小説 「よく眠れた朝には」 第6話

 やった、とにかく、話しかけてみよう。だけど、心配なのはオレのいで立ちだ。どう見ても、この世界の衣服ではないし、頭もちょんまげじゃない。まともに取り合ってくれるのだろうか? その心配はすぐに的中した。オレが近づくるなり、刀を抜いて威嚇してきた。「オレ、一人だし、何もしないですよ。」「あやしいヤツだ。」「切り捨ててしまえ。」「ちょっと待ってよ。本当に何もしないよ。」 だが、全然聞いてもらえない。オ…

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小説 「よく眠れた朝には」 第7話

 とにかく、宿屋に10日ほど、泊まる旨を伝えて、部屋に案内してもらった。草鞋を脱いだら、足を洗う。それから、部屋に入るということだ。晩飯はお願いできるということなので、お願いすると、具の少ない味噌汁とたくあん2切れ、握り飯2個。まあ、こんなもんなんだろう。 風呂は風呂屋に行けということで、風呂屋にいくと、混浴だ。石鹸もないので、汗を流して、汚れを落として終わり。オレは背が高いので、みんなの注目の…

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小説 「よく眠れた朝には」 第8話

 その日は肉三昧で、長屋のみんなでワイワイ楽しめた。案外、こんな暮らしも楽しいもんだ。町人だけなら楽しい生活も、お侍の連中がくるとそうはいかなくなる。やつらはすぐ人を切る。なんでもかんでも、無礼者だと言ってくる。どっちが無礼なんだ、ほんまに。みんなに聞くとお侍に逆らったらだめだという。殺されるのがおちだという。オレは絶対許せない。今は不死身だから、そのうち鼠小僧でもやってやろうと思った。 ある時…

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小説 「よく眠れた朝には」 第9話

 その日の夕方、火をおこし、持ってきた肉を焼き、川で取った魚を焼き、おにぎりを食べた。誰か分からないが、ずっとオレを見ている。「見てないでこっちにきたらどうだ。一緒に飯を食べないか?」オレはその視線の主に呼びかけた。その視線がビクっとしたのがわかった。「何もしないから、こっちに来て一緒に食べないか?」そう言ってもなかなか来ることはなかった。だが、腹を空かせているに違いない。「早くこないとなくなる…

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小説 「よく眠れた朝には」 第10話

 でも、多分、なるようになるんだろう。こんなこと気にしても仕方がない。もしかしたら、こういう流れが正しいのかもしれない。突然、神隠しにあった人は、実は過去に行ってオレと同じような人生を歩んでいたのかも知れない。実はこんなことはたくさんあるのかもしれない。そうなら、あまり気にせず、このままこの人生を謳歌すればいいだけなんだろう。 ただ、タエには今は同居人だということを何回も言って分かってもらった。…

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