2021年11月16日

短編小説 「オッド・アイ」 第1話

 この世には、わからないことがある。オレはそんなことにわからないことに巻き込まれることになった。


 オレは上条レイ。

どこの国の人だか知らないが、親の片割れが外国人だそうだ。だから名前もカタカナ名なんだ。普通にハーフに見えるし、純日本人じゃない。目の色が黒色と茶色というのも、かなり周りの人から興味深く見られてしまう。普通の日本人は、みんな両目とも黒か、茶色っぽいのが普通だ。そんな中にいるから、オレはいつだって異端児だ。


 それに、誰からの支援だかわからないけど、オレは大学に通っている。オレの銀行口座にはいつだって、必要な金額が入っている。そのおかげで、何不自由なく暮らせているし、大学で勉強できている。


「なあ、上条、今から飲みにいこうぜ。」

「オーケー。」

友人の木村は、夕方になると必ずこう言う。飲むの好きなヤローだぜ。


 特に、何を勉強したいということもないオレは、経済学部の3年だ。悪友の木村と大石といつもつるんで飲みに行くことが多い。まあだいたい女の話ばかりだ。

「この前さ、外語の食堂で、可愛い子見つけたんだ。」

「お前の趣味はあてにならんからのう。」

「いや、今回はお前らも絶対可愛いと思うはずだ。」

「ほんとか?」

「違ったら、ランチおごりな。」

「おう、かまわないぜ。」

と、まあ、こんな感じだ。オレを含め、3人とも彼女はおらん。3人とも多分美形ではないからだ。少なくともオレはそう思っている。


 飲んだ帰りはたいがい、コンビニ寄って、大石んとこに転がり込む。そこから、一晩ワイワイするのだ。で、翌日はそのまま大学へ行って、授業中はお昼寝タイムだ。なんて、いい加減な生活をしているんだ、オレたちは。そろそろ、就職も考えないといけないんで、こんな生活を改めないととは、頭の片隅にあるんだけどな。なかなか、変わらん。


 男の多い学部だけに、同じ学部の女友達は一人もおらん。だけど、木村の高校時代のクラスメートの女の子が、文学部におるんで、たまに女の子としゃべる機会があるのは、オレたちの楽しみのひとつだ。まったく知らない子らに、しゃべりかけるのは敷居が高い。こればっかりは、木村に感謝だ。


「また、3×3で飲みに行くど~。」

「おお、いいねぇ。」

「じゃ、決まりな。」

ということで、久しぶりに飲みにというか、食事しに行くというか、とりあえず、女の子たちとワイワイできる。今回は彼女たちの好みで、イタリアンでということになったもんで、ビール飲みじゃなく、ワインって感じでおしゃれに食事することになった。


「ごめんね、私たちのリクエスト優先させてもらって。」

「全然、大丈夫だよ。」

「ありがとう。」

まあ、どんな場でも、ワイワイできることに意義があるのだ。


 だが、久しぶりっていうのは、オレたちを大人しくさせてしまう。そんなことは最初だけなんだけどね。少し話出せば、あっという間にワイワイできるのだ。男だけもいいけど、こういう場もいいもんだ。お酒が入ると、彼女たちが色っぽくみえるってえもんだ。今日は結構意気投合したんで、カラオケにもいくことになった。歌い始めると、時間が経つのは早い。あっという間に、真夜中だ。とっくに、電車なんかない。まあ、オレたち男どもはいつものように大石んとこにお泊り決定だし、彼女たちもそういう意味では大丈夫みたいだ。


 オレたちが機嫌よく歌っていると、突然、大音響がした。それとともに、ものすごく部屋が揺れて、電気も消えた。カラオケも止まった。

これっ、地震?

女の子たちは、悲鳴を上げている。オレたちは固まってしまっていた。どうすることもできない。真っ暗な中で、身動きがとれなかった。そんな中で、更に大きく揺れた。頭に何かがぶつかってきた。天井が落ちてきたんだと思った。それとともに、オレは気を失った。



 目を覚ますと、真っ暗の中だった。そうだ、カラオケしてる時に地震が起こったんだ。

「木村、大石。」

呼んでみたが、返事がない。

「大島さん。」

彼女たちの一人を呼んだが、これも返事がない。まさか、死んでしまったのか。


 オレは恐る恐る手を伸ばして、誰かに触れられるかどうか、試した。だが、オレのそばにいたはずの大石や木村に触れることはできなかった。ふと、そんなことより、自分はどこも怪我していないかが気になった。足や手を動かしてみたり、体をひねってみたが、どこも痛くはなかった。多分、怪我はしていないんだと思った。そんなことをしていると、急に光がついた。ん?スマホの光?誰の?

「誰?大丈夫?」

「私。」

その声は、高木さんだった。そういえば、オレの携帯はどこだろう?

「怪我してない?」

「たぶん。でも、動けない。」

「なんで?」

「たぶん、天井が落ちてきて、私の上に乗っかってる。」

「痛くない?」

「うん。なんとか。」

「わかった。ちょっと待って。」

オレはその光のところへいって、大きな板?をなんとか取り除いた。

「ありがとう。」

「怪我、ないか確認してみて。」

「大丈夫、どこも怪我してない。」

「ほかのみんなは?」

「さっきからみんながいた場所を照らしてみてるんだけど、誰もいないの。」

「そんなわけないじゃん。」

「だって、ほんとだもん。」

オレはその明かりを頼りに、自分のスマホを見つけたけど、完全にお釈迦になってる。

「オレのスマホはつぶれてるから、高木さんのだけが頼りだね。」

「わかったわ。」




(つづく)




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2021年11月17日

短編小説 「オッド・アイ」 第2話

 でも、おかしい。なんで、仲間がいないんだ?オレと高木さんだけなんておかしい。みんな、どこいったんだろう。

「このドア、つぶれてるね。でも、なんとか出れるかも。」

「なんでみんないないんだろうね?」

「わかんない。」

「どこ探してもいないもんな。」

オレはドアを壊して、その部屋から脱出した。廊下を通って、入り口までなんとか出れた。外は真っ暗だ。まあ、深夜だから当たり前だよな。


 外は・・・何事もなかったかのように、普通に街灯がついていたし、どの建物もなんともなかったように見える。オレたちが出てきたカラオケの建物も。えっ、なんで?オレは今でてきたカラオケの入り口を開けた。

「いらっしゃいませ。」

店員さんがいる。普通に営業してる。なんで?今さっきまで、中はぐちゃぐちゃだったのに?

「どうなってんの?」

さすがに高木さんも何が何だかわからないみたい。オレだって、そうだ。

「さっきの地震は?」

「はぁ?」

店員さんは変な顔をしている。どうみても、店の中は普通だし、さっきのような状況なんか、どこにもない。どの部屋からもカラオケの歌が聞こえてくる。恐らく、なんともないんだろう。オレたちが歌っていた部屋に行って、中を確認したら、誰か知らない人たちが歌っていた。


「ねえ、どうなってるの?」

そんなこと、オレに聞くなよ。

「オレにも分からない。さっきの地震はいったいなんだったんだ?」

「じゃ、大島さんとか、宮下さんに連絡してみる。」

高木さんは、さっきまで一緒にいたはずの子たちに連絡をしようとした。

「え、うそ。ない。」

「どうしたん?」

「大島さんや宮下さんの連絡先がない。」

そんなバカな。オレのスマホは完全につぶれてるから、みんなの連絡先の確認ができない。だけど、木村の番号は覚えてる。

「スマホ、貸して。」

オレは木村に電話してみた。

「お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。」

「んな、バカな。」

「どうしたの?」

「木村んとこかけたのに、これ。」

オレはそのスマホを高木さんに渡した。

「どういうこと?番号、間違えてない?」

「それはない。」

「じゃ、なんで?」

「オレにもわからないよ。」

さすがに、何が何だかわからない。


「ここから、一番近いとこ・・・、大石んとこが近いから行ってみよう。」

「わかったわ。」

オレたちは、急ぎ足で行った。すぐに大石のアパートに着いた。でも、大石が住んでいるはずの部屋の表札に、「O(オー)」の字がない。

「ここ、大石んちじゃなくなってる。」

「なんで?」

そんなん、わかるかよ。オレんちは、ここから20分は歩く。

「高木さんとこは?」

「歩くのはちょっと遠いかな。」

「じゃ、オレんちにくる?ちょっと、あるけど。」

「うん。」

オレんちって言っても、そこがオレんちである保障はどこにもない。もし、違っていたら・・・

なんか、めっちゃ、不安なんですけど。オレたちは沈黙のまま、ひたすら歩いた。オレの部屋は・・・大丈夫だった。

「よかった、オレんちは無事だ。」

鍵を差し込むとちゃんと機能している。玄関を開けると、そこから広がる光景はいつものオレの部屋だ。

「あがって。」

「お邪魔します。」


 よく考えれば、こんな状況で女の子をオレの部屋に上げるなんて、どうかしてるぞ、オレ。でも、緊急事態なんだよな。

「ねえ、あの場にいた6人のうち、私たちだけしか、いなくなってしまったのよね。」

「まったく、意味がわかんねえよ。」

「私たちは地震を認識している。なのに、店員さんとか、あのカラオケの建物も、なんともなかった。」

「そうだよな、出てくるまでは悲惨な状況だったのにだ。」

「お店を出て、戻ったら、もうなんともなかった。」

「いったい、どういうことなんだろう?」

しばらく、オレたちは考え込んだ。どう考えても、さっぱり、分からない。

「なんか飲む?」

「ありがとう。」

オレは、冷蔵庫を開けたけど、何にもなかった。お湯を沸かすか。確か、コーヒーはあったはずだ。しばらく、二人して考え込んだが、全然わからない。コーヒーを飲みながら、沈黙が続いたが、結論はでなかった。


「とにかく、一旦、寝るか?」

「ちょっと、何かする気じゃないでしょうね?」

「そんな状況かよ。」

「ほんと?」

「当たり前だろ。」

高木さん、頼むわ。オレがそんなことするわけないやん。

「じゃ、高木さんは、こっちで寝て。オレはあっちいくから。」

「わかった。」

オレの世話になってるんだから、ありがとうだろ?まあ、いいや。

さすがにこんな時間まで起きてたんで、眠気が先に立つ。あっという間に、寝てしまった。


 翌朝、オレが目覚めると、高木さんはいなかった。でも、置手紙があった。

「私も自分の部屋に帰ってみる。今日、授業があるんで、大学に行ってみる。そこで、大島さんや宮下さんを探してみる。」

まあ、したいことはわかったけど、オレへの連絡はどうするつもりなんだ。落ち合う場所も書いてないやんけ。こんな状況になったのは、オレと高木さんだけなんだから、情報は共有してほしいもんだ。仕方がない、文学部の校舎の方に行ってみるか。


 オレも3時限目に授業がある。昼飯を大学で食えるようにいくか。とにかく、シャワーを浴びて、さっぱりしてからでも間に合うんで、準備をしながら、いろいろ考えた。オレの悪友たちはいるんだろうか?大石の部屋は他人の部屋になっていたし、この分だと、大石も木村もいないような気がした。


 大学でとりあえず、文学部の学食へ向かった。高木さんはいったいどこなんだ。そう思いながら、定食を注文した。まわりを見渡しながら、座れる場所を探した。そこに、木村がいるじゃないか。オレは木村のそばに行った。でも、彼はオレを見ても、何の反応もしない。オレを知らないみたいだ。木村の周りには男女数名が楽しそうに話をしている。交友関係が全然変わっている。どうなっているんだ。


 オレは食事をしながら、様子を見続けた。結構、和気あいあい楽しんでやがる。でも、木村以外は見たこともない連中だ。オレは食事が終わり、食器を返しに行った。それから、飲み物をオーダーして、ちょっと、遠くの席から、木村を観察していた。



(つづく)



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2021年11月18日

短編小説 「オッド・アイ」 第3話

 その時だ。突然、高木さんが現れた。

「木村クン、昨日はどうしていなくなったの?」

突然、それ、言う?

「???」

木村も、いったい誰だ?って、顔してる。そりゃそうだ。今は完全にオレを知らない木村だからな。

「昨日、カラオケ行ってたじゃない、上条クンと大石クンとか・・・」

「誰?この人、知ってる?」

木村は周りの人達に聞いた。でも、誰も知ってるわけないよな。

「いったい、どうしたの?木村クン。」

「あんた、気持ち悪いんだけど。」


 こりゃ、あかんわ。オレは飛び出して、高木さんを引っ張って、その場から遠ざけた。

「上条クン、いったいこれどういうことなの?」

「オレに聞くな。とにかく、オレたちがいた世界じゃないことだけは確かだな。」

「大島さんや宮下さんも私のこと知らないのよ。」

「会ったのか?」

「ええ、でも、二人とも私を知らない・・・」

「3時限目ある?」

「ええ。」

「じゃあさ、オレも授業あるから、終わったら、また、ここで落ち合おう。」

「わかったわ。」


 思わず言ってしまったが、この世界は、今までと全く同じだが、オレがいた世界とは違う世界だ。3時限の授業中、ずっとそればっかり考えていた。なんでこんなことになってしまったんだろう。どうやったら、元の世界へ戻れるんだろうか。


 授業が終わって、オレは学食へと向かった。これから先どうしていいのかわからない。高木さんに会っても、たぶんいい案なんか浮かんでこないだろう。どうしようか。学食に着くと、もう高木さんがいた。そうだよな、ここは文学部の学食だ。オレの経済の棟より、ずっと近い。


「あのさ、いろいろ考えたんだけど、前の環境じゃないし、どうやったら、前の状況に戻れるのかも分からない。それなら、いっそ、この環境で順応する方がいいんじゃないかな。」

「そんな簡単にあきらめるの?」

「仕方ないだろ。自分の部屋は元のままだし、友人関係だけがおかしくなっただけじゃん。」

「それだけじゃないわ。過去も変わってしまってるの。」

「えっ?」

「私の部屋に高校の卒業アルバムがあるんだけど、中身が変わってしまってるの。」

「どういうこと?」

「自分自身の過去もみんな変わってるのよ。」

えっ、そうなんか?

「まじか。」

「だから、あなたも変わってると思うわ。」

「オレも調べてみるよ。」

「お互い、もっと調べてみて、どうなっているか、教え合いましょう。」

「わかった。」

「あ、あと上条クンの連絡先。」

「そうだよな、早いことスマホを調達しないとな。」

「それまでは、あそこの掲示板に書いといて。」

学内の掲示板がある。自由に書けるので、会うときはそこに日時場所を書いておくことにした。めっちゃ、旧式だ。オレは、壊れたスマホをもって、契約している店を訪れた。


「あの・・・」

「はい。」

「スマホ、壊れてしまったんですけど。」

「えっと、これはひどいですね。データ、取り出せるかわかんないですよ。」

「その時は仕方ないです。」

「お調べしますね。」

オレはその間、一番安いスマホを物色していた。手持ちも乏しいから、あんまりお金かけられないしな。

「えっと、お調べしている間になんですけど、あのスマホは修理できないので、新しいのと交換になります。」

「いくらくらいかかりますか?」

「保障に入られているので、費用は掛かりません。」

ヤッター!!ここのでのオレは、そんな保障に入っていたんだ。ラッキー。

「一応、選べるのは、この3種類からになります。」

「じゃ、このタイプの色は白で。」

「わかりました。では、データが取り出せたら、こちらに移しますので、しばらくお待ちください。」

「わかりました。」

よかった。お金がかからんでほっとしたぜ。

しばらくして、新しいスマホを持って、店員さんが現れた。

「一応、データはすべて取り出せましたので、こちらに移しておきました。」

「ありがとうございます。」

よかった。データが無事だったのは幸いだ。


 早速、中を確認してみた。すると・・・、木村や、大石の連絡先がない。知らない名前の連絡先もあったりする。これは、高木さんが言っていた通り、過去も変わってしまっているということなんだろう。


 オレは自分の部屋に戻った。知らない名前の連中を確認してみようと思って、高校の時のアルバムを持ってきて、調べた。何人かはそこに載っていたが、載っていない連中もいた。オレは早速、高木さんからもらっていた連絡先に電話してみた。

「もしもし。」

「あ、高木さん?オレ、上条だけど。」

「スマホ、直ったの?」

「うん、もう大丈夫だ。」

「よかったね。で、どうだった?」

「高木さんの言う通り、過去が変わっている。知らん連中の連絡先もある。」

「でしょう。で、実家はどうだった?」

「それは、変わってなかった。」

「電話してみた?」

「いいや。」

「じゃ、わからないわよ。」

「どういうこと?」

「私んち、確かに親は一緒だったけど、親の職業とか、変わってたもん。」

「ほんとか?」

「ええ、だから、確認しておいた方がいいわよ。」

「わかった。」

そんなことになってるなんて。とは言え、オレの両親はいない。両親の顔さえ見たことはない。あ、そういえば、オレの口座に支払われていたお金はどうなっているんだろう。オレは通帳を確認してみた。そこには、「上条幸子」という人から入金が定期的に続いていた。どういうことだ?「上条幸子」って誰?




(つづく)



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2021年11月19日

短編小説 「オッド・アイ」 第4話

 オレはスマホの住所録に、オレと同じ上条名の連絡先を見つけた。上条幸子・・・これ、もしかして、オレの母親???電話番号もある。オレは恐る恐る電話してみた。

「もしもし。」

「あ、レイ。何なの?久しぶりじゃないの。」

「もしかして、かあさん?」

「何言ってるの。当り前じゃない。まさか、声を忘れたとか?」

「ほんとに、オレのかあさんか?」

「レイ、頭、大丈夫?」

「とうさんは?」

「いるけど、呼ぼうか?」

「いや、近々、そっちに帰るよ。」

「帰ってこれるの?まだ、休みじゃないんじゃない?それに、飛行機の手配とか大丈夫?」

「飛行機?」

「ほんと、大丈夫?こっちは、バルセロナよ。」

えっ???

「日本じゃないの?」

「レイ、本当に大丈夫?」

「ごめん、大学が休みになったら、いったん、帰るから。」

「わかったわ。」


 どういうことだ?オレの両親は生きていた。それも、バルセロナに住んでいる。あ、それで、オレは第二外語がスペイン語なんだ。でも、オレはスペイン語なんてまともにしゃべることなんかできない。どうなってるんだ。


 翌日、オレは高木さんと学食にいた。

「オレの両親、今まで会ったことなかったんだけど、この世界ではちゃんといたよ。」

「ほら、やっぱり、変わってるでしょ。」

「とにかく、夏休みになったら、会いに行ってくる。」

「まあ、よかったじゃん。」


 そこへ、外人がオレにしゃべりかけてきた。この人誰?でも、その言葉、わかる。スペイン語だ。この人、スペイン語の先生だった。

「レイ、夏休みはスペインに帰るのかい?」

「ええ、その予定です。」

「じゃ、一度、バルセロナに来るといい。私も帰っているからね。」

「オレの両親もバルセロナに住んでいるんです。」

「おお、何たる奇遇。じゃ、家族でパーティでもしようじゃないか。」

「はい、よろしくです。」


 オレが流暢なスペイン語でしゃべっていたんで、高木さんはびっくりしていた。

「高木クン、今の何語?」

「スペイン語。」

「しゃべれるの?ああ、スペインとのハーフだからなのね。」

「そうみたい。今まで、知らなかったんだけどね。」

「そうなの?」

「今までの世界では、オレは両親とも知らないんだ。ハーフってのはわかるけど、どこの国のハーフかも知らなかったんだ。」

「で、この世界で、わかったというわけね。」

「そう。で、まさか、自分がスペイン語できるなんて、今の今まで知らなかった。」

「しゃべったことなかったの?」

「そうなんだ。」


 やっぱり、不思議なことが起こっているんだという実感がした。

「やっぱりね。で、どうする?」

「どうするって?」

「私たち、これから?」

「わかんないよ。」

「もとの世界に帰れるのかな?」

「でも、この世界でうまく生きてくこと、考えたほうがよくない?」

「そんなわけないしょ。どうやって帰るか、考えるべきよ。」

オレはなんかどうでもよくなった。今の世界で生きていけばいいじゃん。両親も健在なんだし、外国旅行もいけるし。今までの世界じゃ、オレは一人ぼっちだったし、悪友とバカ騒ぎするだけだったし。就活なんか、どうせ、いい加減だったし。


「とにかく、もっと他に何が変わっているのか、調べてね。」

「わかった。」

いろいろ調べると、自分の過去が所々違っていたことがわかった。そのため、交友関係もかなり違っていた。オレはかなりの優等生だったみたいだ。おまけに家庭はバイリンガルで日本語、イタリア語、完璧。英語も少々。だから、外国語の授業は楽勝。今のオレの友達は、この大学には少ないみたい。まあ、それはそれでいいかもしれない。なんか、今更、日本の大学にいるより、オレはバルセロナにいる方がおもしろそうだ。だけど、オレの両親は、ずっとバルセロナにおったんかな?そんなわけないよな。


 この大学にいる間、同じ学部で仲がいいヤツなんかいなかった。授業の関係で、話をする程度だったし、オレはスペイン語のロドリゲス先生の研究室に行って、スペインの話を聞くのが楽しかった。先生はカフェオレが好きなのでいつでもごちそうになった。


 夏休み前の試験が終わって、オレはかあさんに送ってもらった飛行機のチケットを持って、バルセロナに旅立った。だけど、なんでドバイ経由で20時間もかかるんだよ。ウィーン経由だったら、15時間くらいでいけるのに。費用を考えたら、仕方ないか。


 初めてのスペインだ。ところで、バルセロナ空港まで迎えに来てくれるって言ったけど、そういえば、オレ、見たことないからどんな感じの人かわからない。大体、かあさんかとうさんか、誰が来るんだ?来なかったら、どこに行ったらいいのかわからないやん。


 しっかし、外国だぁ。外人ばっかりだぁ。なんて、いったい何時間待たせるのかな。もしかして、日にち間違えてる?

「レイ?」

誰だ?その声がした方を向くと、かわいい女の子がいた。

「誰?」

「レイでしょ?私、マリア。」

「マリア?」

「あれ?聞いてない?私、レイのお姉さんだよ。」

オレに姉なんかいたの?聞いてないんですけど。

「そうなんだ。かわいいね。」

「ほんと、私、かわいい?」

「めっちゃ、かわいいでしょ。」

「レイ、うれしい。」

って、いきなり抱き着いてきた。

「でも、レイの目、変わってるね。ブラックとブラウン・・・」

そういえば、そうだった。オッドアイだったこと、忘れてた。

「かっこいいだろ。」




(つづく)



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2021年11月20日

短編小説 「オッド・アイ」 第5話

 マリアは、とうさんの前の奥さんとの間の子だそうで、今は、とうさんのところに遊びにきているとのこと。知らなかったぁ、姉がいたなんて。オレはマリアに連れられて、家に向かった。しっかし、マリアはよくしゃべるなぁ。日本のこと、聞きまくりだ。そんなに興味があるのか。


「だって、ちっさな頃から日本のアニメで育ったんだよ。興味あるっしょ。」

「そんなもんか。」

「だいたい、レイは、全然アニメ知らないなんて、信じらんない。」

日本人なら誰でも、みんなアニメ知ってると思われていることが、信じられねぇや。


 家に着いた。オレのかあさんってどんな人なんだろう。とうさんは?ちょっと、ドキドキした。

「レイが帰ってきたよ。」

「レイ、ひさしぶり。」

「ただいま。」

「お帰り。スペイン語忘れてない?」

「大丈夫だよ。」


 かあさんってこんな人だったんだ。で、とうさんは、体がでかい。それにしても、オレ、なんでこんなにスペイン語できるんだろうか。なんか、勝手にしゃべれる自分が不思議だ。それにちゃんと聞き取れるから、もっと不思議だ。てか、それより、かあさんはなんだかラテン系って感じがする。まあ、見た目は普通に日本人やん。オレは母親に、父親に、かなりしっかり抱きしめられた。


「どう?大学は?」

「大した事ないよ。」

「だから、こっちの大学にしなって言ったでしょ。」

そんな話だったのか。

「なら、そうしようかな。」

「いいよ、そうしたら。」

「え~、レイ、それなら一緒の大学がいいよ。」

「オレ、経済学専攻だよ。」

「私もよ。」

そうなのか。

「でも、マリアは学年上だよね。」

「多分、一緒。ちょっと、遊んでたからね。」


 マリアは2歳年上だけど、どうやらオレと同じ学年。で、オレは今の大学から編入できるらしい。今は、夏休みだから、この夏が終わった段階で、こちらの大学に入れるとのこと。後日、日本の大学から書類を取り寄せて、マリアと手続きにいくことになった。こんなトントン拍子で、生活環境が変わっても大丈夫か、オレ。でも、スペイン語は問題ないくらいにしゃべれてしまうし、聞き取れるんだから、全然大丈夫かもね。


 その日、オレは初めての親子4人で夕食だった。家族での食事ってこんな感じなんだ。結構、楽しいもんだ。てか、こいつらめちゃしゃべるやんけ。オレがまるでお地蔵さん状態だ。

「レイはあんまりしゃべらないんだね。」

「みんながしゃべりすぎだからだよ。」

「そっか、しゃべる隙がないか。」

「だよ。」

「ははは。」


 なんやかんやと、会話が弾んでいたら、夜中になってしまった。

「ところで、オレ、どこで寝たらいいん?」

「そうね、マリアと寝たらいいよ。」

「じゃ、こっち。」

って、そんなんでいいわけ?オレ実の姉と寝るん?まずいやろ。それにマリアだって困るんちゃう?


「何?気にしてるん?」

「いや、そんなことないけど・・・」

「心配しなくていいよ、何も取って食うなんてしないから。」

マリア、全然気にしてない?!

「わかったよ。」

というわけで、オレはマリアと寝ることになった。かあさんもとうさんも、それでいいのか?年頃の男女だぞ。


 ちょっと狭目のベッドに姉と弟が寝る。小さい姉弟なら、問題ないけど、まいった。マリアはTシャツに短パン。オレも似たような恰好でベッドに入った。よかった。あっち向いてくれた。オレも反対向いて寝ようっと。しかし、甘い匂いがしてくるな。狭いから、背中がくっつく。まあ、いいか。だけど、夜中になんか重いなと思ったら、マリアはオレに抱き着いて寝てる。それはやばいだろ。


 なんか、朝までぐっすり眠れた気分じゃなかった。なんか、モヤモヤしっぱなしだった。いくら姉弟だと言っても、一人の女に抱き着かれて、眠れるわけないだろ。


「おはよう。」

「おはよう。あれ、どうしたん?眠れなかった?」

「まあ・・・」

「仕方ないね、初めてのスペインだもんね。」

そんなんじゃない。

「どうも一人じゃないと、眠れないから、今日から別の部屋にしてよ。」

「だけど、別の部屋なんかないよ。」

「え~、そんな。」

「まあ、いいやん。姉弟なんだから。」

ということは、これからずっと一緒に寝るのか??!


「あ、レイ、おはよう。やっぱり、レイがいると暖かくていいわ。」

「オレは暖房か?」

「ははは。」

今夜はベッドじゃなくてソファでも、地べたでもかまなわい。


「ねえ、レイ。」

「なに?」

「今晩、バルに行こうよ。」

「いいわね、行ってらっしゃいよ。」

なんだ?バルって?

「バルってなに?」

「日本でいうなら、居酒屋かな。」

「なんだそっか、ならOKだ。」

「私の友達にも紹介してあげる。」

なんか、大丈夫か。どんな連中に紹介されるんだ?




(つづく)


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