2021年12月25日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第25話

 しばらく、ここオレんちにマリアも同居することになった。マリアの国はペルーということだけど、どんだけ遠いんだ。

「テレビ電話あるけど?」

「そっか。」

向こうの時間を考え、電話した。

「マリア、長いこと連絡なかったけど、元気にしてるの?今はどこにいるの?」

マリアのおかあさんだ。

「今は日本にいるの。」

「日本?あんた、ヨーロッパじゃなかったの?」

「でね、結婚するのよ。」

「結婚?」

「そう、彼がワタル。」

オレを映した。

「ワタルね、いい男じゃない。」

「結婚式はこっちに帰ってくるのよね。」

「ちゃんと帰るわよ。」

「仕事はどうするの?」

「こっちで探すわ。」

「まあ、マリアが幸せならそれでいいわ。」

「ありがとう。」

まあ、オレはさっぱりわからなかったけどな。あとで聞いたが、そんなことを話していたらしい。


 オレは例の居酒屋をマリアを連れていった。

「おっ、久しぶり。」

「大将、こんばんわ。」

「そちらさんは?」

「彼女さんです。」

「どこの人?」

「ペルーです。」

「マリアって言います。よろしくです。」

「お、日本語いけるの?」

「大丈夫です。」

「じゃ、いつもの3人前で。」

「えっ?」

「3人前でお願いします。」

「わかりました。」

まあ、マリアに日本の味を堪能してもらわないとな。それも2人前ほど。いい感じに食し、日本酒も味わって、ほろ酔いのオレのところに、知っている人物がやってきた。


「久しぶり、小林クン。」

「前田さん。」

「どうしてたんだ、全然姿見えなったな。」

「海外旅行してたんで。」

「だよな、あんだけ、派手にインタビュー受けてたんだかからな。」

やっぱり、ばれてた。

「ワタル、この人は?」

「警察の前田さんだ。」

「こちらは、これから私の奥さんになるマリアです。」

その言葉にマリアが反応した。めっちゃうれしそう。

「マリアです。よろしく。・・・えっ、警察?」

「結婚すんの?」

「はい。」

「ワタル、警察の人と知り合いなの?」

「ああ。」

「前田さん、私、ペルーの警察官です。」

「そうなんだ。強そうだもんね。」

「毎日、トレーニングしてるもんな。」

「日本の警察、入りたいです。」

おいおい、そうだったのか。

「確かに募集してるけど、オレにはわからないから、一度、おいでよ。」

「はい。」

マリア、警察するんか。オレと長野か北海道へ移住する話はどうする?一度、話したことをオレはそのつもりになったいた。


 家に帰ってから、オレはマリアに聞いた。

「日本の警察に入りたいん?」

「ぜひ。」

「そっか、オレはスイスで見た光景を、日本でマリアと楽しみたかったんだけどな。」

「行くわよ。」

「だけど、警察は?」

「どこだって、あるでしょう?」

「確かに。」

その通りだ。

「じゃ、長野、行ってみようか。」

「賛成。」

マリアはにっこりした。長野といっても、どこら辺がスイスに近いのかな。オレはいろいろ調べて、K市にいくことにした。そこから、レンタカーで山の方に登っていくと、スイスに似た光景を目の当たりにすることができるらしい。




(つづく)





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2021年12月24日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第24話

 もう何度目なんだろうか。こうして病院で目覚めるのは。横に座ったマリアが寝てる。長いこと、そばにおってくれたんだろうな。

「よう、マリア。朝だよ。」

「えっ、ワタル、目覚めたの。よかった。」

マリアの目から涙が流れた。本当にオレは、いつトラブル・アトラクターから卒業できるんだろうか。オレはマリアの熱い唇を受け止め、もう大丈夫だと言った。


 オレが気を失っている間に、マリアは、オレのからだを見た看護師や医師に、この人、兵士?って何度も聞かれたらしい。まあ、一般人ではありえないほどのキズが残ってるもんな。

「マリア、オレがトラブル・アトラクターってわかったろ?もう止めといてもいいんだぜ。」

「大丈夫、すべて受け止めるから。」

さすが、警察官。そういえば、オレが撃たれた時、しっかり止血してくれていたらしい。そんな知識も持っていたのか。


 結局、10日ほど足止めをくらって、ようやく、スイスを出発した。オレは、マリアの母国語を使っているスペインにいくことを提案した。同じラテン系なんで、マリアも楽しいだろうと思った。だが、マリアは日本に行きたいという。じゃ、ということで、日本行きの飛行機を手配した。

「マリアもペルーに帰らなくて大丈夫なのか?」

「大丈夫。」

いったい、いつまで休みなんだろうか。オレと違って、期限があると思うんだけど。


 日本行きの飛行機は、日本の航空会社だったので、乗務員は日本人が多かった。これで普通に話ができる。んっ、マリアとだって普通に日本語で話をしてたんだよな、オレ。マリアの荷物は機内持ち込みできなかったので、身軽になったみたいだ。飛行機の中でも、マリアはお構いなしにキスをしてくるし、抱き着てくる。乗務員はニッコリ微笑んでいたが、いい加減にして!って思ってるに違いない。

「もしかして、ご夫婦ですか?」

となりの日本人の年配のご婦人が聞いてきた。

「ええ。」

おい、マリア、結婚なんかしてないぞ。

「いいわねぇ。」

「ありがとう。」

「最近は国際結婚も多いですもんね。」

「はい。」


 オレはかおりちゃんの行きたかったヨーロッパに傷心旅行に出かけたはずが、マリアと一緒に帰ってくることになった。やっぱ、かおりちゃんが仕掛けたことかな?そんなことを思いながら、日本に帰ってきた。


「日本ね。」

「そうだ、じゃ、とにかく、荷物をオレんちに置きに行こうか。」

「ええ。」

空港から2時間近くかかったが、久しぶりの我が家だ。

「ワタルの家ね。」

「そうだよ、上がれよ。あ、靴はぬいでね。」

「了解。」

オレは久しぶりに。コーヒー豆をゴリゴリやりはじめた。

「う~ん、いい匂い。」

マリアもうれしそうだ。ゆっくり、お湯を注いで、我が家流のコーヒーの出来上がりだ。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

「わたし、このコーヒーずっと飲んでたいな。」

「そういえば、飛行機の中で、夫婦だっていってよな。」

「だって、あれは・・・」

「いいよ。」

「えっ?」

「だから、OKだよ。」

「ワタル、ほんとに?」

「ああ。」

「大好き。」

マリアの恐るべき筋肉がオレに抱き着いてきた。オレたちは熱いキスを交わした。




(つづく)


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2021年12月23日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第23話

「ところで、マリアは何歳なん?」

「私?29歳だよ。ワタルは?」

「オレ、32歳。」

「私の方が下なんだ。」

でも、身長は上だけどな。どうみても、180近いと思う。オレは176だから、それ以上だもんな。まあ、マリアはあまり気にしてるような感じじゃない。マリアは朝から結構食べる。それにしても、いつトレーニングしてるんだろう。

「だけど、いつトレーニングするん?」

「適当にやってるから、気にしないで。」

「そっか。」


 オレたちは、スイスへいくことにした。マリアは自分の荷物をオレに触らせない。なんでなんだろうと思ってはいたが、オレに荷物だけでも重いのに、一緒に持つことになったら、大変だから、自分で持ってくれた方がいいと思っていた。駅で、切符を買う間、ちょっと荷物から目が離した瞬間、また、チンピラが荷物を盗もうとしたらしい。だが、マリアのリュックは盗めなかった。やせこけたチンピラは、そのリュックが持てなかったようだ。

「私のリュックは持てないわよ。」

「なんで?」

「持ってみる?」

オレはマリアのリュックを持ってみた。なんだ?これ?めっちゃ、重い。どうなってるんだ?

「おもりが入ってるの。全部で、50kg。」

トレーニングってこれか。足腰が強くなるわけだ。腕には5kgづつのおもりを巻いていた。マリアの荷物を持ってあげようなんて気になったら、自滅してるわ。


 列車の中から見える山々の景色は最高だ。目の保養になる。マリアは完全にオレの彼女になっている。すぐにキスしてくるし、抱き着いてくる。まあ、コンパートメントだから、2人だけの空間なんで、問題はないけどね。だけど、途中から混んできて、2人だけの空間でなくなっても、その態度はかわらない。日本人のオレにはかなり恥ずかしいのだから、困ったもんだ。でも、オレたちを見ている、他の客は微笑ましそうな顔をしている。ヨーロッパなら、これが一般的なのかもしれない。


 スイスは、ほんと綺麗な山々が広がって、空気は澄んでいた、

「いい場所ね。」

「ほんとだ。もしかして、日本にも同じような場所があるかも。」

「いいなあ。やっぱり、ワタルと行きたい。」

「でも、オレが住んでいるのは都会だから、こんな景色は見えないよ。」

「引っ越したらいいんじゃない?」

「そうだな。」

考えてみれば、オレの仕事は都会でやる必要なんかなかった。顧客との打合せもオンラインでやればいい話だし、あとは全部メールに電話だ。帰ったら、長野とか、北海道とか、もっと自然豊なところで住むこともかんがえようか。


 オレたちは、もう少し山の方へ出かけてみた。日本でいう高山列車かな、これもなんかレトロでいい感じだ。さすがに寒くなってきた。マリアがくっついてるので、暖かい。マリアもそのようだ。駅に着く前にもう一枚着込んで、外に降り立った。多少、ガスが出てたけど、やっぱり、風景は最高だ。しばし、マリアと一緒に風景を楽しんだ。


 町へ戻ったオレたちは、レストランに入った。今日はここでゆっくりする。マリアはすでに予約していた宿をキャンセルして、この町のホテルに予約をいれてくれた。楽しい食事の時間が終盤に差し掛かった時、オレはトラブル・アトラクターだということを思い知らされた。


 突然、店に大きなくるまが突っ込んできた。窓際にいた客が飛ばされ、ひかれた。オレたちは奥の方にいたので、何事なんだとそちらの方を見た。くるまから3人の男が降りてきて、またもや乱射。オレはマリアをかばって、机の下へ隠れた。そこから、犯人を確認し、肩の骨を破壊、残る2人は肘を破壊。

「マリア、大丈夫か?」

「私は大丈夫。でも・・・」

「なんだ?」

「ワタル、血が・・・」

オレは気が付かなかったが、1発の銃弾がしっかりオレの脇腹を貫通していた。またか。それに気が付いたとたん、なんだか気が遠くなった。

「マリア、これでお別れかもな。」

「そんなこと言わないで、ワタル。」

だんだん、気が遠くなる途中で、サイレンを聞いた。なんとか、間に合うかな。




(つづく)



posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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