2021年06月12日

短編小説 「ボクのライフワーク」 第1話

 ボクは、竹内智志(たけうちさとし)。なんか、学校では陰キャなんで、無視する連中が多い。まあ、いじめの標的にされてないだけ、ましだけどね。クラスの中に幽霊のように存在するだけ。特に部活なんかしてないし、成績は中の下だけど、補習を受けないといけないほどでもない。だから、家でもうるさく言われることもない。


 ボクの趣味はパソコンだ。自分で組み立てる。中古の部品を買ってきて、自分オリジナルの高性能の、まあ、自己満足のパソコンを製作することに、楽しみを見出している。パソコンの部品を売っている店へ寄ってから帰るのが、ボクの日課だ。


「おじさん、なんか新しいもの入った?」

「そう毎日は仕入れてないよ。」

「そっか。」

そんな時でも、かたっぱしから部品を眺める。昨日、気が付かなかったものとかも、発見できることがあるのがいい。今日はCPUを探そう。籠のなかに、乱雑に積み上げているCPUから、たまに高性能なのが、ある時がある。山積みの上から確認していき、下の方まで見ていく。こうしている時間がボクにとって、至福の時間なのだ。もし、すごいお宝があった時は、この上ない喜びを感じてしまう。だから、止められない。


「おっ、i7があった。おじさん、値段下げてよ。ちと、高いよ。」

「だめだ。i7はそれ以上下げれない。」

「ちぇ、けち。」

「ばかたれ、値段下げたら、おまんまの食い上げやんか。」

まあ、それもそうだろうけど、ボクの知ったことではない。まあ、今日は電源ファンを1つ買って帰ることにした。1個50円、安いものだ。


 家に帰ると、宿題そっちのけで、パソコンをいじくる。デスクトップパソコンの電源ファンを取り換えるのだ。これで電源を入れてっと、うん、静かになった。まあ、こういう改善もパソコンには必要なのだ。


 親には言っていないが、ボクの部屋にはパソコンが7台もある。全部、自分で組み立てた。知り合いはすごいというが、大したことない。パソコンの仕組みを知っていれば、パソコンにどんな部品が必要かなんて、誰だってわかると思うので、あとは、何に使うのかによって、どの部品をいいものにしたり、別の部品を追加するくらいなもんだ。


 たまに友達のパソコンを修理して、お小遣いを稼いでいる。今は同じクラスの山田クンのノートパソコンを預かっている。キー入力できないキーが3つあるので、修理中だ。すぐに直そうと思うと、このパソコンに合うキーボード部品を入手しないと直らない。例のおじさんとこで、中古の安いのを見つけようと思っているけど、なかなかない。あとは、ネットで購入するしかない。今日もオークションや安売りのサイトで探している。でも、見つかるまで、そんなに時間はかからない。安いのが見つかった。即、注文っと。部品代1500円、工賃1000円で2500円ってところだ。


 古いパソコンを買い取ることもある。新しいのを買うというから、ボクが2、3千円で買い取ってあげる。これを改造したり、OSやソフトを変更したりして、ネット販売すると、案外高く売れる。そんなことをしていると、月に3万~5万円程度のお小遣い稼ぎになるのだ。壊れている部品は、ボクの練習台になってもらう。例えば、さっきのキーボード。反応しないキーを直してみる。うまくいけば、中古キーボード部品としておいておく。失敗すれば、ジャンク品としてネットで、売ってしまう。まあ、安くなるか、高くなるかだ。


 今日もいつものように、パソコンの店に寄る。

「竹内くんさぁ、」

「なぁに、おじさん?」

「学校卒業したら、この店やんない?」

「おじさんは?」

「もういい年だから、引退すんのよ。」

「まだ、早くない?」

「だからさ、竹内くんがこの店やって、この店の賃料を、毎月10万ほど入れてくれれば、いいって訳よ。」

「そっか。ということは月に10万円以上ボクが儲けたら、自分の手取りってわけか。」

「そうそう、そういうことだよ。どう?」

「考えとくよ。」

「まあ、卒業してからでいいからさ。考えといて。」

「わかった。」


 だけど、この店、いつもはどれくらいの儲けなんだろう。もし、月に10万円ほどしか儲からないとすると、ボクの手取りがないじゃないか。まあ、でもお宝部品と巡り合えるかもしれないし、それもいいかもな。



つづきはこちらへ↓↓↓



(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | ボクのライフワーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月13日

短編小説 「ボクのライフワーク」 第2話

 いつものように、おじさんの店で、部品をあさっていると、見たことない部品に出会った。値段は3千円か、まあまあするな。でも、これ、どこの部品なんだろう?CPUっぽいけど、初めてみるな。

「おじさん、これなんの部品?」

「え~、どれどれ。」

「こんなん、あったかな?」

「知らんのに、こんな値段つけてんの?」

「ん~、その値段も知らんな。」

確かによく見ると、この店のラベルじゃない。

「うちのラベルじゃないし、在庫表にもないから、ダタで持っていっていいよ。」

「ほんと、やったぁ。」

「ただし、何の部品なのか、わかったら教えてな。」

「了解。」


 もしかすると、ゴミかも知れんし、大発見かも知れんな。ボクは、かなりワクワクして家に帰った。あの形状からして、恐らくCPUと思うんだけど、あんなの初めて見た。問題はあれを乗せる基盤がないということだ。仕方ないから、あの部品が乗るCPUの台座を作成するところからやるしかない。


 だけど、めちゃ薄いし、i7なんかより極端に小さい。虫眼鏡で見ると、何やら書いてあるのがわかるけど、それでも小さ過ぎて分からない。いろいろ試してみたが、どうしても読み取れない。スマホのカメラで撮って、拡大してみる。でも、やっぱ、ぼやけて分からない。


 とにかく、この小さいCPUかも知れない部品が、乗る台座の製作を行うことにした。だけど、これを手作業で製作するのって、本当にできるんだろうか。とにかくがんばって作ってみよう。

で、翌日、ボクは学校の理科室へ行き、例のCPUに書いてある文字を見るために、顕微鏡をのぞいてみた。

「なんちゃら、CPUって書いてある。」

間違いないCPUだ。でも、そのなんちゃらが分からない。どこのメーカーのものなんだろうか。それすら、分からない。まあでも、CPUということだけ、わかったんで、収穫はあった。あとは台座をつくるだけだ。しかし、あまりに小さ過ぎて、ましてやそんなものを作ったことがないボクは、かなり苦労した。台座自体を何回壊したことか。


 3ヵ月もかかって、ようやく、できた。でも、通電するかどうかも分からない。やってみるのみだ。マザーボードに台座を差し込み、その上に例のCPUを差し込み、これでよし。そのまま、デスクトップパソコンを組み立て、電源を入れた。いきなり、煙が出てきた。ボクは思わず、電源をオフにした。もしかして、ものすごい熱?パソコンを開けて見ると、冷却ファンがひしゃげている。熱で壊れた?もっと、冷却しなくちゃだめなのか。台座は?大丈夫みたいだ。今度は冷却装置を考えないといけないようだ。これは大変だぞ。


 ボクはおじさんに相談してみることにした。

「あれね、CPUだったんだけど、あれが乗るマザーがないよ。」

「そうか、じゃどうしようもないな。」

「でね、なんとか台座をつくったんだけど、ものすごく熱を出すんで、なんとか冷却させるファンがないかと思ってるんだ。」

「そうか、待ってろよ。」

そう言うと、店の奥に引っ込んだ。すぐに戻ってきた。

「これちゃうかな。」

持って来たのは、また初めてみる冷却部品だった。

「前にこれを見つけたんだけど、こんなのが乗るマザーなんかないし、捨てるにも惜しい気がするし、取っておいたんだ。」

「これならいけるんかな?」

「あげるから、やって見てよ。」

「ありがとう。」


 もらったのはいいけど、これをどうやって取り付けるかだ。また、台座を作らなければいけないのか?うまくつながればいいけど、おじさんが音を上げてるくらいだから、簡単じゃないだろう。


 家に着いて、やってみたが、全然、口が合わない。これも自作するしかない。でも、今度はそんなに難しくなかった。あのCPUの台座に比べたら大したことない。ボクはものの1日でマザーボードに取り付けた。ちゃんと冷却できるんだろうか。恐る恐る電源を入れてみた。すると、瞬時にOSが立ち上がった。なんだこりゃ、めっちゃ早い。熱は大丈夫みたいだ。この冷却装置はすごい。


 ボクはとにかく、かなり大変な時間のかかる計算をやってみたが、これも瞬時に回答がでる。これって、日本のスーパーコンピュータより早いんちゃう?ネットに繋ぐと、回線のスピードがネックになるけど、スタンドアロンで、パソコンだけでやる計算は、とてつもなく早いと思う。こんなん、みたことがない。i7なんか、おもちゃだ。いろいろテストをしてみたが、あまりの速さにボクは本当に驚いた。これは今の時代のCPUじゃない。もしかすると、マザーとかほかの部品もあるんじゃないの。



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(つづく)

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