2021年12月01日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第1話

 オレは普通の人にできないことができる。なんて、その能力は滅多に使わない。その能力を使うときは、オレ自身の身に危険が迫ったときだし、普通は使わないのだ。オレは小林渉(こばやしわたる)、31歳だ。未だ、独身、特に彼女はいない。なんでかわからないけど、オレはトラブルを引き寄せるみたいで、しょっちゅうイザコザに巻き込まれる。そんな時に、やりたくはないのだが、オレの能力を使ってしまうのだ。


 オレの能力は爆弾だ。骨を爆弾に変えて爆発させることができる。場合によっては、相手が死んでしまうこともある。オレに危害を加えなければ、そんなことはしない。オレは特にやばい組織に属しているわけではない。いつだって、一匹狼だ。


 オレの日常は、個人事業主のプログラマーだ。ネットで注文を受けて、ユーザーの要求にあったプログラムを作成し、納期通りに納品する。まあ、そんな感じだ。なんとか、月に30万円程の収入があるんで、やっていける。だから、たいがい、自分の部屋での作業が多い。でも、たまには環境を変えて、作業したくなるんで、喫茶店へ行ってみたり、ハンバーガー屋さんだったり、図書館だったり、天気がいいときは、公園でも作業することがある。


 今やっている仕事の納期はまあ長いので、のんびりやっている。今日はファミレスで昼食をとり、コーヒーを飲みながら、パソコンを叩いている。システムの設計は頭の中に入っているから、調子がいいと、どんどん手だけが動いてくれる。


 3時頃になると、主婦の連中が多くなってくる。つまり、小さな子供たちも多いってことだ。それに、まだ早いとは思うけど、高校生たちも増えてくる。そろそろ、場所を変えてやらないと落ち着かなくなってきた。


 突然、子供のけたたましい鳴き声がした。見ると、地面に伏せて泣いている。頭を抑えているところを見ると、机の角にでもぶつけたんだろう。その子のお母さんが飛んできた。なんだ?!あんなに遠くに座っていたのか。ちゅうことは、全然、子供を見てなかったんだろうな。その子の傍には、男子高校生の連中が座っていた。


「あんたたち、うちの子に何をしたの?」

「はぁ?」

「警察に突き出してやる。」

「オレら、何もしてないですよ。」

「うそおっしゃい、いい加減なこと言わないで。」

最近の親は井戸端会議に夢中になって、子供をほったらかしにして、子供が泣くと、人のせいにするんだよな。困ったもんだ。

「だから、オレたち何もしてないって。」

「うちの子の頭が腫れてるじゃないの。」

「走ってきて机の角にぶつけたんじゃないですか。」

「いい加減なこと言って。」


 まあ、あんまり真面目そうな高校生じゃないけど、それが正論だろうな。でも、母親は自分が悪いとは絶対言わない。激しくヒステリックになって、どんどん声が大きくなってきた。しゃーないな、オレが第三者として、仲裁してやっかな。


「その子、走ってきて、カーブを曲がるときに机の角に頭ぶつけたんですよ。」

「な、なによ、あんた。」

「あなたが、あまりにいい加減なこと言ってるので、事実関係をお話しとこと思いまして。」

「勝手に割り込まないでよ。」

「だいたい、話に夢中になって、子供をほったらかしにしてたのは、どなたでしょうね?」

「か、関係ないじゃない。」

「グダグダ言ってないで、子供の頭に絆創膏でも貼ったらどうですか。」

「ふん。」

母親は子供を連れて、自分の席に戻っていった。


「ありがとうございました。」

「君たちは悪くないのに、勝手に加害者にされちゃあ、困っちゃうよな。」

「はい。」

見た目より素直な高校生でよかった。


 だけど、その矢先だった。オレはパソコンを閉じて、カバンに入れようとした時、その高校生の1人が、いきなり、オレのパソコンを掴んで走って逃げた。

「えっ?」

まさか、この子たちがそんなことをするなんて思いもよらなかったので、オレは呆然とした。その隙に、残りの高校生も走り出した。


 やられた!オレの仕事が満載のパソコンを盗まれた。オレも追いかけたが、奴らの方が圧倒的に早い。だめだ、絶対に追いつかない。仕方がない。オレは一番遅い高校生の足の指を爆破した。こういう言い方をしたら、片足が吹っ飛んだみたいに聞こえるがそうじゃない。指の骨の一部を爆弾化して、破裂させたのだ。といっても、外見からは血もでていないからわからないけど、皮膚は青くなっている。その程度だ。でも、これで、もう走れやしない。


 オレはそいつを捕まえた。

「運が悪かったな。オレのパソコンを返してもらおうか。」

「いて~!」

「そりゃ痛いだろう。当分、まともに歩けないからな。オレのパソコンを持って行ったやつを呼びだせ。」

だけど、その高校生は激痛で、それどころじゃなかったみたいだ。

「早くしろ。」

そう言っているところに、連中が戻ってきた。




(つづく)




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2021年12月02日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第2話

「おっさん、そいつを離せ。」

「じゃ、オレのパソコンを返せ。」

「ちぇ。」

素直にオレのパソコンを手渡した。

「せっかく、あの母親から守ってやったのに、こんなことするなんてな。」

「うるせえや。」

「足・・・どうしたんや。このおっさんにやられたんか?」

「オレは何もしてないぞ。」

「嘘つくな、立てないやんか。」

高校生たちはオレを取り囲んだ。まいったな。またかよ。こうなったら、何を言っても無駄なのはわかっている。仕方ないから、オレに殴りかかってきたヤツから、足の骨を爆破。オレに倒れ込んできた連中を避けた。

「えっ、みんなどうしたんだ?」

そりゃそうだろ、倒れた連中は激痛に顔をゆがめている。少なくとも、そんな状態になっても攻撃してくるヤツはいない。

「オレは何もしてないぞ。」

「うそつけ、何をしたんだ?」

「だから、何もしてないって。自分でつまづいたんだろ。」

オレは、連中を尻目にパソコンを鞄にしまって、さっきのファミレスへ戻って行った。

店員さんのところに行って、高校生たちの分と、オレの分の精算をした。まあ、これくらいはいいでしょ。あの高校生たちは、当分、まともに歩けないだろうな。


 オレは仕事の打合せをした帰り、ふと路地から声が聞こえたんで、見ると、数人の男が見えた。多分、止めといたらいいのはわかっていたけど、どうも目がそっちを向いてしまった。

「こらぁ、何、見とんのや。」

いきなり、大声が聞こえた。また、やってもぉた。若いヤンキー風の男が走ってきて、オレに掴みかかった。

「何も見てないですよ。」

「嘘つけ、こっちこいや。」

やれやれ、困ったもんだ。オレは引っ張られてその場所につれていかれた。

「お兄さんよ、出すもん出したら、帰んな。」

オレより先に鴨にされていた男がいたが、かなりやられていたみたいで、口から血が見えた。

「いえいえ、オレは何も持ってないっすよ。」

「何ふざけてんだ、あ~?」


 仕方ない。相手は3人。オレに掴みかかってきたヤツの腕を爆破。肘がぶらんとしちゃった。

「おまえ、何した?」

「いえ、何もしてないっすよ。」

1人が刃物を抜いた。オレはすかさず、刃物を持つ手を爆破。指が全部吹き飛んだ。そいつはうずくまった。

「もう、やめましょうよ。」

「おまえ、堅気じゃねえな?」

「いや、暴力団ちゃうし。」

最後の男の膝を爆破。

 やられていた男を立たせて、オレはその路地から出た。通りに出たところで、その男と別れた。散々、お礼を言われたけど、オレは何もしてない。見た目にはね。


 オレがコンビニに寄った帰りだった。店を出ると、女の子が2人の男に絡まれていた。まただ。困ったもんだ。

「君たち、その子嫌がってるだろ?」

「なんだ?おっさん。」

おっさんか、オレ、やっぱりもうおっさんなのかもね。

「こっちおいで。」

「邪魔すんのか?」

「だって、嫌がってるじゃないか。」

「うるせい。」

またいつものように、オレに殴り掛かってきた。オレはその拳骨の小指を爆破。男はそのまま拳を抱えて、うずくまった。それを見て、もう1人は小さな刃物を出した。

「きゃあ~。」

女の子が叫んだから、男はびっくりして走って逃げた。

「ありがとう、助かったよ。」

「いえ、私こそ、ありがとうございます。」

「じゃ、これで。」

オレはその場から去ろうとした。

「あ、あの。」

オレは聞こえていたが、聞こえない振りをした。あんまり、関わらない方がいい。しらん顔した。前にもこういうケースの場合、調子に乗ってそんな女の子に付き合うと、今度は美人局的なヤツが現れたこともあったからな。オレはこんなことに巻き込まれることが、ほんとに多い。どうなっているだろうな。


 まあ、しばらくは仕事に追われて、どこにも出れなかった。食材も尽きてきたんで、仕方なしに買い出しに出かけた。スーパーでたくさんの食材を購入、両手に持ちきれんくらい買いまくった。たまに、こういうところにくると、あれもこれも買いたくなるもんだ。くるまでもあれば、もっとたくさん買うんだろうけどな。だけど、買い過ぎたかも。オレは、休み、休み、帰途に着いた。




(つづく)



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2021年12月03日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第3話

「お手伝いしましょうか?」

突然、後ろから女の声が聞こえた。振り返ると、若い子が立っていた。

「いえ、大丈夫です。」

オレがそのまま行こうとすると、無理やり、オレから2袋分の荷物を奪って、オレの横について歩き出した。仕方ない、お礼を言わなくちゃな。

「ありがとう。」

「いいえ、この前のお礼です。」

ん?この前?あ、コンビニの・・・思い出した。

「あの時の・・・」

「そうです、片桐明子って言います。あの、お名前伺ってもいいですか?」

「小林渉です。」

「わたるさん・・・」

彼女の顔がなんか、優しい色に染まった感じがした。まいったな。オレのどこに魅力があるんだろうか。そんなに長い道のりじゃないのに、なんか長く感じた。

「あ、もうここでいいよ。」

「家まで、お持ちします。」

困ったな、これじゃ、コーヒーでも御馳走しないといけなくなるだろ。


「ここがオレんち。持ってくれて、ありがとう。」

「はい、どうぞ。じゃ・・・」

「よかったら、コーヒーでも?」

「あ、ありがとうございます。」

オレは彼女を家に上げた。

「へえ、感じのいいお部屋ですね。」

「男1人だから、汚いよ。」

「そんなことないですよ、綺麗にされてますよ。」

「あ、そこに座って。」

「はい。」

オレは、買ってきたばかりのコーヒー豆を引いた。やはり、いい匂いだ。

「いい匂い。」

彼女もその匂いが好きみたいだ。

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

「あの、わたるサンは、何のお仕事をされているんですか?」

やっぱ、聞いてくるか。

「プログラマーだよ。」

「すごいんですね。」

「たいしたことないさ。」

「私は事務してます。」

そこから彼女は自分のことを話出した。オレはほぼ聞き役に徹した。彼女は23歳、社会人2年目で、1人住まい、彼氏はいない。実家は両親がいて、兄弟はいない。まあ、そんなことどうでもいいんだけど。オレは仕事の続きが気になった。


「あの、悪いんだけど、そろそろ仕事があるんで。」

「ごめんなさい、1人でしゃべってましたね。」

「すまないね。」

「いえ、長居してごめんなさい。」

「じゃ。」

「あの、また、会えます?」

「そうだね。」

オレは、彼女を追い出すように、帰ってもらった。なんか、あの子、しつこくまた来そうだな。ちょっと親切にすると、勘違いされてしまう。困ったもんだ。そんなことより、今はこのプログラムを完成させてしまわないと。


 どうも納期に追われる仕事は、24時間勤務になったりする。かなり余裕を持って、受注したいものだ。ようやく、納品も終わり、ちょっとの間の休暇だ。そう思ったのも束の間、玄関のベルが鳴った。インタホーンの画面を見ると、片桐さんだ。そりゃ、オレんち、知ってるから、来るよな。

「はい。」

「あ、片桐です。」

「何か?」

「美味しいケーキを買ったんで、一緒にどうかなって思って。」

なんで?なんで、そうするかな。

「わかりました、ちょっと待って下さい。」

無下に断ることもできないし、ちょっとだけだぞ、オレ。だけど、やっぱ、教えるんじゃなかったな。


 オレは明子さんを部屋に上げて、テーブルに座ってもらった。

「コーヒー入れますね。」

「ありがとうございます。」

絶対にこれまでにすべきだ。

「とっても美味しいケーキのお店に偶然入れたんで、ラッキーでした。」

「・・・」

「あ、わたるサンは甘いもの大丈夫ですか?・・・なんて、今頃聞くなんて、私ってバカですよね。」

1人で言って、1人で完結するか。

「まあ、たまには食べますよ。」

「よかったぁ。」

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

この子はなんで、オレなんかに寄ってくるんだろうか。オレはトラブル・アトラクターだから、絶対に彼女は巻き込まれてしまうだろう。そうなると、助けられるかどうか、わからない。早々に縁を切らないとだめだ。




(つづく)


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2021年12月04日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第4話

「わたるサンは、彼女、いるんですか?」

「オレは1人が好きなんだ。」

「でも、一緒にいると楽しいですよ。」

「だから、1人が好きなんだ。」

「あ、ごめんなさい。」

「・・・」

「私、わたるサンが好きなんです。だから、私と付き合ってもらえませんか?」

「それは、無理。」

「やっぱり、好みじゃないですか?」

「そんなことじゃなくて、・・・」

「じゃ、お願いします。」

「だから、無理なんだって。」

「どうしてですか?」

まいったな。こんな時は、嘘ついて、あしらった方がいいんだろうけど、オレは嘘つくのが下手だから、困る。正直に言うか。

「オレはトラブル・アトラクターだから、君を危険にさらしてしまうんだ。」

「アトラクターって?何ですかそれ?」

「要は、トラブルを引き寄せる人のことだよ。」

「でも、過去がそうでも、これからはわからないじゃないですか?」

「君は死にたいの?」

「そんな・・・」

「自分のことは自分で守れる。でも、君のことを守れる余裕がない。オレの傍にいるということは、死の傍にいるっていうことだ。」

「意味、わからないです。そんなこと。」

まあ、そうだろうな。なんのことかわからないだろうな。オレからトラブルに引き寄せることもあるけど、トラブルから寄ってくることもある。そんな時に、自分だけで精一杯のことが多いんだ。


「わからなくて、結構。さあ、食べたら、帰ってくれ。」

「そんな、ひどい。」

「そうだ、オレはひどいヤツだから、あきらめてくれたらいい。」

「いいえ、本当は優しい人です。だって、私を助けてくれたじゃないですか?」

まいったな。

「ああ、あれは気まぐれだ。」

「わたるサンから感じるのは、優しさです。」

なんなんだ?この子は。

「とにかく、帰ってくれ。で、二度と来ないでくれ。」

「いいえ、また、来ます。もっと、わたるサンのこと知りたいです。」

オレが人殺しでもか。今までに、オレは何人も殺してきた。ケガを負わすなんて、しょっちゅうだ。


 そういえば、トラブルだけじゃなく、ある種の女はオレに興味を示す。面倒臭いだけだ。だから、オレは女に特殊な感情を抱かないようにしている。後々、面倒になるだけだからな。


 仕事の打合せの帰り、銀行に寄った。たまには通帳の記帳も必要だ。まあ、十分あるんで気にはしてないけど、個人事業主としては、やっておかないと後々面倒だからな。


 オレが順番待ちをしていると、数人の男たちが入ってきた。またか。

「ドア閉めろ。」

バァン。いきなり、拳銃の音が響いた。空砲じゃない、マジだ。

「みんな、伏せろ。早くしろ。」

「おっと、ベルなんか押したら命なくなるよ。」

「金をこのバッグに詰めろ。」

とにかく、この場をやり過ごしたら、解放されるだろうと、オレは思った。が、事情は変わってきた。銀行マンの誰かが、ベルを即座に押したみたいだった。それが、犯人にわかってしまったみたいだ。


「てめ~、押したな。」

バァン。いきなり、1人の銀行マンが打たれた。その瞬間、悲鳴が上がった。仕方がない。オレは犯人の人数を確認した。4人だ。みんな被り物をしているから、顔はわからない。拳銃を持っているのは・・・2人。あとは、刃物を持っている。

「早く、詰めろってんだ。何やってる。」

かなり、焦っているみたいだな。

「遅いと、また、死ぬよ。」

コイツ、なんか冷静。3人はひどく焦っているけど、1人だけ、冷静なヤツがいる。こういのが、一番厄介だ。

「早くしてね。あと30秒でまた撃つよ。」

「は、はい。」

女性の行員は、手が震えている。だから、なかなかカバンに入れれない。

「あと、10秒です。」

女性行員はもっと、震え出した。

「タイムアップ!」

バァン。男の行員が撃たれた。今度は頭に当たったみたいだ。こりゃ、即死だな。




(つづく)


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2021年12月05日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第5話

「おい、おまえ。」

その冷静な犯人と目が合ってしまった。やばいなぁ。

「お前だよ。立てよ。」

仕方ないから、立ち上がった。

「なんか、お前、やけに冷静じゃん。」

「あんたもね。」

あっ、余計なこと、言っちゃった。

「おもしれぇ。」

「あと、30秒で、コイツ、殺すよ。だから、早く詰めてね。」

ついにオレがターゲットか。仕方ない、やるか。オレは、この冷静なヤツの両腕の骨を、爆弾に変えた。残りの3人は、片足を爆弾にした。

「あと、10秒だよ。早くしてね。」

周りのお客は、みんな震えあがって顔を伏せている。と、遠くからサイレンが聞こえてきた。警察、遅いよ。

「はい、時間切れです。」

ソイツが引き金を引く前に、オレは爆破した。両腕は木っ端微塵に砕け散った。傍にいたオレも血だらけだ。残りの3人も爆破。周りは血だらけだ。伏せていた客の手元に、手や足が飛び散っている。それを見たお客は、この世とは思えない叫び声を上げている。卒倒してしまった人もいる。オレは、冷静だったヤツを見て、ニヤリと笑った。ソイツもオレの仕業だと悟ったみたいだ。

「これは、どういうことだ?」

「さあな。」


 しばらくして、警察が踏み込んできた。銀行マンの説明で、犯人連中は救急車で運ばれて行った。血だらけのオレも救急車にと言われたが、なんともないと言って、断った。結局、行員1人が死に、2人が重症で、犯人は4人とも、めっちゃ重症ということだった。これから、一生、不自由な生活が待っているということだ。死ななかったことだけ、幸いと思ってほしいもんだ。


 オレの血だらけの姿が、報道の中にあったらしい。明子さんが来た。

「わたるサン、大丈夫なんですか?」

「ああ、なんともないよ。だから、トラブル・アトラクターだと言ったろ?」

「・・・」

「帰りな。」

オレは玄関越しに明子さんを追い返した。もう、来ないだろう。それがいい。


 しばらくして、警察が来た。

「犯人の1人が、自分たちの手や足が爆発したのは、あなたの仕業だというんです。」

「オレはほかのお客と同じで、たまたま居合わせただけですよ。」

「それはわかるんですが、犯人の一番傍にいたんですよね。」

「それに、次に殺されるかも知れない状況だったんですよね。」

他のお客の証言かもしれないな。

「確かに、その通りです。でも、それでどうやって爆破するんです?」

「そうなんですよね。でも、犯人の言うことも、まんざら嘘だと思えないんです。」

「オレは爆弾なんか持ってないですよ。」

「ですよね。」

まあ、長々と同じ話の繰り返しになったが、オレはお役御免となった。どんなに防犯カメラを確認してもらっても、オレがやったという証拠はどこにもない。


 ただ、面倒臭いのは、オレがトラブル・アトラクターだということだ。今までもこういう場面に何回も出くわしている。だから、警察もオレに疑問を持っている。多分、「また、コイツか!」と思っているに違いない。


 警察も一回じゃ終わらない。オレはまた呼び出しを受けた。

「何度、質問されても同じですよ。」

「なんで銀行にいたんだ?」

「だから、記帳ですよ。個人事業主ということはご存じですよね。」

「じゃ、なぜ、犯人に標的にされていたんだ?」

「そんなことはオレにもわかりませんよ。犯人に聞いて下さいよ。」

「君と目が合って、笑っていたと言ってたよ。どういうことなんだ?」

「確かに、目が合ったように思いますが、笑ってないですよ。」

「ほんとにいつも君は、事件の時にいるね。」

「オレもなんでそうなるのか、わかりませんよ。」

「君も犯人の一味じゃないの?」

「違いますよ。本当にたまたまなんです。」

まいったな。まあ、相変わらずだけどな。

「犯人はみんな腕や足が、まるで破裂しているんだ。いままでの事件と同じだ。」

「不思議ですね。」

「おかしいだろ?君が関係している事件はみんな、犯人が手や足を失っているんだ。」

「そんなん、オレも知りませんよ。」

「どうしてなんだ?」

「だから、知らないって言ってるでしょ?」

「こんな不思議な事件は、今までなかった。だけど、君がいるときにだけ、そんなことが起こるのはなぜなんだ?」

「知らないことを、どうやって答えるんです?」

「君は犯人の手や足をなんらかの方法で破裂させ、事件を解決させているんじゃないか?」

まあ、当たりだけどね。

「どんな方法で?破裂って、医者が言ってるんですか?」

「君は知ってるんじゃないのか?」

「どんなふうにです?オレは破裂させるための何かなんて、持ってないですよ。調べてもいいですよ。」

「う、う、もういい。わかった。帰っていいよ。」

まあ、そんなもんでしょ。




(つづく)


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