2021年12月22日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第22話

 そんなこんなで、オレはしっかり、報道されることになった。偶然居合わせたということなんだけどね。

「ワタルは本当にトラブルに出会うね。」

「だから言ったろ。危ないって。」

「ますます、ワタルと一緒に居たくなったわ。」

「まいったな。」

かなり長い時間を取られたもんで、オレたちは宿を探してと思ったけど、マリアがすでに部屋を押さえているということなので、オレはそれに便乗することになった。


「マリア、悪いね。」

「いいのよ。全然、2人でも泊まれるし。」

なんか昼飯を食べそびれたこともあって、お腹が空いたし、ホテルの近所のレストランへ向かった。と言っても、オレは少食だけど、マリアはしっかり食べる。その食欲に目を見張るばかりだ。ワインも好きみたいで、1人で軽く1本は空けてしまった。オレはチビリチビリ、ようやく1杯目を飲み終えたくらいだった。

「ワタル、そんな少しでよくもつね。」

いやいや、マリアが食べすぎだろ。

「これくらいで十分なんだ。」

「省エネってやつね。私は、アメ車かな。」

「まあ、オレのペースで頂くよ。」

「ごめんね、私が早くって。」

「気にするなって。」

「ありがとう。」

しばらく、マリアと楽しく会話をして、そろそろホテルへ行こうということになった。マリアが予約しているホテルはそこからすぐだった。マリアがチェックインをして、その部屋に向かった。

部屋に入ると、広いが・・・ダブルベット??

「これなら、ワタルも一緒に寝れるでしょ。」

確かにそうだが、今までのマリアの行動やその体格を見てると、これは完全に襲われるということかもしれない。これも、オレにとってはトラブル・・・かも。そう思った矢先、オレはマリアに襲われた。いきなり、抱きしめられ、キスをされ、ベットに押し倒された。そうだよな、こういう部屋にノコノコついて行ったオレは、こうなっても仕方ないんだろうな。別にマリアが嫌いな訳じゃなかった。こんな急展開を迎えるなんて、思ってなかっただけだった。


「ワタルと体の相性もいいみたい。」

「オレもだよ。」

「このまま付き合っちゃう?」

「ああ。」

そういうと、元気なマリアは、また、オレを襲ってきた。だが、今度はオレが襲い返してやった。


「ねえ、私、日本へ行きたい。」

「いいよ、おいでよ。」

「ほんと?」

「ああ。オレがいろいろ、案内してやるよ。」

と言っても、マリアは日本語喋れるし、1人旅でも不自由することはないだろうな。

「そういう意味じゃなくって・・・」

どういう意味なんだ?

「ん?」

「まあ、いいか。」

よくわからんけど、いいなら、いいか。その後、一緒にシャワーを浴びた。

「ワタル、ここすごいキズ。これは弾の跡ね。」

「いろんなトラブルで負ったキズだよ。」

「お腹のこれ、やばいね。」

「ああ、それは、えぐられた時のやつだ。」

「えぐられた?」

「そう。」

「よく死ななかったね。」

「オレもそう思うよ。」

「だけど、あんなふうに腕が吹っ飛ぶなんて、初めて見たわ。」

「なんか知らんけど、オレのまわりであんなことが起こるみたいなんだ。」

「え、ワタルのまわりで?」

「だから、オレを守ってるゴーストか何かが、やっているのかな?って思ってる。」

「すっご~い。そんなことあるんだ。」

「あくまで、推測だよ。」

「うんうん。」

まあ、いい加減な話だ。全然、そんなことはないのだ。全部、オレがやってるんだから。


 しっかし、マリアは女性らしい柔らかさと、鍛え上げられた筋肉質をあわせもったいいからだをしてる。どんなトレーニングをすれば、こうなるんだろう。まあ、職業柄だから、こうなったんだろう。マリアはオレに抱き着いて寝た。案外、腕は重い。オレ、寝れるんだろうか。


 翌日、オレはしっかり寝てたことを自覚した。何も問題なかった。

「ブレックファースト、行こうよ。」

「OK。」

ホテルの朝食はどこも同じような感じだ。適当に好きなものを取ってきて、食べる。飲み物も自由に頂ける。

「今日はどこへ行こうか?」

「オレとしては、スイスへ行きたいんだけど、どうかな?」

「賛成。」

あっさり、OKしてくるな。

「ところで、マリアはいつまで休みなん?」

「いつまででも。」

「仕事、大丈夫なん?」

「うん。」

いったい、どういうことなんだろう?よくわからん。

「どういうことなん?」

「ワタルと同じでいい。」

さっぱり、意味がわからん。

「意味がわからないんだけど?」

「だから、ワタルと行動したいから、仕事はどうでもいい。」

おいおい、そんなんでいいんか?まあ、それ以上は突っ込んで聞いてもオレには理解できないだろうから、聞くのを止めた。




(つづく)



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2021年12月21日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第21話

「あの人たち、手が痛そうだった。」

「そうだね。」

「なんでかしら。」

「オレにもさっぱり。」

でも、マリアはオレに何かを感じ取っているようだった。

「ワタル、何かしたでしょ?」

「見ての通りだよ。何もしなかったでしょ。」

「確かに見た目はね。でも・・・」

「何もないって。それに、オレはトラブル・アトラクターなんだ。オレの周りにはこんなことがしょっちゅう起こる。マリアとも駅に着くまでだね。それ以降は、別々に行動しよう。」

「何言ってるの?私、ワタルが気に入ったわ。トラブルが多い人、初めて。ワクワクする。」

はぁ?この人おかしいんかな。たいがい、怖いと思う人ばかりなのに。

「怖くないの?オレ自身も、何回も刺されてるし、撃たれてるんだよ、死んだ人もいる。」

「私は、そういうのが好きで、警察官になったのよ。この旅はワタルとずっと一緒に回りたい。」

まじか。そんな人、おるんや。

「かわってるねぇ。」

「そうかしら。」

「どうなっても、知らんよ。」

「大丈夫よ、自分のことは自分で守れる。」

頼もしいねぇ。


 目的のウィーンに着くと、腹ごしらえをするために、大学へ行った。ヨーロッパは大学の学食を利用でき、結構格安らしい。

「ワタルはそんなことも知らなかったの?」

「まったくの田舎もんでしてね。あ、旅行の下調べは何もしてこなかったんだ。」

「田舎もん?」

「何も知らない人のこと。」

「わかったわ。」


 オレたちが学生に混じって、楽しく食事をしていると、覆面・武装した連中が飛び込んできた。いきなり、発砲してきた。またかよ。オレはマリアと安全な場所に身を隠した。犯人は何か叫んでいる。オレにはさっぱりわからない。でも、隙間から見える犯人を1人づづ、凶器を持つ手を爆破。腕が吹っ飛んでいく。オレから見える犯人はすべて、攻撃能力ゼロにした。まあ、悲惨だ。そこら中、血だらけ。腕が散乱している。撃たれた学生も横たわっている。最悪だ。残りの犯人はいないようだ。

「ワタル、どうなってんの?」

「オレにもわからん。」

「犯人はみんな、腕が飛んでるのよ。」

「だから、オレにもわからないって。」


 犯人たちは、過激派の武装勢力で、犯行声明文が掛かれた垂れ幕を持っていた。十数人の犯人全員、腕がちぎれている。撃たれた学生、数人が死に、数十人がケガをした。

「マリアはケガしてない?」

「私は大丈夫。」

「よかった。」

「心配してくれてるの?」

「まあ、友達だからな。」

「ワタル、優しい。」

思いっきり、抱きしめられた。マリアはオレより、ちょっと身長が高い。腕の太さもオレより太い感じだ。なんか、すごい筋肉の中にいる気がする。


 あとから来た警察にマリアは状況を説明していた。まあ、オレに聞かれても日本語でしか、説明できないもんな。かなり長いこと、マリアが説明していたので、オレもその場にいることになった。しばらくすると、日本語が聞こえてきた。

「ここが、銃撃された大学です。和やかな学食に何があったんでしょうか。」

ああ、日本のテレビか、なにかなんだろうな。だが、そのクルーの1人がオレを見つけ、走り寄ってきた。

「あの、日本の方でしょうか?」

「そうですけど。」

「この現場にいたんですか?」

「食事をしてました。」

「ということは、最初からいたというわけですね。」

「ええ、まあ。」

「テレビでインタビューいいでしょうか?」

「勘弁してよ。」

マリアがその様子を見て、にこやかに笑っている。

「いいんじゃない?」

「マリアまで、そう思うか?」

「お連れさんもそう言ってるんですから、お願いします。」

「わかったよ。」


 オレがこんなことでテレビ中継されるとは思わなかった。多分、テレビの連中も特ダネだんだろうけどな。待てよ、これが日本に報道されるということは、前田刑事も見るんだろうな。そしたら、やっぱ、オレだと思うだろうな。仕方がない。




(つづく)


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2021年12月20日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第20話

 さてと今日はどこへ行こうかな。とにかく、駅に向かった。気分的にオーストリアがいいと直感で思ったので、その方向の切符を買った。ホームで列車を待っていると、いきなりオレにぶつかったものがあった。

「ごめんなさい。」

オレは何語かわからなかったが、多分そんなことを言ってるんだと思った。見ると、背の高い、いい体格をした女の人だ。カートをオレにぶつけたようだった。何か、いっぱいしゃべっているが、さっぱりわからん。

「全然、わからん。」

思わず、つぶやいた。すると、向こうは驚いたようになのか、うれしそうなのか、こう言った。

「日本の方ですね。」

「えっ、日本語できるん?」

「はい、少し、習ってました。」

最近は、日本ブームなのか、日本好きな外国人が多いと聞く。彼女もたぶんそうなんだろう。

「お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。」

「よかったです。あの、どちらへいくんですか?」

このホームで待ってるということは、オーストリアだろ。

「ウィーンです。」

「うわ~お、私も同じです。ご一緒、いいですか?」

オレは1人旅のはずなのに、なんでこうなるかな。かおりちゃん、仕組んでる?断る訳にもいかず、オレたちは同じ列車に乗って、和気あいあいと話をすることになった。


「私、日本語話すの、久しぶりです。喋れてますか?」

「大丈夫です。喋れてますよ。」

「よかった。お名前、聞いてませんね。私、マリアと言います。」

こういう場合は苗字いらんよな。

「オレ、ワタルです。」

「ワタルですか。発音しやすくていい名前です。」

「何か、スポーツされてるんですか?」

「ん?」

「トレーニングしてますか?」

「おお、私、警察官です。毎日、トレーニングしてます。」

そういうことか。どうりで、筋肉隆々のチュンリーのような、ご立派な体格なわけだ。

「今は休暇中なんですか?」

「そうです、リフレッシュ中です。」

「ウィーンへは、知り合いがいるとか?」

「えっと、気の向く・・・」

「気の向くまま、風のふくままって、やつですか。」

「そうそう、その通りです。」

オレとおんなじじゃん。

「どこの国ですか?」

「私はペルーよ。」

南米か。ラテン系ってことだな。

「ワタルはどんな職業を?」

「えっと、フリーワーカーってところかな。」

「自由ってことね。」

「そうだ。」

なんか、この人、気が合いそうだな。オレは直感的にそう思った。しばらくは、楽しく話をしながら、風景をみながら、時間を過ごした。


 もうすぐ、途中の駅に差し掛かる時、オレたちのコンパートメントのドアが開いた。

「お、カップルか、いいねぇ。」

「うらやましいねぇ。」

オレには何がなんだか、わからない言葉で話をする2人の男が入ってきて、オレたちの隣に座った。マリアの顔がこわばっている。これは、またトラブルだなって思ったよ。男たちは刃物を取り出し、オレでも聞き取れる単語、「マネー」が入ったセンテンスを喋っている。マリアは、その男たちに何か喋っている。そして、オレにこう言った。

「あなたは日本語しか、喋れないって言ったから、私は通訳するって言ったのよ。」

「マリア、安心して。オレがなんとかするから。」

「いったいどうやって?」

「まあ、見ててよ。あ、お金は渡さなくていいからね。」

「刺されるわよ。」

「大丈夫だって。」


 すでに、オレは男たちの両手首の骨を爆弾化していた。オレが涼しい顔をしているのが気に食わないのか、1人の男が、刃物をオレに突きつけようとした。その瞬間、男は刃物を落とした。苦痛に歪んだ顔で手首を抱えた。マリアも、もう1人の男もあっけにとられている。我に帰った、もう1人の男がオレに襲い掛かってきた。だが、その瞬間も同じように、刃物を落とし、手首を抱え、顔は苦痛に歪んだ。


「オレたちを襲うなんて、100年早いんだよ。」

「いったい、何が起こったの?」

「さあ?」

列車が減速を始めた時、男たちはコンパートメントから逃げ出した。まもなく、駅員が来たので、マリアは事情を話し、刃物を受け渡した。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする