2021年04月28日

短編小説 「二度目の恋」 第1話

 人はどんな恋をするのだろうか。オレにとって、二度目はない。そう思ってる。オレは北山司(きたやまつかさ)。いつの間にか、45になった。未だ、ひとりでいる。オレは生涯、多分誰とも結婚なんかしないだろう。この先もずっとひとりでいるのだ。あの女のことだけを思ってね。


 オレの仕事は、大型汎用機と言われた時代のコンピュータのプログラマーをやっている。今の時代にこんな時代遅れな仕事をしているなんて、不思議に思う人もいるかもしれないが、この仕事も、実は細々と続いている。こんな仕事だから、やっているのは男ばかりだ。それもオレと同等、いやそれ以上の年齢の人ばかりだ。若い子はいない。本当に人手が足らなくなったら、補充するのだろう。オレはこの仕事に満足している。こんな仕事ができる人材はあまりいないので、それなりの給料をもらっているからだ。恐らく、老後もひとりでやっていけるだろうくらいには、貯蓄も貯まっている。


 ここ何年かは、会社と家の往復ばかりだ。休みの日にも誰とも会うこともない。そんなオレのところに、ある手紙が届いた。同窓会の案内だった。中学の時のだ。オレにとっては一番思い入れがある時期だった。それなのに、誰とも連絡を取っていない。まあ、せっかく案内を送ってもらったんだし、行ってみようか。オレはそんな気になっていた。


 中学の時、オレには一目惚れした子がいた。自分でも不思議なくらい積極的になって、彼女にアタックをした。彼女は鹿野香澄(かのかすみ)といって、割と背の高い、オレにとっては可愛らしい感じのする子だった。


 彼女はオレからの求愛に、ごめんなさいとは言わなかった。でも、本当に好いてくれてるのかもよくわからなかった。デートも2、3回くらいした。といっても、ふたりで話をしたくらいのデートだったけどね。彼女は歩いて20分くらいのとこに住んでいたけど、手紙をよく書いた。当時は電話か手紙。そんなもんだった。学生のオレらにとって、電話は高くつくので、やはり手紙が主流だったのだ。どんなやりとりをしたのか、今となっては覚えていないが、最後に彼女からの手紙の中で、「私だけじゃなく、もっといろんな人と付き合ってみれば?」と言われたことが、当時のオレには、嫌われたんだとしか思えなくて、それ以上付き合うことはなくなった。たったそれだけでしかなかったけど、オレには忘れられなくなっていた。みんなからには「だんだん恋に恋してるって感じになるんだ」とか言われたりした。でもオレは、またいつか、偶然会って再燃するかもしれない。そんなことばかり考えていた。だから、他の女になんか目も向かなかったんだ。


 そんな彼女も来るのだろうか。オレは当日を思い、年甲斐もなくドキドキしていた。そうなると仕事もそっちのけで、早くその日が来ないのか、そればかり頭を駆け巡った。どんな服装で行けばいいんだ?どんな髪型で行けばいいんだ?できるだけ自分を良く見せたい思いでいっぱいだった。中学卒業から30年、みんなどうなっているんだろう。でも、香澄のことが、一番頭の中に膨れ上がっていた。


 当日、オレはドキドキしながら、会場に向かった。来ていたのは20人くらいで、男女ほぼ半々だった。

「いや~、おめ~全然変わらんなあ。」

「だいぶ、薄くなったよ。」

「貫禄でてきたな。」


 男どもはだいたい誰だかわかったが、化粧するとわからなくなる女子たちは、わかるまで時間がかかった。でも、みんな旧姓の名札を付けておいてくれたので、わかりやすかった。その中に、オレのお目当ての彼女も来ていた。オレはすぐには話をすることができなかった。でも、やはり何も変わってなかった。オレにとって、香澄は中学のままだったんだ。


 同窓会では、まあ30年も経っているんで、それぞれ自分の近況を話していくことになった。オレ以外みんな既婚だった。まあ、そんなもんだろう。すぐにオレの近況を話す番になった。


「北山です。今は、製造業の会社で、大型汎用機というコンピュータのプログラマをやっています。」

オレが簡単に話を終わらせようとすると、みんなから質問が挙がった。

「結婚してるの?お子さんは?」

「オレはまだ独身です。」

「ええ~、うっそ~。」


 ちょっと意外だったのかも知れない。オレは、雰囲気的にいい家庭を築いているように見えたみたいだった。だから、オレが独身だということは、みんなにはとっても意外だったのかも知れなかった。


 香澄は当然結婚していた。お子さんもいるって言っていた。そうだよな、もう45だもんな。

「でも、意外ね、北山クンが独身だなんて。」

「鹿野さんと別れたからなん?」

「いや、そんなことないよ。」

でも、内心、そうだ、とつぶやいていた。


 オレの傍に彼女がやってきた。

「結婚してなかったの?」

「まあね。」

「私のせい?」

「いや、そんなことないよ。」

「なんか、申し訳ない気持ちになるわ。」

「気にすんなよ。たまたま、出会いがなかっただけだよ。」

「そう?」

「ああ、そうさ。」


 でも、本心はそうじゃない。いまでも、オレは彼女にぞっこんだった。30年という月日が経っても、オレの気持ちは変わってなんかいない。でもいまさら、そんなこと、言えやしない。彼女はすでに結婚していて、家庭がある。オレの入る隙間なんてないんだ。そう思うと、なんか絶望感しかなかった。


 その後、2次会とかあったけど、オレは1次会で帰った。もう十分だ。彼女の近況もわかったし、もうこれ以上話してもなんかつらいだけだった。


 家に帰ると、電気のついていない、いつもの淋しい部屋だ。これから先もずっと一人で生きていくんだろう。また、いつもの生活が始まっていくんだろう。



(つづく)

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2021年04月29日

短編小説 「二度目の恋」 第2話

 しばらくして、会社でオレに声がかかった。えっ、なんで?そりゃ、若い時には何度か声はかけられたことはあったが、この年になってからはとっても久しぶりだ。きっとからかわれているだけなんだろうと思ったが、どうやらマジだった。


「明日、合コンなんでお願いしますね。」

「オレなんかでいいのかよ。」

「だって、北山さん、独身でしょ?」

オレが独身だから誘っているのか。まあそうだよな、普通。彼女なんて作る気もないけど、たまにはそういう場にいってみるのもいいのかも知れない。


 合コンは5人×5人だった。当然、オレが最年長。20代、30代、40代とバラエティに富んでいる。相手もまあそんな年代のメンバーなんだろう。だが、行ってみてびっくりした。全員20代。そりゃ、無理がある。ええとこ、男は30代までだろう。オレは早々に帰るつもりになっていたが、とりあえず、しばらく付き合うことにした。早速、自己紹介だ。20代のヤツから順に自己紹介を行って、最後のオレの番になった。


「オレは北山と言います。年齢は45歳、仕事はコンピュータのプログラマをしています。」

だが、そんなオレの自己紹介に意外な反応があった。誰が言ったのかわからなかったが、「ステキ」という声が聞こえた。まさかな、聞き違いだろう。


 まずはそれぞれが座った近くの人同士が話をしていたが、一旦席を変えることになった。オレの横に来たのは、最年少の22歳の子だった。ちょっと年が離れ過ぎだよな。

「北山さんは、20代でもいいですか?」

何言ってんだ?

「どういうこと?」

「えっと、歳の差って、気にする方ですか?」

「まあ、普通そうじゃない?」

「私じゃ、若過ぎますか?」

「オレの感覚からするとそうだね。」

「でも、彼女作りにきたんでしょ?」

ここで、人数合わせだったなんて言えないな。

「まあ、そうだけど。」

「だったら、いいですよね。私、北山さんの隣でいろいろお話したかったんです。」

マジか!

「そうなんだ。オレのどこがいいの?」

「私、同年代より、北山さんくらいの方がいいんです。」

変わった子だな。

「そうなの?でも、話合わないと思うよ。」

「大丈夫です。初めて聞く話が新鮮なんです。」

そんなもんかな。でも、あんまり弾まないと思ったけど、結構、盛り上がった。オレも久しぶりに若い子との話を楽しんだ。


 帰り際に、彼女は連絡先の交換を求めてきた。

LINE交換して下さい。」

「オレ、LINEはやってないんだよ。」

「じゃ、メール?」

「だね。いいかな?」

「はい、大丈夫です。」

まあ、一応交換しても、それっきりというのもあるし、あまり気にしないとこ。でもほんと久しぶりによくしゃべった。あの子、ほんとにオレが気に入ったんだろうか。


 翌日、昼休みは昨日の合コンの話で盛り上がった。

「北山さん。河合つばささんとよくしゃべってましたね。オレ、狙ってたのになあ。」

「なんや、そんなら、遠慮せんと、話すればよかったのに。」

「だって、せっかく、いい雰囲気になっているのに、お邪魔できないっすよ。」

「20以上も離れているのに、付き合うなんてないだろ。」

「そうですか?最近、そういうの多いっすよ。」

「ほんまか?」

「芸能人にもそんなのいるし、歳の差カップルというのも、いい感じっすよ。」

マジか。本当にそんなことになるなんてことはないだろう。


 結局、5人中、オレをいれて3人がいい感じだったそうだ。なんとなく、ちょっと若返った気分だった。まあでも、自分から連絡なんか、よう取らんし、どうせ来んやろう。あの時だけの楽しい思い出だ。そう思っていたんだが、彼女からメールが来た。マジか。


 長々と書いてあったが、要はこの前のお礼と、今度、会いませんか?ということだった。ふ~ん、そっか。って、会わないかってか?絶対、物好きなんだろう。こんなおっさんのどこがいいんだ。とは、思ったが、もう一度、会って話をすれば、やっぱりってこともあるだろうし、まあ、自然消滅するだろう。オレはそう思って、彼女に会うことにした。



(つづく)

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2021年04月30日

短編小説 「二度目の恋」 第3話

 休みの日に、駅前の噴水のところで待ち合わせ。こんなん、何十年振りだ。時間通りにいくと、すぐに会えた。

「こんにちわ。この前はありがとうございました。」

「こちらこそ、なんか楽しかったよ。」

「でしょ~、だから、歳なんか関係ないんですよ。」

「そうかな。」

「そうですって。」

ちょうど、お昼だったので、食事にいくことにした。

「いつもはどんなお食事をするんですか?」

「男一人の自炊料理だよ。」

「自分で作るんですか?すごいですね。」

「あ、嫌いなものあります?」

「特にはないよ。」

「じゃあ、私の好きなのでいいですか?」

「わかった、付き合うよ。」

「うれしいです。」


 彼女はスパの美味しいという店にオレを連れて行った。結構、混んでいたのに、実は予約してあったみたいで、すんなり入れた。

「なかなか、雰囲気のいいお店だね。」

「でしょ、私のお気に入りなんですよ。」

「じゃあ、お勧めをお願いしょうかな。」

「まかして下さい。」

オレはトマト系の酸味の効いたスパ、彼女はたまごとベーコン系のスパだった。彼女はお店の人に小皿を2つ頼んだ。

「ちょっとづつお互いのを食べ比べてみましょうよ。」

「ああ、それがいいね。お互いのが食べれて楽しいかもね。」

「ですよね。」

彼女は楽しそうによくしゃべる。オレもそれが嫌じゃなかった。なんか、あっという間に時間が過ぎた。


 オレらはその後、彼女がどうしても見たいという映画を見に行く事にした。まあ、オレも映画は嫌いじゃないんで、特に問題はなかったが、この映画、笑いあり涙ありの恋愛映画だ。オレは少し涙もろいところがあるんで、ちょっと困ったけど、彼女の方が、オレより上手の涙もろい人だった。彼女は映画の間中、ずっとオレの手を握っていた。悲しい場面でずっとグスグスいってたので、オレは持っていたハンカチを渡してあげた。一応、毎日、洗い立てを持っているので、こんな時に役立つことにホッとした。映画の終わりはハッピーエンドで、そこでも涙ボロボロだった。オレより、涙もろくてよかった。自分がボロ泣きじゃ、どうしようもないしね。


「ハンカチ、ありがとうございます。今度、持ってきますね。」

「一人で泣いてばかりで、ごめんなさいね。ちょっと、洗面所に行ってきます。」

まあ、落ちた化粧を直すのだろう。たぶん、オレ以上に感情移入してしまうんだろうな。かわいい子だ。


 夕方、今度はオレのお気に入りのところに連れて行ってほしいと言い出した。晩飯のお気に入りは、近所の炉端なんだが、そんなんでいいんだろうか。でも、素の自分の方がいいと思ったので、いつもの炉端に行った。


「まあ、晩はいつも軽くビールとかを飲んで、つまみがあればいいって感じだけど、大丈夫かな?」

「全然、OKです。私、こういうの、好きですよ。」

「オレはビールだけど、何飲む?」

「じゃ、私も。」

「今度はお勧めの1品料理をお願いしますね。」

「OK、了解。」

オレはいつも好んで頼んでいる1品料理をいくつか頼んだ。

「こういうの、いいですね。おいしいです。」

「そっか、無理しないでいいよ。」

「北山さん、優しいんですね。」

「そっかな。」


 ここでも話が弾んで、結構長居してしまった。そのおかげで、彼女は普段より、かなり飲んだようだった。

「大丈夫、歩ける?」

「まだ、大丈夫ですよ。」

「親御さん、心配してるんじゃない?連絡した?」

「お父さんみたい。」

そりゃそうだろ、そのくらい年が離れてるしな。


 だが、そういう彼女の足取りはおぼつかない。こりゃ、家まで連れてくしかないな。

「家教えて、送っていくよ。」

「嫌です。今日は、北山さんとずっと居たいです。」

こりゃ、完全に出来上がってるわ。さて、どうしよう?オレんちじゃ、汚いから無理だよな。この際、ホテルを取るか。オレはスマホでホテルを予約しようと思ったが、今日の今日では、なかなか思った部屋がない。ホントはシングル2部屋と思ったが、どこも空いてない。仕方ないので、ツインをお願いした。


「さあ、いこうか。」

「うれしい。今夜はふたりですね。」

「はいはい、そうですよ。」

半分、目が閉じている。こりゃ、絶対に寝るな。オレは彼女の腰を抱いて、タクシーに乗せ、ホテルまでいった。


「先ほど、スマホで予約した北山ですが。」

「はい、承っております。」

そう言って、用意してくれた部屋は、・・・どうなっているのか、なかなか、鍵を渡してくれない。

「どうしたんですか。」

「お客様、こちらの手違いで、ダブルになっております。よろしいでしょうか?」

「そりゃ困るよ。シングル2部屋とかもないの?」

「はい、申し訳ございません。その代わりと言ってはなんですが、半額とさせて頂きます。」

ちょっと、ごねたがどうしようもない。その部屋で我慢することにした。


 オレは半分寝ている彼女を抱きかかえて、その部屋に連れていった。さすがに大きいベッドだ。そこに彼女を寝かせた。でも、そのままではせっかくの洋服がしわだらけになってしまう。オレは洋服を脱がせて、そのまま彼女をベッドに寝かせた。洋服はしわにならないように、ハンガーにかけておいた。だけど、さすがに女の子の服を脱がせるのって、年甲斐もなくドキドキしてしまうもんだ。


 さて、オレはどうしようかな。受付に連絡して毛布をもらった。ソファに寝ころび、毛布を掛けて寝た。今日は楽しかったけど、絶対、彼女の親御さん心配してるよな。ふと、彼女のカバンの口から光っているのが見えた。スマホ?オレはそれを取り出した。やっぱり、バンバン、メールが来てるじゃん。よく見ると、LINEだった。かなり心配してるみたいだ。どうしようか、代わりに返事しとくか?やっぱ、それはよくないよな。ゴメン。やめとくわ。オレはカバンへスマホを戻しておいた。



(つづく)

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2021年05月01日

短編小説 「二度目の恋」 第4話

 翌朝、物音に気が付いて、目覚めた。すでに彼女は起きていた。

「あ、おはようございます。」

「おはよう、寝れた?」

「それは私のセリフですよ。」

「本当にごめんなさい。」

「そういや、スマホがガンガン光ってたよ。親御さん、心配してるんじゃない?」

「大丈夫です、もう連絡しました。」

「怒ってなかった?」

「多少は。」

「正直だね。」

「北山さんだって、すっごく紳士ですね。」

「えっ?」

「だって、私、どうなっても仕方なかった状態だったじゃないですか。」

「でも、ちゃんと、洋服はしわにならないように掛けてあるし、・・・私を襲うこともしなかった。」

彼女はちょっと寂しそうにしてた。

「私、魅力ないのかな?」

「そんなことないよ。君は明るいし、とっても魅力的だよ。」

「もしかして、北山さん、想っている人、いるんですか?」

オレは香澄の顔が浮かんだ。こんな時に浮かぶなんて、やっぱり忘れていないんだよな。

「そうだね。」

彼女は急に、にっこり笑ってこう言った。

「じゃあ、いつかはその人より、私の方がいいって、言ってほしいです。」

「だから私、がんばります。」


 オレたちはホテルで朝食を摂った。バイキング形式だったけど、彼女は朝からテンションが高かったので、朝食でも楽しく過ごすことができた。部屋に戻ると、オレはこう言った。

「じゃ、今日はそろそろ帰ろうか?」

「もっと一緒にいてくれないんですか?」

「君といると楽しくて時間を忘れてしまいそうになるんで、ちょっと困るかな。」

「これから用事ですか?」

「そうだね、することがあるんで。」

「わかりました。」

彼女は名残惜しそうだったが、さすがにその日はまたねと言って別れた。


 オレにはあり得ないくらい長く、女の子と一緒にいた。香澄ともこんなに一緒にいたことはない。45のおっさんが、何もかも初めてだなんて、少々恥ずかしいな。さあ、元のオレに戻ろうか。オレはこの先、一人で生きていく。香澄の想いを胸に。オレには香澄しかいない。たぶん、これからも・・・。


 翌日からまた、元の生活が待っていた。いつものように、システム変更に伴うプログラム修正ということで、コボルというプログラムのテストを行っていた。昼休みに、合コンに行った山口が声をかけてきた。

「北山さん、ちょっといいですか?」

「おう、なんだ?」

「この前の合コンのことなんですが・・・」

「うん。」

「北山さんと話をしていた河合さん・・・」

「河合さんがどうした?」

「オレ、かなり気に入ってるんですよね。」

そうなのか。

「なるほど。」

「で、北山さんと結構いい感じにしゃべっていたんで、どうかな?って思ってるんですけど。」

コイツ、何を言いたいんだ?

「で?」

「ぶっちゃけ、オレ、アタックしてもいいですか?」

「なんで、オレに言う?」

「だって、もし、すでに付き合っていたら・・・」

「そんなことないだろ?20以上も離れてるんだぜ。」

「じゃ、いいですか?」

「当たり前じゃん。がんばれよ。」

「はい、がんばります。」

山口は嬉しそうに飯を食った。この前会ったのは、河合さんの社交辞令だろうし、問題ないだろう。オレはあえて、その話はしなかった。


 数日後、山口はえらい剣幕でオレに詰め寄った。

「北山さん、河合さんとデートしてたんですよね。すでに付き合っているんじゃないですか。」

「合コンのお礼に食事を付き合っただけだよ。」

「それをデートというんです。」

「はっ?」

「だいたい、河合さんは北山さんと付き合っているんで、ごめんなさいって言ってたんですよ。」

「オレはその気はないぞ。」

「よくいうよ、オレをバカにして。」

オレは山口に一発殴られた。うまくよけられなくて、口の中を切った。

「落ち着けよ。もっと冷静になれって。」

「うるさい。」

2発目もよけられなかった。オレはそのまま倒れた。山口は馬乗りになって殴りかかってきたが、周りの連中が止めてくれた。


 河合さんはオレと付き合っていると思っているのか?でも、想っている人がいるって言ったし、何か勘違いしているんだ。オレは口からの血が止まらず、とりあえず病院へ行ったら、その時はわからなかったが、頭からも出血していたのでCTを取ることになった。俗に言う、打ちどころが悪かったということで、入院する羽目になった。



(つづく)

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2021年05月02日

短編小説 「二度目の恋」 第5話

 まあ、たまにはこうして体中調べてもらうこともいいことかもしれない。オレは病院のベッドでのんびりすることにした。明日には結果を聞けるみたいだし、そしたらその足で退院だ。会社での事故ということで処理してもらって、病院代もいらんみたいだし、ちょっとラッキーに感じていた。


 翌日、朝食を頂いて、トイレに行って帰ってくると、河合さんが来ていた。目には大粒の涙をためていた。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい。」

「えっ、なんで?」

「だって、私のせいで・・・」

「いや、全然ちゃうし、君のせいなんかじゃないよ。」

「私が山口さんに余計なこと言ったせい・・・」

「だから、全然違うから、もう泣かないで。」

オレは、ベッドの隣の椅子に座ってもらって、その隣の椅子に腰かけた。


「今日、仕事じゃないの?」

「大丈夫です。有給使ったから。」

「それはすまなかったね。オレのために。」

「だって、心配で、心配で・・・」

この子、本当にオレを気に入っているのかな。

「オレは今までひとりで生きてきたし、そんなに気にしないでいいよ。」

「そんなぁ。寂しいこと言わないでください。」

「君の気持ちはうれしいけど、大丈夫だから。」

「今日はもうお帰り。」

「嫌っ、一緒にいます。」

困ったな。


 そこへ看護師さんがやってきた。

「先生からお話しがあります。」

「あ、はい、わかりました。」

「さあ、いいからもうお帰り。」

「待ってます。」

いくら言っても、仕方ないんで待たせることにした。


 オレは看護師さんについて、先生のところへいった。

「おはようございます。」

「え~、ご家族の方は?」

「母がいますが、ちょっと遠いんで、ここまでは無理ですね。」

「わかりました。」

なんか、先生は神妙は顔をしてる。もう一日、入院かもな。


「怪我の方は、特に問題なかったんですが・・・」

「ですが?」

「別の問題が見つかりました。」

「それは何ですか?」

「本当は、ご家族にもお聞きになってほしいんですが。」

いやにもったいぶって、何だろう。

「頭部の怪我のCTとMRIをとった画像ですが、」

そう言って、レントゲン写真を見せてくれた。てか、MRIもしてたんだ。

「先ほども言いましたが、怪我の部分はここなんですが、特に問題ないんです。」

「はい。」

「こちらを見て下さい。」

そう言って、別の写真を見せた。

「この部分、この白い丸いところですが、わかりますか?」

「なんとなく、わかります。」

「これ、腫瘍なんですよ。まだ詳細はわかりませんが、この写真で見る限り、腫瘍は割と大きく、動脈を結構巻き込んでます。もしかすると、手術はできないかも知れません。」

「まあ、今のところ、何も問題ないですし、大丈夫なんでしょ?」

「いえ、今後、もっと大きくなっていくと、いろんな症状がでてくるかと思います。ただ、覚えておいてほしいのは、手術はかなり難しいです。」

「つまり、摘出できないってことでしょ?」

「そうですね。」

「まあ、適当につきあいますよ。」

「一応、1ヵ月後にまた検査しましょう。」


 オレにはそんなに危機感はなかった。だって、今は特になんの症状もないんだ。頭痛すらないし、物忘れがひどいこともない。言語障害だって起こってないし、手足が動かなくなったこともない。とにかく、今日は退院していいとのことだったから、早々に帰ることにした。



(つづく)

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