
「人の嫌がることはやめといた方がいいよ。」
「うるせー。」
いきなり、殴られた。いてー!マジ、痛い。
「暴力行為は傷害罪で警察行きだよ。」
「関係あるかよ。」
また、殴ろうとするのをとっさにかわした。
「抵抗すんのかよ。」
「おまえ、覚悟しろよ。」
「抵抗じゃなくて、かわしただけだよ。」
「うるせー。」
また、殴りかかってきたので、その手を払った。

 なんか、スピードが遅い。そんなんでよく不良してるなって感じ。
「まだ、やるなら反撃させて頂きますが、どうします?」
「こいつ、ちょっとやるかも。」
「やっちまえ!」
3人で殴りかかってきた。でも、3人とも、なんか遅い。こんなん、十分にかわせる。突進してきたヤツの足を払って、殴りかかってきたヤツの腕を掴んで、後ろに締め上げた。

 リーダーの山岸のパンチを締め上げたヤツで盾にした。なんか、たいしたことない。本当にこんなんで不良してるのか?私は何を怖がっていたんだろうか?適当にあしらって、3人の戦闘意識を折ってやった。
「まだ、やりますか?」
「おまえ、どこでこんなこと覚えたんだ?」
「別になにもしてないけど、帰宅部だし。」
「おまえ、つえ~な。」
「もう、こういうことはやめようよ。わかってくれたかな?」
「知るか!」
「同じクラスメートなんだから、仲良くやろうよ。」
「おまえ、覚悟しとけよ。」
「覚悟も何も、本当にやめようよ。いいね?」
彼らは怖い目で私をにらみつけた。こりゃ、まだまだしばらく続きそうだ。私は何度も念を押したが、どうやら、改心するのには時間が掛かりそうだと感じた。

 家に帰ってから、ブゥからラインメッセージ。
「大丈夫だったか?先に帰って悪かった。ごめん。」
「全然、大丈夫だよ。問題ない。」

 特にどこも被害はない、、、ってことはないか!殴られた個所は、もう痛むことはないけど、そのあとがはっきりわかる。また、おかあさんとユミに追及されるだろうな。しらん顔してたら大丈夫かな?いや、ばれるかもな?

 夕食の時に、やっぱり、ユミが一番に気が付いた。
「お兄ちゃん、どうしたのその顔!」
「あら、ホント。何かあった?」
「いや、ちょっと。」
「ちょっと何よ?」
「だから、ちょっと。」
やっぱり、無理のようだ。ほんとのことを言うしかないな。

「実は殴られた。」
「え~、誰によ?」
「ちゃんと説明してちょうだい!」
なんか、おかあさんと小さいおかあさんの尋問を受けているようだ。とにかく、今日の出来事を話した。

「友達同士のことだから、気にしないで大丈夫だから。」
「そんなこといっても、今からその人の家に怒鳴り込んで。。。」
「ユミちゃん。お兄ちゃんに任せておけば大丈夫なようね。その後のこともちゃんと教えてね。」
「分かりました。」
「まったく、おかあさんは甘いんだから。」
なんかだんだんユミは口やかましくなってくる気がするな。


(つづく)

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変わりゆく未来 第9話

 次の日の帰り、校門を出てから付けられていた。まずいな。助っ人を呼んだか。案の定、人気のない道になると、そいつらに道をふさがれた。
「武田ってヤツはどいつだ?」
「ボクだけど。」
「ちょっと顔かせや。」
「やめとけよ。」
「うるせーな、外野は黙っとれ!」
「私だけでいいよね。」
「おう、ほかはいらんわ。」
「わかった。じゃ、みんなまたね。」
心配そうなみんなを帰し、私はこいつら、、、3人と一緒に行くことにした。

 ちょっとした空き地に案内されていくと、山岸たちがいた。おいおい全部で6人か。ちょっとまずいかも。
「よくきたな。その度胸、ほめてやるわ。」
「あの、ちゃんと話をしましょう。」
「何ぬかしてんだ、テメー!」
「ボクは人の嫌がることはやめようと言ってるだけだよ。ケンカなんかしたくない。」
「ホントにこいつか?」
ボスのようなヤツが言った。
「お願いします。」
山岸はそいつの手下のようだった。まいったな。一度、かかわるとめんどくさいなあ。

「話せば分かることだと思うので、、、」
という間に一人が殴りかかってきた。やっぱり、動きがスローのような気がする。簡単によけれる。
「ちょっと、本当にやめましょうよ。」
「うるせー!」
別のヤツが突っ込んできたが、楽々よけれる。そうこうしてると、ボスが立ち上がった。まいったな。

「では、1対1でどうですか?」
「おう、じゃタイマンだ。」
ボスはいきなりケリを入れてきた。こいつはちょっと早い。なんとかよけたが、いつまでもよけられそうもない。殴りかかった拳を受けて、後ろ手にねじ上げた。
「もう、止めませんか?」
「いや、まだだ。」
 くるりと回って、さらに殴りかかってきた。やっぱ、今までと違ってちょっと早い。だけど、私はこんなに運動神経よかったかな?すんでのところでよけたけど、すぐさま放ったケリにはついていけなかった。おもいっきり、太ももを打ち付けた。痛~!!ボスがニャリとしたのが見えた。すぐさま、次のケリがやってきた。私は片手でそのケリを思いっきりすくい上げた。当然のように、もう片足が地面から離れ、思いっきり地面に頭を打ち付けることになった。

 あ~、やってしまった。しっかり、脳震とうを起こしたらしく、起き上がってこない。
「山岸クン、ちょっと手伝って。」
そういうとボスのからだを抱き起し、
「大丈夫?ごめんね。」
と言った。しばらくして、彼は気が付いた。私の腕の中にいると分かると、飛び起きたが、当然、頭がくらくらしているようだ。

「さあ、もうやめようよ。これで気が済んだろ。」
「おまえ、どこかで番はってたんか?」
「いや、なにもしてないよ。」
「そうか、次はまけないぞ。」
「まだ、やるん?もうやめようよ。」
まだ、素手だからいいけど、武器を持たれたら、大怪我するよな、やっぱり。
「いや、オレが勝つまでやる。」
「え~、じゃ、私の負けです。ごめんなさい。ということで許してね。」
「あほか!そんなん、できるか!」
「山岸クンからもなにか言ってよ。」
「おまえがオレらに手を出すから悪いんや。」
「じゃ、悪いことはもうしないでほしいんだけど。」
「うるせー、世の中が悪いんや、大人が悪いんや。」
そういうことか!
「そうか、なんでも人のせいにするんですか。自分で変えていけばいいだけと思いませんか?」
「うるせいや。」
「大人は外見で判断する人が多いけど、そんな大人は無視でいいと思います。まったくもってくだらない大人ですから。きちんと自分と向き合ってくれる大人だけ、ちゃんと対応すればいいと思いませんか?」
「・・・」
「こんなことして、自分を下げてしまっても、何もプラスになりませんよ。」
「もっと長い将来を見据えてやっていきませんか?ボクに協力できることなら、何でも協力しますから。」

 しばらく、黙っていたボスが口を開いた。
「おまえの言ってること、わかるよ。オレらが腹立ててる大人はくさっとんや。そんなヤツは無視、確かにそうや。その通りや。」
「なあ、おれらの仲間にならんか?」
「それはいいけど、ケンカや悪さはだめですよ。」
「はははは、もうやらんわ。おまえの言う通りやしな。」

「木村さん、ちょっと。」
山岸があわてて言いかけた。
「こいつは強い。おまえなんかのレベルと違うわ。」
結構、私を買ってくれている。話を聞くと、ボス=木村さんは高校1年ということだ。どうりで体がでかいと思った。中2にしては老けている気もしてた。山岸も木村さんに諭されて、悪さはしないと無理やり誓わされてた。

 その日は、木村さんにおごって頂くことになって、ラーメン屋に入った。ほぼ、無理やり、餃子とチャーハンとラーメンのセットを食べさせられた。かなり、お腹パンパン状態だ。木村さんはかなり上機嫌で、私も悪い気はしなかった。

 だいぶ、遅くなって、家に帰った。
「お兄ちゃん、遅~い!」
「ごめん、ごめん、遅くなった。」
「さ、さ、ご飯しましょう。」
「実は、・・・・という訳で食事を呼ばれてきました。」
「そういえば、なんかニンニク臭い~。」
「その人たち、大丈夫なの?」
母親は心配そうだった。
「大丈夫、根はいい人たちだから。」
「なら、よかった。」
「え~、お母さん、そんなんでいいの?」
相変わらず、ユミはうるさい。

(つづく)

posted by たけし at 22:28| 兵庫 ☁| Comment(0) | 変わりゆく未来 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月13日

変わりゆく未来 第10話

 だけど、私はこんな性格ではなかった。このからだになってから、なんか性格も変わってしまった気がする。あんな不良たちと立ち回りなんか絶対にしないし、仲良くなることもなかったはずだ。どうなっちゃっているんだろう。あんなに運動神経もよくなかったはずだし、ましてやケンカなんて。

 ブゥに連絡した。まあ、どうみても運動のできるタイプではないから、一緒にいたら間違いなくケガをしていただろう。山岸とその一味と仲良くなった話をしたら、かなりびっくりされた。そりゃそうだろうな。どうやってそんなことになったのか、しきりと聞いてくる。普通に話をしただけだということにしておいた。でも、なかなか信じてもらえない。まあ、そのうち信じてくれるだろう。

 こんなことがあって、だんだん私の周りの人脈が増えていった。学校ではいつの間にか一目置かれるようになってしまった。あの木村さんはとってもすごい人のようで、そんな人と仲良くなった私は、いつの間にか知らない人からも、友人のような振る舞いをされることになった。学校の帰りはいつも知らない人が待っている。見た目は不良に見えてしまうような人ばかりだ。で、年上の人もかなり多い。なんで、中学生の私が、高校生たちに友人扱いされるのだろうか?よくわからん。まあ、交友関係が広がるのは楽しかった。不良といっても根は良いヤツばかりで、単に見た目の問題だけだった。

 だが、学校の先生たちにはそうは映っていないようだった。武田が不良どもと毎日遊んでいるように見えているようだった。それも、一緒になってカツアゲとかケンカと明け暮れているウワサもあったようだった。でも、成績はそんなにひどいものではなく、学校内での行動も悪くない私には、分かってくれる先生もいた。

 しかし、生活指導の先生だけは、いっつも私をにらんでいた。
「武田、ちょっと来い!」
「はい。」
ついに来るときがきた。まあ、しっかり話をしないと、こういう先生にはわかってもらえないのだろう。
「おまえは学校の帰りに、不良といつも一緒だといううわさがあるが、実際のところどうなんだ。」
「不良じゃないですよ。いい友達です。」
「不良どもと一緒にカツアゲやったり、ケンカ三昧といううわさを聞くぞ。」
「うわさは私に嫉妬している人からのものでしょ?私たちはケンカもしないし、カツアゲなんかもしないですよ。」
「不良どもは必ず否定するものだ。」
「先生は、私がそうであってほしいのですか?」
「いや、そんなことはない。おまえを心配しているんだ。」
「じゃ、安心して下さい。何も問題ないですから。」
「これから高校受験もあるし、問題を起こしたら自分の将来が大変なことになるんだぞ。」
「分かってます。大丈夫ですよ。」
「だから、先生はおまえを心配しているんだぞ。」

 絶対、思い込みの強い先生だ。
「問題が起こってからでは遅いんだ。」
「先生は決めつけてませんか?外見は確かに不良っぽく見えますが、それは今までそうだったからで、私と付き合いだしてから彼らは悪さしてませんよ。根は本当にいい人たちです。」
「やっぱり、不良と付き合ってるんだ。」
どうしても、そう思いたいみたいだ。困ったものだ。
「どう言っても、先生は決めつけるんですね。」
「いや、そんなことはない。」

 しっかり、決めつけているくせに困ったものだ。
「先生はどうしてほしいんですか?」
どうやら、学校以外の連中とは付き合ってほしくないようだった。それも、見た目が不良にみえる人たちと。多少、やんちゃな恰好でもいいじゃないと思うのだ。でも、この先生にはそれが許せないようだ。困ったものだ。さて、どうしようか。

「担任の高木先生も呼んでもらっていいですか?」
「いや、それは。」
急に口ごもった。実は、高木先生にやり込められたことがあるのを知っている。
「こういう話は二人でするより、三人以上いた方がいい知恵もでるかと思いますし、呼んでいただけますか?」
しぶしぶ、高木先生を呼ぶことになった。
「おう、どうした?」
「生徒指導の先生から、私の交友関係について問題があるとのお話しを頂いているのですが、私自身、問題ないとの判断をお話ししているところです。」
この先生にはちゃんと話をしているので、しっかりわかってもらっている。
「おう、そういうことか。先生、こいつに関しては特に問題ないです。他校の生徒を公正させたりして評判いいんですよ。見た目はまだ、不良っぽく見えるかもしれませんが、ちゃんと武田がいい方向に導いているんで、助かっているんですよ。」
「そうなんですか。わかりました。」
ちょっと悔しそうな顔をしていたが、なんとかこれで終わらしてもらった。

「高木先生、ありがとうございます。」
「なんの、なんの。おまえはちゃんと話をしてきてくれるから、安心なんだ。」
やはり、こういうふうに分かってくれる人がいると、会社も学校もやりやすい。

 それからというもの、私に相談にくる人も増えてきた。先生や親などに言えない悩みを私に相談にくるのだ。私も一応大人なのだが、見た目は中2には変わりない。同じ目線で話ができるようになってきたので、相談しやすいようだ。「明るい悩み相談室」でも開室しようか。

(つづく)


posted by たけし at 10:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 変わりゆく未来 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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