2020年12月31日

人なんか嫌いだ! 第11話

 どれくらい経ったのかわからないけど、ボクは目が覚めた。からだは動かない。多分、猟銃で撃たれたんだろう。でも血は止まっていた。植物がボクの血を止めてくれたみたいだった。恐らく、猟師はボクを見て、ほったらかしで、帰ってしまったのだろう。そのまましとけば、死んで土に帰るか、肉食の動物たちに処理されるか、いずれにせよ、ボクの後始末は自然に任せたのだろう。

 猟師は責任逃れをしたのだ。だが、ボクは死なずにすんだが、動けない。このままだと、本当に熊や猪などに食われてしまうだろう。まあ、それでも仕方ないな。いろいろ考えたが、どうしようもないので、ある程度諦めが付いたところに、ロッキーがやってきた。ロッキーはボクのそばについてくれた。ボクは安心した。動物はロッキーが追っ払ってくれるだろう。だけど、ボクが治るまでかなりかかるかも知れない。大丈夫だろうか。

 ボクは適当に植物を育てた。実ったものはロッキーと二人で食べた。体力をつけないと、治るものも治らない。やがて、傷もだいぶ癒えて、多少は動けるようになってきた。そんな時に、ミキさんがやってきた。

「ロッキーがなかなか帰ってこないと思ったら、やっぱり、あなたのところにいたのね。」
「ロッキーには感謝ですよ。」
「ところで、なんでそんなところに、なんで寝てるの?」
「実は・・・」
ボクはすべての事情を説明した。

「病院とか行かなくて大丈夫だったのね。」
「ロッキーのおかげでね。」
「だけど、ひどい猟師がいたものね。私も気をつけなくっちゃ。」
「ですね。」

 ボクはミキさんの肩を借りて、もう少しいい場所へ移動してもらった。
「まあ、ここならあまり雨に当たることもないし、ちょっとはましじゃない?」
「うん、ありがとう。」
「もうしばらく、ロッキーにいてもらっていい?」
「全然OKよ。」

 それから、どれくらい経っただろうか、ボクはようやく歩けるようになった。だが、撃たれた場所が膿んできた。それはだんだんひどくなってきたと思ったら、玉が出てきた。たぶん、異物が体内から押し出されたのだろう。そんなことが数回あって、恐らくすべての玉が出てきた。これは、ボクだけの特殊な例なのか、普通そうなのかわからないけど、やがて、元通りの生活ができるようになった。

 ミキさんと相談して、あちこちに連絡用の仕掛けをつくっておくようにした。そうすれば、猟師がきて、その仕掛けにふれたら、ボクたちにわかるようになったし、なにかあれば、ミキさんへも連絡が取れる。スマホの時代に、原始的だが、これが役に立つのだ。

 ある日、仕掛けからの連絡で、その場所に行ってみた。植物たちもボクにささやいていたので、どちらの連絡でもわかるのだ。そこには、小さな女の子が一人でいた。迷子か。だが、その子の足には、無数のマダニが皮膚を食い破ってパンパンになっていた。こりゃひどいな。

「大丈夫かな?」
ボクは声をかけた。その子は思わず泣き出した。
「今、悪い虫をやっつけてあげるから、ちょっと待ってね。」

 彼女はすぐにボクの言うことがわかったみたい。ボクはたき火をして、細い枝の先を燃やした。一旦火を消して、真っ赤になった先端をマダニに押し付けた。マダニはポロっと落ちていく。あとはそれの繰り返しだ。全部、やっつけて、あとは、痛みどめの葉っぱの汁を塗ってあげた。

「もう、大丈夫だからね。」
そう言ったら、今まで我慢してじっとしていたが、こらえきれなくなったのだろう、ボクに抱き着いてきて、また、泣き出した。
「大丈夫だよ。安心してね。」

 まあ、しばらく、止まらんだろうな。待つしかないか。ボクは優しく背中をさすってあげた。そこにロッキーが来てくれた。ロッキーはその子の手をペロペロなめてくれた。やっと、泣きやんだので、ボクはいつもの甘いトマトを差し出した。
「おいしいよ。食べてごらん。」
 一応、ボクが食べないと食べないだろうから、ボクが食べてみせた。ついでにロッキーにも食べさせた。それをみて、すぐにその子も食べた。
「甘くて、美味しい。」

 ようやく、しゃべったか。安心してくれたかな。しばらく、木漏れ日の中でほっこりした。彼女もしばらく眠っていた。まあ、一人で緊張してたし、お腹一杯になって眠たくなったのだろうね。今日はここで、お泊りだな。ボクも寝るとするか。ロッキーも付き合ってくれた。

 彼女は翌日まで、しっかり眠っていた。朝、起きると、いくつかの種類の実とフルーツを食べた。もう、彼女の顔に不安はなかった。
「ところでお名前はなんていうの?」
「アリサ、4さい。」
「賢いね。アリサちゃんね。じゃ、お家へ帰ろうか。」
「うん。」
ボクらは、道なき道をボチボチ歩き出した。アリサちゃんは抱っこしてたから、元気そのものだった。

 昼過ぎには、アスファルト道にでた。ここからはもうすぐだ。ボクらはいつもの駐在さんちへ行った。
「こんにちわ。いますか?」
「はーい、おおどうした?」
「迷子をつれてきました。」
「いつも、ありがとうね。確か、捜査依頼が出てたな。えっと、アリサちゃんかい?」
「うん。」
彼女は元気に答えた。
「ちょっと、マダニにかまれているんで、その対処をお願いします。」
「了解しました。」
「じゃ、ボクらは帰りますんで。」
「お昼、いっしょに食べないか?」
そんなわけで、ごちそうになった。

 食事の途中で、さすがは駐在さん、私の服の破れと黒いシミを見つけて、こう言った。
「んっ、怪我したの?」
「はい。」
「でも、それかなり大きな怪我じゃない?」
「まあ、でももう治りましたから。」
「でも、その傷痕は・・・銃?」
「まあ、もういいですよ。治ってますから。」
「これは、散弾銃じゃない?」
「だから・・・」
「よくない。よく死ななかったものだ。これは犯罪だよ。犯人を見つけて逮捕しないと。」
「まあ、なんとか生きとったから、いいですって。次回からはそんな目に合わないようにしますから。」
「刑法上は君がどうこう言っても、犯罪だからだめなんだよ。」
「そうなんですか。じゃ、仕方ないですね。だけど、どんな人がボクを撃ったのか、わかりませんよ。分かるのは、日時と場所くらいです。」
「じゃ、教えてくれ。」

 そんなわけで、大体の日時と、大体の場所を話したけど、本当に捕まるのかな?防犯カメラなんてないしね。でも、日本の警察はすごいもので、当日にボクの山に入り込んで、狩猟をしていた人物を特定し、逮捕してしまった。

 まあ、殺人未遂というわけなのだ。それに、救助しなかったということもあって、かなり長い実刑があるようだ。ボクはもうどうでもいいけどね。だから、民事はしない。お金もらっても、使わないから問題ないのだ。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 人なんか嫌いだ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月01日

人なんか嫌いだ! 第12話

 ある日、ボクは不思議な体験をした。特に変わった様子はなく、いつものような日だった。ボクはのんびり、夕日を見つめて、美味しい果物を食べていた。風景はさほど変わってはいないのだけど、なんとなく、違和感を感じた。いったい、何なんだろうか?

 ああ、そっか、ボクから見える風景の左側の平地にいきなりたき火らしき煙が見えたんだ。いままでなかったのになんでだろう。ちょっと、興味があったので、そこまで行ってみることにした。

 近くまで行くと、なんとなく様子がおかしい。雰囲気はかなり古臭い。自然は自然なんだけど、人工的なものがかなり古臭く感じる。たき火をしている人は、今風な恰好をしていない。なんか変だ。ちょっと、様子を伺っていると、みんな着物をきている。裸足の人も多い。男は髷を結っている。みんなちっさいし、痩せこけている。声を掛けてみることにした。

「こんにちわ。」
「おまえはどこから来た?」
「あっちの山に住んでいるけど?」
「あの山か。なんの用だ?」
「特に用はないけど、みなさん何してるんですか?」
「イモを焼いているんじゃ。あ、だけど、おまえの分はないぞ。」
「いいですよ。」
「物貰いじゃないのか?」
「そんなんじゃないですよ。」
「じゃ、何しに来たんじゃ?」
なんかこのやり取りが面白い。

「ひさしぶりに人を見たんで、話をしにきただけですよ。」
「本当にそうなのか?山賊じゃないだろうな?仲間はいるのか?」
「ボク一人です。仲間なんていませんよ。それに、山賊じゃないです。」
「怪しいな。」

 それじゃあ、と、思って、例のトマトを実らせ、みんなに渡した。
「これ、おいしいですよ。みんなで食べて下さい。」
「おお、なんと、甘い。」
「こんなにもらっていいのか?」
「いいですよ。たくさん、食べて下さいね。」
「まだ、あるのか?」
「たくさんありますから、どうぞ。」
「じゃ、カミさんの分をもう一個。」
「どうぞ、どうぞ。」

 急に和やかな感じになってきた。どうやら、ボクを泥棒か何かと思っていたみたいだ。みんなと仲良くなった。食べ物一つで劇的に変わるのは、みんな飢えているせいだった。彼らはみんなガリガリだ。話を聞くと、一生懸命に作った米を大半持っていかれてしまったらしい。

 それって、いつの時代だ?まあいい。ボクはいろんな野菜や果物を出して、みんなに分けてあげた。ものすごく、喜ばれた。そんなに喜ぶものなのかなぁ。でも、その時のボクはまだ気づいていなかった、ここがかなり古い時代だってことに。

「いったい、あなた様はどなたでしょうか?」
なんか急に丁寧な言葉使いになっている。
「特に誰ってことないよ。だって、あっちの山に住んでいるだけだもん。」
「では、なぜ、そのようにたくさんの食べ物をお持ちなのでしょうか?」
「さて、なんででしょうかね?」
「あちらの山にいったら、たくさんあるのでしょうか?」
「そういうわけではないですよ。」
「ほんとうですか?」
「ほしいなら、いつでもあげますので、言ってくださいね。」

 この人ら、ボクの山に行って、盗んでこようと思っているのかな。でも、行っても何もないけどね。ボクがしないと、何もないからね。
「仕方ないから、みなさんにお見せします。」
「何をでございますか?」
ボクはみんなの前で、例のトマトを育てて見せた。

「おお。」
いきなり、みんなボクにひざまずいた。
「疑って申し訳ありません。あなた様は神様なのですね。」
「いえいえ、違いますよ。」
「間違いなく、神様です。」
おいおい、そうなのか。まあ、いいか、そうしておこう。
「みんなが食べたいものを出してあげるから、言ってね。」
子供たちは興味深々で、口々にいろんなものをリクエストしてきた。
「さっき食べたあれがもう一回たべたい。」
それって、なんだ?
「まあいいか。えっと、これかな?」
「それ。」
当ったか。わからないから、適当にいくことにした。

「じゃ、最初はイチゴね。次は、柿、で、次はスイカ。」
「すごい、どんどん採れる。やはり、神様だ。」
「はいはい、好きなだけ食べていいよ。」
「本当ですか。ありがとうございます。」
ボクは神様気分でどんどん出してあげた。
「あまったら、明日食べればいいからね。」
これって、やはりすごいことなんだろうな。

 ボクはしばらく彼らに付き合ってあげることにした。週1回くらいの割合で、会いにいくことにした。でも、こんな近くにこんな人たちがいたんだ、なんてことを驚いていたものだったが、自分自身がタイムスリップしていたなんてまだ気が付いてなかった。

 ボク自身ならあたりまえなのだが、彼らもボロい小屋に住んでいる。で、全体で14~15人くらいしかない。そんな集落なのか。で、そんなある時、侍に出くわした。お、何でこんなところに、こんなヤツがいるんだ。侍らしき人たちは、集落の人から米を奪っていった。ひどいことするな。そこで、鈍感なボクが気が付いた。ここは、今の日本じゃないことを。

 侍たちが帰っていったあとに、ボクはたくさんの野菜と果物を出してあげた。
「あいつら、無茶苦茶しますね。」
「いつもせっかくできた米をみんな持っていってしまうんです。」
「じゃ、米に変わるものが必要ですね。」

 ボクはどうしようか考えたが、米を出して、それが見つかってしまったら、闇米ということで、みんながひどい目にあいそうだし。
「でわ、ジャガイモとサツマイモ、サトイモに山芋をつくりましょう。」
「おお、そんなにですか。ありがとうございます。」
こんだけあれば、主食としてはいい感じだろう。みんなは結構喜んでくれた。だけど、これをずっとするわけにはいかないから、困ったものだ。

 それからしばらくして、ボクはいつの間にか、現代に戻ってしまった。いったい、なんだったんだろう。よくわからない。でも、現代に帰ってこれただけよしとするしかないようだ。でも、このような自然の中では、今も昔もあまり変わらない。それが一番良いと思った。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 人なんか嫌いだ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月02日

人なんか嫌いだ! 第13話

 ひさしぶりに行儀の悪い連中がやってきた。数人いる。こんな山まで何しにきたんだ。キャンプならそれなりに設備が整っていない場所じゃないと、めんどくさいだろうに。

 その日は、適度に雲があって、日差しが出たり隠れたりして、楽しい景色になっていた。ボクはその移りゆく様を木陰でのんびり楽しんでいた。こういう景色はずっと見ていても、飽きないね。ほんと、いつの間にか、夕方まで見続けてしまう。ああ、今日もいい一日だったとほっこりしてたことに感謝している。

 さて、そろそろ帰ろうかと思ったところに、植物たちがささやき出した。数人の若者たちが、キャンプして、騒いでいるみたい。まあ、そのうち帰るだろうからほっておくことにした。だが、1日経ってもなかなか帰らない。ボクは様子を見にいくことにした。少し離れたところから様子を伺うと、6人の男女が適当に遊んでいるように見えた。まあ、遊んでいるだけなら、いいか。ボクは一旦戻っていった。

 2日が過ぎたが、まだ、彼らはその場所にいるようだった。天気もあまり良くないので、そろそろ帰った方がいいと思うので、一旦、その旨を話しに行こうと思った。彼らは相変わらず、大声上げて、遊んでいる。適当にたき火もしてるし、大丈夫か心配になる。ボクは近くまで行って、声をかけた。
「こんにちわ。」
「びっくりした。あんた、誰?」
「この山に住んでいる者ですが、天気が良くないので、そろそろ戻られた方がいいかと思います。」
「あんた、ばっかじゃないの。雨降ったって、テントがあるから、大丈夫なんだよ。」
「恐らく、そんなテントじゃ、役に立たないと思います。」
「なんだと、ケンカ売ってるのか?」
「いえ、本当にやばい天気になると思うので、そろそろ引き上げた方がいいと思いますよ。」
「オレらの勝手だろ?ほっとけよ。ばーか。」

 だめだ。こんな連中、相手にするだけムダみたいだ。でも、ここらへんの地形はちょっとやばい気がするんだけどな。ボクは、駐在さんのところにいくことにした。あのおまわりさんなら、なんとか対応してくれるだろう。ここから、どんなに急いでも、1日かかる。仕方ない。

 結構速足で急いだが、途中、雨が降り始めた。なんとか、駐在さんのところにたどり着いたころは本降りになっていた。
「こんちわ。」
「こんな雨降りにどうした?」
「若者がキャンプしていて、帰るよう促したんですが、全然だめなんです。その場所はちょっと良くない場所なんですよ。」
駐在さんは机に地図を広げてくれた。ボクはその地図を見て、大体の場所を指さした。
「ここは崩れて、土石流が起こりそうな場所なんです。」
「大急ぎで救助を要請しよう。」
「男3人と女3人でした。」
「わかった。ありがとう。」
「じゃ、先に戻って見ます。」
「君も気をつけろよ。」
「分かってますよ。」

 ボクはまた、1日掛かりで戻っていった。雨は結構降っている。こんな調子だと、本当にやばい気がする。植物のささやきは、この雨で全然聞こえない。

 ボクが彼らの場所に着いたときは、やはり、木々がなぎ倒され、テントの後影もなかった。すでに、救助の方々が来ていたが、多分、なかなか見つからないだろう。若者は時に無謀な行動をする。残念だが、仕方がない。ボクは、自分の住まいに帰っていった。数日後の雨が止んだ後、全員の遺体が見つかったそうだ。

 今日はなぜか植物が騒がしい。また、ボク一人の世界が邪魔されるのかと思っていたが、そこにきたのはロッキーだった。ロッキーはボクを引っ張る。さては、ミキさんに問題が起こったか。急いで、ロッキーについていった。そこには、ミキさんが横たわっていた。頭から血を流していた。そばに老木が落ちていた。この木の枯れた木、と言っても、かなりに太さだ。その木が割れて落ちてきたのだろう。運悪く、ミキさんに当たってしまったようだ。幸い、頭部の陥没はなかった。でも、結構、血がでている。止血の葉っぱの汁をミキさんの頭にかけた。たぶん、脳震とう?かもしれない。

「ロッキー、ありがとう。」
やはり、ロッキーがいないとこういう場面ではだめだ。ボクはミキさんが気が付くまで、ロッキーと寄り添うことにした。夜は結構冷えるから、ロッキーと一緒にミキさんにくっついて寝た。なかなか、目を覚まさない。大丈夫かな。

 ボクがこの場所に来てから3日が経った。ミキさんはようやく目を覚ました。
「おはよう。良く寝てたね。」
「あら、私、どうしたのかしら。」
「頭に老木が当たって、気を失ってたんだよ。」
「そうなの?そういえば、頭が痛いような・・・」
「まだ、安静が必要かもね。」
「そっか、だいぶ寝てた?」
「ボクが来てから3日くらいはね。ところで、何たべる?」
「じゃ、例のトマト、ちょうだい。」
「了解。」
ボクら三人はトマトを食べた。

 自然の中で暮らしていると、こんなこともある。最悪、死ぬことになっても、ボクの場合は本望だ。動けなくなったら、いつ死んでも仕方がないくらいの気持ちでいる。それ以外は、楽しい暮らしを過ごせるのがいいのだ。

 ミキさんは多少頭痛がするらしいが、もう大丈夫だといって、ロッキーと帰っていった。本当は頭の検査を受けるべきなんだろうけど、ボクらはこういう暮らしを選んで生きているので、これでいいのだ。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 人なんか嫌いだ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月03日

人なんか嫌いだ! 第14話

 ほとんどの場合、熊との遭遇は、お互い避けるようにしている。ボクもだけど、熊の方もボクを避ける。だから、襲われることはまずない。だけど、なかには襲ってくる熊がいる。ボクの匂いを嗅いで、追っかけてくる。これにはまいった。やめてって言っても、やめてくれない。木の上に逃げても追っかけてくる。そうなると、やっつけてしまわないとこっちがやられてしまう。

 とにかく、からだ中にドロをなすり付けて、ボクの匂いを分からなくするか、葉っぱの汁をつけまくるか、しないと、絶対、追っかけてくる。そんな状態で、罠を仕掛ける。だけど、この死闘は結構長く続く。向こうもなぜか必死だ。なんでボクを追いかけてくるのか分からないけど、必要に追いかけてくる。

 ついに罠に掛かった。ボクは先をとがらした木の棒を熊に突き刺した。そんな一撃では、彼はなんでもないようだった。だから、数回、あちこちに突き刺した。何回、刺しただろうか、ようやく、動かなくなった。彼は人間の味を知っているんだろう。だから、ボクを必要に追いかけてきたのかも知れない。

 と、そこにロッキーとミキさんがやってきた。
「あれ、熊、退治したの?」
「こいつ、必要に追いかけてくるんで、仕方なく。」
「たまにいるよね、そんな熊。」
ミキさんの話では、ミキさんも追いかけられたことがあったようだ。でも、そんなときは逆襲するのだそうだ。ミキさんもすごい人だ。ボクらは熊を解体して、毛皮を使えるようにすることにした。

 静かでのんびりした朝、突然の大音響と地響きがした。いったい、何事なんだろう。ボクは木に登り、周辺を確認した。ミキさんの山の方で、煙が上がっている。飛行機が落ちたか。ミキさんは無事なんだろうか。すぐに、植物たちが安否を教えてくれた。大丈夫だ。でも、誰かが亡くなったようだ。

 一応、行ってみることにした。大きな音が間近で聞こえたような気がしたが、結構遠い。半日以上かかった。そのころにはヘリコプターも飛んでいた。大きい飛行機かと思ったが、セスナくらいの飛行機だ。

 搭乗者は4人。3人はアウト。生きている1人は、すでにミキさんが手当していた。ロッキーもいる。よかった、無事だった。その人もあまり芳しくない感じだ。早く、病院に連れて行ってほしいものだ。

「ああ、トシくん、止血頼んでいい?」
「OK。」
ボクは止血の葉っぱを摘んで、怪我してる個所を包んだ。消毒の汁もかけた。だんだん、血が止まっていく。まあ、なんとかなるかもね。そこへ救助隊がやってきた。
「あなたたちは?」
「先に着いたので、止血とかしてました。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、あとはお任せします。」
「わかりました。」
「よろしくです。」
ボクらは、手を放して、あとは見守った。

 先に着くと現場検証させられるから、ほんとは嫌なんだけど、仕方がないね。
「こんなこともたまにあるのよね。」
「えっ、そうなんですか?」
「静かに暮らしているのに、たまらないわ。」
「ほんとですよね。」
「ミキさん、若いと思うんですが、いつからここにいるんですか?」
「そうね、かれこれ、20年以上かな。」
「そんなにですか?」

 ボクはかなり驚いた。だって、30くらいかな?って、思っていたのに、20年以上もこの山に住みついているなんて。大先輩だ。ボクでさえ、まだ10年も暮らしていないのに。話は戻るが、過去にはヘリも墜落したことがあったらしい。住宅街ではなく、山に墜落だったからよかったという言い方をされると、むかつくと言う。まあ、そうだよな。山はボクらの庭なんだから。

 その日は怪我人の運搬、遺体の運搬で終わってしまった。ボクらは面倒臭いので、引き上げることにした。とにかく、人命救助したんだから、あとは勝手にやってよって感じだ。

 植物がざわざわしている。よく耳を澄ますと、あぶない、あぶないって言っている。こんなこと言ってるなんて、初めてだ。ボクはあまり気にすることなしに、出かけた。景色のいい場所を見つけにだ。ある場所で、植物がすごく騒ぎ出した。ちょっと注意深く、周りを見ると対動物用の罠が仕掛けられていた。うっかり、踏んだりすると、足を持っていかれる。へたすりゃ、骨が砕けてしまうかもしれない。いったい誰がこんなものを仕掛けたんだ。ここらへんはボクの庭なのに。

 とにかく、危なくないように、罠を解いておいた。この周辺を慎重に歩いたら、もう3つほど罠を見つけた。当然、全部解いておいた。さて、どうしたものかな。ボクは犯人を見つけようとここでしばらく野宿することにした。

 2日後、やってきたのは、おっさんが2人。
「こんにちわ。」
「おっ、びっくりした。こんなところで人に出会うなんて。」
「ここらへんはボクの庭なんで、罠を仕掛けないで下さいね。」
「そんなん知るか。」
「だって、ボクがかかったら、どうするんですか?」
「こんなところにくるヤツが悪い。」
「だから、ここらへんはボクんちの庭なんですって。」
「まさか、おまえ、この罠を勝手に解いたのか?」
「だって、あぶないでしょ。」
「いいかげんにしろよ。せっかくの罠が。」
あ~、だめだ。こういう考えの人とは、絶対に合わない。彼らはまた仕掛けようとする。
「いくら、仕掛けても、ボクが解いておきますので。」
「なんだと。お前、死にたいのか?」
なんで、死なないとあかんのだ。
「だって、ボクがかかったら、大怪我しますよね。だから、やめて下さい。」
「だったら、こんなところに来なきゃ、いいんだ。」
だから、ボクの庭だって。
「まあ、いいですよ。あなた方が帰ったら、始末しておきますから。」
「ばかやろう。この罠、結構高いんだぞ。お前に払えんのか?」
知らんやん。

 ボクは、いくら言っても押し問答なので、ボクは何も言わずその場を離れた。後ろで何か吠えていたが、完全に無視だ。しばらくして、また、様子を見にこよう。仕掛けてあったら、全部解いて、捨てておこう。そう決めた。ボクんちの庭なんだから。



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 人なんか嫌いだ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月04日

人なんか嫌いだ! 第15話

 長いこと、一人での時間を楽しんだ。こんなに誰からも干渉されないこともめずらしい。一人になりたいといって、ここにきたけど、侵入者によって、干渉されることが多いということがわかった。でも、今回は本当に長いこと、一人でのんびりできた。こんなときでも、自分から会いたくなる人もいる。ミキさんやロッキーだ。彼らはそばににても、お互いを干渉することはない。だから、居心地がいい。

 あるとき、ロッキーがきた。久しぶりだ。なにやら、ボクをつれていこうとしている。だから、ついていくことにした。多分、ミキさんが呼んでいるのだろう。何かな?

 半日ほど歩くと、ミキさんに合流した。
「あ、ミキさん、お久しぶりです。」
「トシくん、久しぶり。」
「何か、ありました?」
「緊急というわけではないのだけれど、友達がきたので、紹介しようと思って。」
「そうなんですか。」

 ミキさんのそばに背の高い女性がいた。ちゃんと、山にくる恰好をしている。やはり、こうでなくっちゃね。
「筒井愛子さんよ。」
「初めまして、トシといいます。」
「よろしくね。」
いい感じの人だ。
「トシは私と同じように、山で一人暮らしをしてるの。で、ちょっと、おもしろいことができるのよね。」
「はいはい、ではちょっと待って下さいね。」
ボクは例のトマトを育てて、彼らに手渡した。

「えっ、どこからでてきたの?」
「これが、トシくんの特技なのよ。」
「食べてみて下さい。」
「すごい甘さ。こんなトマト食べたことないわ。」
「でしょ。いつも、トシくんに会うときは頂いているのよ。」
「お気に召しましたでしょうか?」
「すごいですね。」
「じゃ、これもどうぞ。」
ボクはライチやキウイ、イチゴを手渡してあげた。
「ほらほら、季節感なしにいろんなものがでてくるでしょ。」
「びっくりですね。」
「食べてみて下さい。美味しいと思いますよ。」
「ほんとにすごい。いったいどうやって育てているんですか?」
「植物にお願いしているだけです。」
「え~、そうだったの?」
「ここだけの話、植物たちがいろんなこと教えてくれるんです。それに、お願いすると実をならしてくれるんです。」
「すごいですね。」
「へえ~、知らなかった。」
「内緒ですよ。」

 ボクらは愛子さんの持ってきたコーヒーをご馳走になって、のんびりとした時間を過ごした。
「トシくん、今日はどうする?」
「ひさしぶりだから、近所で野宿かな。」
「オーケー、ゆっくりしていって。」
「はい、ありがとう。」
「えっ、そんな感じなんですか?」
「まあね。」
愛子さんはボクらのやり取りにびっくりしている。まあ、普通じゃないからね。愛子さんはテントを張った。ミキさんも一緒に泊まるみたいだ。ボクはロッキーと一緒に葉っぱの寝床にゴロンだ。

 翌朝、葉っぱのコップに野菜や果物のスムージーを作って、彼女たちに渡した。
「朝はこれがいいですよ。」
「このコップ、葉っぱ?」
「うまく作るよね。」
「まあ、こういうものならいくらでも。」
「おいしい。」
「でしょ。」
「そういえば、ちょっといい場所見つけたんですが・・・ちょっと遠いか。」
「どのくらい?」
「1日半ほど。」
「また、今度、教えて。」
「わかりました。」
「えっ、どんな話してんの?」
愛子さんはびっくりしている。普通そうだよな。1日半も歩くって、まず、ついてこれる人はいない。でも、ミキさんたちは全然平気だ。だから、それが普通になっている。

「まあ、こういうことがボクらの日常なんで。」
「でも、その場所に行ってみたいです。」
「お、変わり者がここにもいたぁ。」
「ミキさんたら。」

 その日の午後、ボクは帰ることにした。
「また、いつでもどうぞ。」
「はい、でも連絡ってどうすれば?」
「ここらへんに来てくれたら、植物たちが教えてくれるので、ボクから会いにきますよ。」
「そうなんですか?」
「です、です。」
「妖精みたいな人ですね。」
妖精?そんなこと言われたこと、初めてだ。
「まあ、そんなことができるので、この山にいるんですがね。」
「また、よろしくお願いします。」
「は~い、またね。」
愛子さんもミキさんと同じで、悪い気がしない。一緒にいて、居心地がよさそうだ。また、会っても問題ないね。

 次に愛子さんに会ったのは、秋の色濃くなった頃。確かに景色は最高なんだけど、危険なことも多い。でも、きれいが先立って、危ないことは忘れがちになってしまうんだよね。

 例によって、植物たちが教えてくれた。でも、変だな、ミキさんとこじゃないのかな。ボクはそう思ったけど、早く会わないと、危ないので急いで彼女のもとへ行った。
「お嬢さん、こんなところで御一人では、危ないですよ。」
「あっ、トシさん。会えてよかった。」
「今日はどうしたんですか?ミキさんとこでは?」
「いえ、今日は、トシさんに会いにきたんです。」
「ボクに?」
ふ~ん、何なんだろう?



(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | 人なんか嫌いだ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする