2021年02月01日

フリーライフ 第21話

「あのさ、この後、付き合ってくんない?」

「だって、こんな時間ですよ?」

「いいから。」


 私は彼女を連れ出し、自分の部屋に連れていった。

「ここは高木さんの?」

「そうだよ。さあ、上がって。」

「お邪魔します。」

いつまでしおらしくしてるんだ?

「綺麗なお部屋。」

そりゃそうだ、クリーニングしてもらってるし。

「そこに座れよ。」

私はブルマンを淹れた。彼女の元に持って行った。

「えっ、すっごくいい香り。」

「だろ?特別なコーヒーだからね。」

「そうなんですか?」

「だよ、君のために淹れたんだ。」

いつも淹れてるけど。


「さあ、私に言いたいことがあるんじゃない?」

「いつもの木島さんじゃなかったしね。」

「あの・・・」

「ゆっくりでいいから、待ってるよ。」

「えっと・・・」

しばらく、沈黙。あんまり、長いと言い出しにくいのにな。

「私、vcdbdvbx・・・」

「聞こえないよ。」

「最初から、初めて高木さんに会ったときから・・・」

「ずっと、好きだったんです。」

彼女は真っ赤になって下を向いた。

「で?どうしたいの?」

「そんな・・・」

私は意地悪だな。こんな性格だっけ?

「彼女・・・」

「ん?」

「彼女にして下さい。」

まったく、そんな小さな声じゃ、聞こえないぞ。でも、意地悪はここまでにするか。私は、彼女を抱きしめて、耳元でこうい言った。

「私も大好きだよ。」

「え~っ、本当?だって、友達くらいにしか思われてないと思ってた。」

「木島さんの愚痴を聞いているうちに、愚痴が小さなネタのようで、面白かった。」

「実は私は最近、意識するようになったんだ。」

「じゃ、私の方がやっぱり、先だったのね。」

「だね、君の魅力にやられた口かな。」

「そうなの?」

「ああ、そうさ。」

「あ、じゃあ、もう木島っていうのは終わりにして、名前で呼んでもらっていいですか?」

「そういえば、名前、聞いてなかったね。」

「え”~、何か月経ってると思ってるんですか?」

「だって、そんなこと一度も言ってないよ。」

「聞いてくれても、いなじゃないですか。」

「じゃあ、改めて名前、教えて下さい。」

「美佳っていいます。木島美佳。」

「わかったよ、美佳。」

「で、高木さんは?」

「自分も知らないじゃないか。」

「だって・・・」

「高木智志だよ。」

「智志さんね。」

「あの、お歳を聞いていいですか?」

「え~、それも知らないの?どういうこと?」

「だってぇ、恥ずかしくて、何も聞けなかったですもの。」

だから、自分の話ばっか、だったんだ。

「55歳」

「えっ、うそ?」

「うそだよ。」

「あせったぁ~。」

「30歳だよ。美佳は23歳だから、7歳離れてるけど、大丈夫?」

「全然、射程距離だから、大丈夫。」

「そっか、じゃ改めてよろしくね。」

「私も、よろしくお願いします。」


「シャワー浴びるけど、一緒に入る?」

「ムリムリムリ、絶対、無理。」

「そっか、遠慮しないでいいのに、じゃ、お先。」

私はサッとシャワーを浴びて出てきた。

「使う?」

「あ、はい。いいんですか?」

「遠慮するなよ。」

「はい。」

えらい緊張してる。

「はい、タオルに、コレパジャマ代わりの私のTシャツ。洗ってあるから。」

「ありがとう。」




(つづく)


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2021年02月02日

フリーライフ 第22話

 私はブルマンの残りを飲みながら、いろいろ考えた。美佳を伴侶にできるのか。一緒にいてもつまらないことはない。でも、知らない美佳もいるはずだろう。でも、それは美佳にとっても同じはずだ。瑠璃のように、一瞬で恋に落ちたわけではないけれど、長い時間をかけて恋していくんだろうか。大丈夫だよな。じゃ、私の生活の中にずっといてもらわないとな。うんって、言ってくれるかな。


「でました。」

「じゃ、寝よう。」

「えっ。」

「おいでよ。」

「一緒ですか?」

「だめ?」

「そんな、いきなり?」

「私たちは出会って、どれくらいたつの?いきなりかい?」

「ですよね。」

私は美佳をベッドに招き入れて、優しく抱きしめた。


 翌朝、美佳より早く起きた。安心したのか、ぐっすり寝てる。私はメモを書いて、朝ランに出かけた。いい天気だ。川沿いを行こう。だんだん寒くなってきる季節は、色鮮やかだ。とっても気分がいい。

 部屋に戻ると、まだ、寝てる。私はシャワーを浴びて、いつものブルマンを淹れた。窓を開けると、いい風が入ってくる。ベランダにでて、遠くを眺めていた。

「おはよう。」

「起きたね。」

「ぐっすり寝ちゃいました。」

「よかったね。」

「あの・・・」

「あ、ごめん、ごめん、コーヒーだよね。」

「いえ、昨日は・・・私のこと、やっぱり嫌ですか?」

「何言ってるの?あんなに困っている美佳にそんなことできないでしょ。」

「もっと、私を好きになってくれてからでいいよ。美佳をゆっくり長く愛していきたいから。」

彼女は私に抱きついて、泣き出した。

「どうしたん?」

「ありがとう。やっぱり、私の大好きな智志さんだ。」


 美佳は一人暮らしをしていた。実家はちょっと遠い。お姉さんがいて、もう結婚しているとのことだった。そのうち、美佳の実家にも挨拶に行ってこよう。私たちは、レッスンを終わりにして、好きな曲を練習しに、教室を使うことにした。わからないことや難しい技術はネットで調べられるから、なんとかなった。私はなんとなく、雰囲気でやりこなすもんで、美佳にびっくりされている。やっぱり、才能があるのかな。だけど、そんな練習の日は、どこで調べたんか、ギャラリーが集まる。最後は、出待ちされてサインを求められる。


「ねね、また、駅前でやろうよ。」

「好きだね。」

「絶対、たくさん集まるよ。」

「そうだな、やろうか?」

なんか、軽いノリで次の日曜に昼過ぎからやろうということになった。


 日曜、私が駅前の広場で、ケースを開けた途端、人が結構集まってきた。

「サックスの高木さんでしょ?」

なんで知ってるんだ?

「お待たせ~。」

美佳も来た。

「おう、一丁やりますか?」

集まったみんなに聞いたら、J-POPがいいという。それなら、ということで、美佳とふたりでサックスのセッションの開始だ。みんなも乗ってくれるから、気分がいい。次から次へ曲を演奏していった。あっという間の2時間だった。


「みんな、集まってくれてありがとう。」

「また、来週、やるよ~。」

たくさんの拍手をもらった。

「気持ちよかったね。」

「もうサイコ~!」

ファンだという人たちが、通行の邪魔になる。困ったな。なんとか、解散してもらって、私たちはいつもの居酒屋で打ち上げをしにいった。


「ねえねえ、そのうちデビューできたりするかもね。」

「そこまで甘くないよ。」

「そっかな。」

「でもね、もし、そうなったら私、会社辞めて、ずっと智志さんのそばにいていい?」

「そうならなくても、いていいよ。」

「えっ、ほんと?」

「当たり前でしょ。」

「ありがと。」

美佳はかなり嬉しそうだった。


 食事をしながら、もっと新しい曲を練習しようということになり、いくつか候補を挙げて、どの順番で練習するかを話し合った。どんどんレパートリーが増えていく。そうなるのか楽しかった。

「今日は泊まっていけよ。」

「いいの?」

「当たり前だろ。」

「いっそのこと、私のところに住む?」

「それは・・・」

「まあ、その気になったらいいよ、来ても。」

「ありがとう。」




(つづく)


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2021年02月03日

フリーライフ 第23話

 うちに帰ると、ソファーでくつろいだ。

「私の妹が、今度結婚するんだ。」

「えっ、ほんと?おめでとう。」

「でさ、1曲やりたいんだけど、いいかな?」

「いいじゃん。やっちゃえば。」

「美佳と一緒にだよ。」

「私、行っていいの?」

「当たり前だよ。美佳にとっても、瑠璃は妹になるんだから。」

「えっ・・・」

「結婚しよう。」

「うん、ありがとう。」

なんか、最高の一日になった。


 私たちのことは秘密にして、瑠璃の結婚式にサプライズで報告することにした。それまで、結婚式にふさわしい曲の練習が始まった。いつものように教室を借りて、たくさん練習した。その合間を縫って、駅前でのストリートセッションだ。


「ね、ね、あそこでカメラ構えている人がいるよ。」

「スマホではたくさんいるけど、本格的だね。」

「まあ、気にしないで、やりますか。」

「ですねぇ~。」

私たちは、いつもやっている曲と結婚式用の曲も混ぜて、演奏した。自分ではなかなかいい感じに演奏できたので、満足していた。美佳もうれしそうだった。美佳はこういうことをやりたかったのかも知れないな。


 すべて終わって、片付けしていると、突然、声をかけられた。

「あの実は私、〇Xテレビの者ですが、ちょっとお話を伺ってもいいですか?」

「はい?」

「今日のストリートセッション、録画させて頂いたんですが、実は1週間後の番組に使いたいですが?」

「どんな番組ですか?てか、いきなりですね。」

「智志さん、これって、あの人気番組ですよ。」

「そうなの?あんまりテレビ見てないから、よくわからないんだよね。」

「是非、見て下さい。」

「で、ちょっとこれからインタビューいいですか?」


 私たちは言われるがまま、彼らについていった。お腹がすいてるからといったら、食事に連れていってくれた。インタビューだから、個室のある場所だった。

「サックスのセッションなんか、なかなかないので、すっごい人気ですよ。」

「そうなんですか?」

「ネットでもかなりの話題を呼んでますよ。」

「なるほど。」

「おふたりはどんな関係ですか?」

「インタビューなの?」

「あ、失礼しました。はい、始めさせて頂きます。」

「彼女は私の婚約者です。」

美佳は赤くなって、まん丸い目で、私を見つめている。

「そうですか。わかりました。」

「セッションとしてやっていきたいですか?」

「それはどういう?」

「高木さんひとりでやることはしないんですか?」

「そんなのまだ決めてないですよ。私たちはふたりで楽しくやっているだけですから。」

「メジャーデビューとか、興味ないですか?」

「今は、ほとんど考えてないですよ。」

なんかいろいろ聞かれた。今日の映像はテレビで流していいと言ったけど、プロのことはやはりまだ考えたくない。私は美佳と楽しくセッションするのが好きなだけなのだ。


「先生も言ってたけど、智志さんがすごいんだね。私はそんなレベルじゃないんだ。」

「気にするなよ。私は美佳と一緒にやりたいんだ。」

「それにプロにならなくても、食っていけるしね。」

「えっ?そうなの?」

「美佳は、私が自営業をしてるって言ったの覚えてる?」

「うん、覚えてる。」

「どんな仕事してると思った?」

「ネットで何か売り買いして儲けてるのかと思って・・・」

「それは昔の話だよ。今は投資をしてるんだ。」

「それって、どれくらい儲かるの?」

「ふたりでも十分なほどさ。」

「そうなの?共働きしなくても大丈夫なの?」

「当然。」

「だって、私の先輩とか、同僚なんか、みんな共働きだよ。そうじゃなけりゃ、食べていけないって言ってたもん。」

「美佳は気にしなくていいんだよ。」

「本当にほんと?」

「ああ、だから一緒にサックスのセッションを楽しもうよ。」

「いいの?」

「だから、いいって言ってるだろ。」

「私、こんなに幸せでいいの?」

「いいよ。大丈夫だよ。」

なんか、えらい感激されてしまった。



(つづく)


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2021年02月04日

フリーライフ 第24話

 私たちは地元ではかなり有名になっていたが、テレビの放送で一気に火が付いたみたいだった。そうなると、もう駅前ではセッションできなくなってしまった。完全に通行の邪魔になってしまうからだ。


 そんな頃、いよいよ瑠璃の結婚式が迫ってきた。私たちはふたりで、実家へ向かった。

「なんか、ドキドキする。」

「でも、私たちのことは、瑠璃の結婚式で電撃発表だから、瑠璃も知らないからね。」

「本当にそれでいいの?」

「いいんだ。今回は結婚式で演奏するからセッションの相手の美佳も連れていくって言ってある。」

「わかったわ。それまでは秘密ね。」

「その通り。楽しみだな。」

「瑠璃たちが主役だけど、私たちは準主役ってことだな。」

美佳はかなり緊張していたけど、よくよく考えるとあまり緊張しないたちだったような。


「ただいま。」

「智志か、お帰り。」

「お兄さん、お帰りなさい。美佳さんも疲れたでしょ?」

「その方は、彼女か?」

「だから、言ったでしょ。結婚式で演奏するために頼んできてもらった相棒だよ。」

「そうか、よろしくお願いしますね。」

私は、美佳を家族に紹介して、家族団らんに迎い入れた。食事が終わって、父が一度、私たちの演奏を聴いてみたいと言い出した。母も是非というので、私は美佳と1曲、セッションすることになった。結婚式でやる曲はお楽しみということで、違う曲を演奏した。


「これは、素晴らしい。今度、うちの会社の式典でもやってほしいものだな。」

「前は、瑠璃のバイオリンも一緒にやったんだよ。」

「そうなのか?」

「そうよ、楽しかったわ。」

「それに、おとうさんもおかあさんも、お兄さんたちのセッションがどれだけ有名なのか、全然しらないのよ。」

「そんなに有名なのか?」

「だって、この前のテレビに出てたのよ。」

「なんで、言ってくれないんだ。」

「そういうと思って、録画してあるわよ。メジャーデビューするかもしれないのにね。」

「そんなにすごいのか?」

「ほんと、何も知らないんだから。」


 翌日、みんなで式場へ向かった。私は、瑠璃の晴れ姿より、今は美佳の着飾ったドレス姿に目を奪われていた。

「美佳、きれいだよ。」

小さな声で周りに聞こえないように言った。

「うれしい。涙がでちゃう。」

「あかん、まだ早いで。」

瑠璃たちの結婚式はとても素敵だった。そのあとの披露宴でも、いろんなスピーチもあり、歌もあり、楽しく時間が過ぎていった。さあ、そろそろ、準備しないとね。


 司会がスクリーンに映った先日のテレビの映像をもとに、私の紹介をした。

「お兄様の智志様は、サックスの演奏で、今やテレビでも有名なアーティストでいらっしゃいます。今日は、瑠璃様、浩司様のために、サックスのセッションをして頂きます。」

私たちのことを知らなかった人も多かったが、歓声があがった。


「浩司さん、瑠璃、結婚、おめでとう。ふたりの門出を祝して、ほんの半年前ほどから、サックスの初級コースで練習して、そこで知り合った木島さんとセッションをしたいと思います。」

私は美佳と目を合わせて、予定通り、アレンジした3曲のメドレーを披露した。

「浩司さん、瑠璃、末永くお幸せに。」

「はい、智志様、木島様、ありがとうございました。胸に残るいい曲でしたね。さて、ここで、智志様からお話があります。」

「あの、主役のふたりを差し置いて、申し訳ないんですが、美佳おいで。私たちも、結婚します。」

わぁ~っと、歓声が上がった。

「兄さん、おめでとう。美佳さん、おめでとう。」

「あなたたち、昨日はそんなこと一言も・・・」

当たり前じゃ。サプライズだもんな。

私たちも、もみくしゃにされて、新郎新婦と一緒に記念写真をとることになった。席に戻ると、父はにこやかな顔をしてこう言った。

「また、結婚式だな。」



(つづく)



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2021年02月05日

フリーライフ 第25話

瑠璃たちが旅行に旅立って、実家には両親と私と美佳の4人が戻ってきた。

「今日はサプライズで、申し訳ありませんでした。」

「美佳さん、こんなにうれしいサプライズは、大歓迎よ。」

母は喜んでいる。

「智志、もしよかったら、何か演奏してくれないか?」

「いいよ。」

私は、父の知ってそうな曲を演奏した。次いでだから、数曲連続で演奏した。

「ありがとう。いい音色だ。こんな才能があったなんて、本当にうれしいよ。」

「瑠璃はちゃんとやれてるかい?」

「会社か、大丈夫だ。浩司くんも取締役でサポートしてくれてるし、何とか社長業やっていけると思う。」

「あの、瑠璃さんは社長なんですか?」

美佳は口を挟んだ。

「そうだよ、頑張ってるよ。」

「すっご~い、智志さんちって、そんな家族だったの?」

「なんだ、知らなかったのか?」

「お父様は・・・会長なんですか?」

「その通り。」

「なんか、私、すごいところに来てしまったのね。」

「だけど、そんな美佳さんも、もしかしたら、世界的に有名になるかも知れない智志の奥さんになるんだろ?」

「なんか、だんだん、気が重たくなってきました。」

「あっはっはは、楽しい子だね、君は。」

「美佳サックス持っておいで、一緒にやろう。」

私たちは一緒にセッションを楽しんだ。両親も楽しそうだった。

「智志が帰ってきたら、また、このセッションが聴けるのね。」

「楽しみが増えたわね。」


 私たちはまた東京に戻った。

「ねえ、智志さんといると、びっくり爆弾がどんどん爆発するの。」

「なんだ、それ?」

「私の知らないことでびっくりすることが、まだまだ出てきそうで・・・」

「そんなにびっくりすることなん?」

「多分、私にはね。で、だんだん、気が重くなるの。本当に私でいいんだろうかって。」

「何言ってんの。いいに決まってるじゃん。うちの両親もうれしそうにしてただろ?」

「でも・・・」

「気にし過ぎ。」

「それと、ひとつ疑問に思ったんだけど、智志さんのご両親は小宮の姓だったけど、なんで高木の姓なの?」

「あ、そっか、それ言ってなかったね。私は養子なんだよ。高木さんちへ養子に出されたんだ。」

「なるほど。」

「で、高木の両親がふたりとも亡くなったんで、また、小宮を名乗っていいんだったんだけど、高木のままでいる選択をしたんだ。」

「なんで、養子に?」

「それは、私も聞いてない。言いたくなさそうだったしね。まあ、今は仲良くしてくれてるから、そんなに気にしてない。」

本当の話はややこしいから、端折ってごめんな。


 私は、美佳に一緒に住もうと何回目かの提案をした。ようやく、美佳は了解してくれた。何もおいてない私の部屋は、美佳の荷物でかなり狭くなったが、まだ十分、スペースはある。


 美佳はOLだから、普段は会社へ通勤している。私の部屋に引っ越ししたので、会社へも届け出を出した。まあ、当然といえば当然だ。ただ、理由の欄にどう書けばいいのか悩んだらしいのだ。そんなの、適当でいいのに。一身上の都合のためとか書いたもんだから、また、彼女の周りの女子に問い詰められて、私との同棲を白状したらしい。


「ねえ、聞いて下さいよ。」

「今度はどうしたの?」

「あのね、・・・」

だけど、美佳の話は面白い。多分、愚痴なんだろうけど、私には漫才ネタのようで、楽しい。

「どんな人と同棲しているのかって、大変だったんだすよぉ。」

そんなこと、自分でばらすからだろ。


「でね、例の駅前セッションの件もテレビで見た人が多くって、すぐに私ってバレて、今度、会社でやってもらえないかって、言われたんです。」

話がどう続くのか、全然わからない。

「会社の行事かなにかでってこと?」

「今度、創業記念日があるんで、その時にって。」

「会社ができてから何年になるの?」

「40年近くって聞いてるけど。」

「結構、続いてるんだね。」

「でね、正式に頼まれちゃって、5曲の演奏で20万円でどうかだって。」

ついに私たちの演奏で、お金をもらえる日がきたのか。

「美佳はどうしたい?」

「悪くないと思うんだけど?」

「まあ、最初だもんな。そのうち、瑠璃の会社でもやるから、その練習ということで、やりますか?」

「ほんと?やってくれる?」

「美佳もだぜ。」

「ですよね。」

「私は美佳とのセッションじゃないとやだよ。」

「うん、私もそうしたい。」

「じゃ、また、教室、予約して練習しにいこうか。」

「うん。」


 それから、私たちはどんな曲をするのか、候補を考えた。会社の意向もあるだろうから、美佳には一応、確認してもらうようにした。

「ねえ、一度、来てもらえないかって、言ってるんだけど。」

「いいよ、行くよ。」

「ほんと、ありがとう。」



(つづく)



posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | フリーライフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする