2021年07月01日

短編小説 「占い師ケン」 第1話

 オレは占い師。いろんな占いがあるけれど、それはまあ、たいていは統計学上の占いが多いと思う。遠い昔から占いはされてきたんで、それなりにかなり研究されて、当たる確率が高いものが多いと思う。でも、オレのは違う。多分そのどれにも当てはまらない。


 オレはいつものように、夜7時くらいに占いを始める。店は繁華街の路地に構えている。だけど、ものの2~3時間ほどで、店仕舞いだ。それでも、一応、毎日やることにしている。まともにサラリーマンをやってもよかったんだが、自由気ままにやれるこの仕事の方が、オレに向いていると思ったから、今日も路地の店で占う。


「ねえねえ、ケンちゃん、占ってよ。」

そうそうオレは、高山健(たかやまけん)という。ここの界隈では、スナックのママさんが多く、オレを頼ってくる。

「今日は1時までに帰ることだな。それ以上遅くなると、やっかい事に巻き込まれるぞ。」

「ほんと?わかった、ありがとう。助かるわ。」

そんだけだけど、1万円置いていってくれる。ありがてぇもんだ。たまに、オレの噂を聞いて、スナックのママさんたち以外の人も訪れる。


「あの、ケンさんですか?」

「そうですよ。」

「よかったぁ。やっと見つけた。」

オレは何も言われなくても、聞きたいことがわかる。

「じゃ、早速だけど、その男とは早く別れることだね。」

「やっぱり、そうですか?」

「あなたには合わないね。あまり長く付き合っていると、ロクなことないから、今日、明日にでも別れたほうがいい。」

「わかりました。」

「で、半年先に初めて出会う人は、あなたより2つ上で、ちゃんと守ってくれる人だから、大切にしたほうがいい。」

「半年先、2歳上、わかりました。」

まあ、オレの占いはよく当たると有名になってきている。


 だいたい、一晩で5~6件から、多いときで10件ほど占ってから、居酒屋で晩飯食って帰るのが日課だ。一晩の稼ぎは平均10万円くらい。やめれんなぁ。こんな楽な稼業は、オレにとっては最高だ。


 占いをやっているときは、素顔を見せていない。だって、まだ24歳だし、あまり若く見られると支障があると思うのだ。多分だが、誰も占い師のオレの正体を知らないと思うのだ。オレの城は2LDKのマンションで、当然、独り身だし、女はいない。どういうわけだか、自分のことは占えない。自分の将来はわからないのだ。まあ、まだ女なんかいなくていい。自分ひとりで、贅沢な暮らしを満喫するのだ。とは言うものの、ちゃんと、個人事業主として納税もしている。決して、やばいヤツじゃないことを付け加えておこう。


 オレは高校の時から、占いの能力があることに気が付いた。初めは誰も信じてはなかったが、そのうち、クラスの女の子が騒ぎ出した。オレの占いが当たるってね。オレも調子に乗って占ったけど、これは商売にしたらいいかもしれないと思い立ったのが、高校を卒業してからだ。はじめはおっかなびっくりで路地に座った。初めての客はスナックのママさんだったのだ。


「そんなとこで、何してんの?」

「あの、占いを・・・」

「ふ~ん、占い師ってわけ?」

「そうです。」

「どうみても、そうは見えないよ。」

「はぁ。」

「それらしい格好をしないとだめよ。」

「はぁ。」

「なんか、覇気もないわね。それじゃ、誰もこないわよ。」

「そんなもんですか?」

「そうそう、じゃ、私を占ってよ。いろいろ、どうしたらお客がくるかを指導してあげるから、ただでいいわよね。」

「わかりました。」

ということで、スナックのママ、ゆうこさんが、オレに初めて声をかけてきたお客さんだ。本当にいろいろ教えてもらった。繁華街のママさんたちは占いが大好きだし、割と簡単な内容がほとんどだったし、お金持ちだから結構弾んでくれた。オレは、恩人のゆうこママさんだけは、ずっとただで見てあげている。


「ほんと、ケンちゃんの占いって当たるよね。どういう流派なの?」

「自己流さ。」

「そんなわけないじゃん。教えてよ。」

「だから自己流だってば。」

まあ、恩人のゆうこママは、いつだって占いは無料にしているから、ゆうこママのスナックでは無料で飲ませてくれる。初めは未成年って知らなかったから、かなりびっくりしてた。

「えっ、こんなとこで占いしてるのに、未成年なの?」

「はい。」

「信じらんない。まあ、いいわ。20歳になったら、ただで飲ませてあげるから。」

「ありがとうございます。」

てなわけで、オレは20歳を過ぎてから、お酒の方のお世話になっている。多少、フライングしているけどね。


続きはこちら↓↓↓

(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | 占い師ケン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月02日

短編小説 「占い師ケン」 第2話

 とにかく、オレは夢中で占いをしまくった。なじみのお客さんも増えた。こういう商売は信用が大事で、当たらないとなったら、とたんに客はいなくなる。だけど、当たらないことは絶対にない。だから、口コミでどんどん広がっていく。毎日やっても、絶対に客は来る。コストパフォーマンスは最高だ。


 実家の両親に占い師をやっているというと、そんなヤクザな商売はやめて、まっとうに就職しろってうるさい。ちゃんと個人事業主だし、確定申告もしてる。何も問題ない。だが、両親は全然わかってくれない。まあ、別にそれでもいいけどね。妹の恵子は、オレを支持してくれている。

「だって、兄ちゃんの占い、本当に当たるのよ。すごいんだから。」

まあ、妹の頼みなら、夜の繁華街じゃないところでも、ちゃんとやってあげている。


 ある日、仕事を終えて居酒屋でひとり飲んでいると、満席でもないのに、なぜかオレのテーブルにひとりの女が座った。

「ここ、いいですか?」

なんだ、こいつ。

「別にいいですよ。」

「ご一緒ついでに、一緒に飲みませんか?」

「だいぶ前から飲んでいるから、そんなにご一緒できませんよ。」

「それでもいいです。」

突然、何なんだこの人は?オレはその女をみた。ふ~ん、遺産について悩んでいるのか。

「占いをなされていますよね。」

オレを知ってる?

「私をみてほしいんです。」

「遺産の件ですよね。」

「わかるんですか?」

そりゃわかるよ。

「でも、ここではやめておきましょう。ゆっくり飲ませて下さい。」

「わかりました。」

彼女も飲み物を注文し、食べ物も数品注文した。

「よければ、食べて下さいね。」

「自分の分で、十分ですよ。」


 オレは彼女の状況をいろいろとみていた。結構な遺産が転がり込んでくるみたいだ。

「お名前を聞いてなかったですね。」

「あ、すみません、中川孝子と言います。」

「私のことは・・・」

「占い師のケンさんですよね。」

知ってるんだ。

「じゃ、ここではその話はなしでお願いしますね。」

「わかりました。」


 この人はつい最近まで、遺産のことは知らなかったんだな。シングルだった母親はずっと黙っていたけど、有名資産家との間に、この子は生まれたということか。で、もって、その資産家には子供がいないし、配偶者もいない。お金の亡者の親族だけがいるってことか。この子の母親は亡くなっているから、相続はこの子だけってことだ。オレが占って、数百万ほどもらってもばちは当たらんだろうな。そんなことを考え、のんびり食事をしながら、飲んでいた。彼女もオレのペースに合わせて、食事をしていた。食事が終わって、オレたちは一緒に店をでた。


 さて、どこで話をしようか。

「誰かに聞かれたら嫌なんで、ケンさんのお家でお願いします。」

オレんちか、絶対いやだね。オレはいままで誰も入れたことがない。オレだけの城だからな。仕方ないから、別途借りている部屋へ、いくことにした。普通のワンルームだ。こういうときもあるので、借りっぱなしにしている。月に1回ほど掃除しにいくだけだ。


「どうぞ。」

「お邪魔します。」

ワンルームには、テーブルと椅子があるだけだ。小さな台所があるから、お茶くらいは飲める。

「コーヒーでも飲みますか?インスタントですが。」

「あ、はい、お願いします。」

コーヒーを入れて、テーブルについた。

「さてと、突然、降って沸いた遺産の話をどうしたらいいのか、悩んでいるというわけか。」

「はい。」

「資産家のあなたのお父様は、相続させる子供を探していて、あなたを見つけた。あなたは、まさか自分のお父様が、そんな資産家なんて思いもしなかった。」

「はい。」

「お母さまもそんな話をしてこなかったから、あなたは全然知らなかった。お母さまは亡くなってしまっているから、確認しようがない。」

「よくわかりますね。」

「占い師ですから。」

「あなたは、DNA検査待ちですね。でも、間違いなく、その資産家のお父様のお子様です。」

「そんなことまでわかるんですか?」

「ここから先は、あなたが悩まれていることについてです。」

「はい。」

「お父様は、もうじき亡くなります。」

「えっ、そうなんですか。」

「だから、あなたは、早めに会いにいった方がいいです。」

「わかりました。」

「で、遺産の相続はおやめになった方がいいです。」

「それはなぜですか?」

「必要以上のお金は人を狂わせます。もし、受け取るなら、全額、恵まれない人達とか新型ウィルスで、生活が困窮している人へ寄付してしまいなさい。」

「はい。」

「受け取らないなら、お父様の亡くなったあと、その家にはかかわらないほうがいいです。」

「そうなんですね。」

「必要以上のお金は、ろくなことになりませんよ。」

「わかりました。」


 でも、この人は、オレの忠告を無視した。まあ、仕方がない。それが人生なんだから。彼女の選択は、最悪な事態を迎えた。欲に目がくらんだ親族に殺されたのだ。これ以上、オレは何もしようがない。彼女の選択なんだから。




(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | 占い師ケン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする