2021年12月16日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第16話

前田刑事か。ふと思い出した、彼に連絡を取ってみよう。

「もしもし、前田刑事ですか?」

「はい、あ、その声は、小林クンかな。」

「はい、お願いがあります。」

「どうした?まさか、今、例の状態なのか?」

「いえ、実は・・・」

オレは、今のオレの状態を話した。かおりちゃんのことも。

「だから、かおりを守ってほしいんです。」

「状況はわかった。だが、その取引現場にも警察を送り込まないとな。」

「わかりますが、くれぐれもかおりをお願いします。」

「わかった。」


 取引の日、オレは連中とその現場へ向かった。こちらの親分はニヤニヤが止まらないらしい。前回の状況をしっているからだろう。だが、今回は状況が変わっていたことに、オレも気が付かなかった。


 大きなカバンを受け渡しし、それぞれが中を確認したときだった。銃声が聞こえた。その直後、オレは何かに突かれたような衝撃を受け、すっころんだ。胸の当たりが熱い。見ると、服はもう真っ赤だった。オレが倒れてから銃撃戦になった。どれほどの弾が頭上を飛び交っただろう。


 そっか、オレの情報は相手にも伝わってたんだな。オレがいるから、またやられると思って先にオレを撃ったんだ。そう思ったとき、警察の突入があったみたいだ。もうそんなこと、もうどうでもいいや。オレはどんどん意識が遠のいていった。このまま、オレは死んでいくのだろうな。


 どれくらい経ったのかわからないけど、オレは目を覚ました。もう病院ってことは、すぐにわかった。何回も入院しているからね。とにかく、助かったんだということが、今回はうれしかった。ふと、見ると、誰かがオレのベッドに頭の乗せて寝ている。かおりちゃんだ。すぐにわかった。オレは軽く頭を撫でてやった。かおりちゃんも無事だったんだな。よかった。


「あ、起きたのね。よかったぁ。もう少しズレていたら、心臓だったのよ。」

「そっか、悪運も強いってことだよな。」

「付き合い始めた彼氏がこんなにも早く亡くなったら、ショックが大きすぎよ。」

「すまんかったね。」

「トラブル・アトラクターって言ってたもんね。あ、私もね、刑事さんに助けられたの。」

んっ?どういうことだ?

「病院に入院している振りして、私に危害を加えようとしてた人がいたのよ。」

なんでも、他から転院してきた人(=暴力団)が、かおりちゃんを見張っていて、オレが意にそぐわない行動にでたら、すぐにかおりちゃんを拉致しようとしていたらしい。で、拉致できない場合は、ヤッてしまえってことだったらしい。なんて連中だ。まあ、でもオレの頼みを聞いて、警官が潜入していたので、事なきを得たということだった。


「ワタルさんは、救急でこの病院に運ばれてきたの。私もちょうど救急外来で働いていたから、びっくりしたわ。血の気が引くって、初めて経験したのよ。」

「何度も、心臓止まるし、出血多量だったし、もうダメかと思ったけど、あなたは強い人ね。ちゃんと生還してくれたわ。」

「そうか。オレも今度ばかりはもうあかんかもって思ってたもんな。」

そこへ前田刑事さんが現れた。

「よう、生きとったな。」

「おかげさまで、なんとか。」

「この看護師さんが彼女?」

「はい。」

「どちらも助かってよかったよ。」

「お世話になりました。」

「この方がオレを助けてくれたんだ。」

「ありがとうございます。」

たくさんけが人が出ることを想定して、救急車も待機していたらしい。そのおかげで、オレは助かった。


 結局、暴力団からは、一銭ももらってない。まあ、あんなことでもらうと、ろくなことにならないだろうしな。それに今回のことで、オレのバックに警察がいることが広まったらしい。おかげで、トラブルに巻き込まれることが少なくなった。


「あれ以来、平穏ね。」

「ああ、なんか拍子抜けしてるけどね。」

「また、巻き込まれたいの?」

「いや、もういいよ。」

「そうでしょ?」

オレの体は、トラブルの度にキズだらけになってきた。もうそれも、勲章とは思えなくなってきている。今はかおりちゃんの勤務に合わせて、オレが休みをとるようにしている。


「さあ、明日から2日はお休みよ。」

「じゃ、今晩は外食いく?」

「うん、いくいく。」

ということで、オレたちはいつもの居酒屋へ。

「お、今日は彼女連れかい?」

「大将、いつもの2人前、頼むよ。」

「あいよ。」

「何、いつものって?」

「出てくれば、わかるよ。」

オレたちは大将の料理に舌鼓を打って、美味しいお酒を飲み、楽しい時間を過ごした。

「なんか、久しぶりに美味しかったぁ~。」

「そいつはよかった。」

オレたちは、ほろ酔い気分でオレんちへ向かっていた。ところが、オレたちの前に、いかにもっていう風体の2人組のチンピラが現れた。やっぱり、オレはトラブル・アトラクターなのだ。




(つづく)



posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月15日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第15話

「手荒なまねはしなかっただろうな。」

「オレはされなかったぜ。」

子分が言うより先に、オレが答えてやった。

「あんた、いい度胸だ。」

「オレになんの用だ?」

「あんた、相手の手足を吹っ飛ばすことができるそうじゃないか。」

なんで、こんな暴力団がそんなこと知ってるんだ?

「誰に聞いたかしらんけど、オレはそんなことできないよ。」

「今更、とぼけても無駄だ。あんたにやられた数人の連中から、裏は取れてるからな。」

そっか、そこまでやってるんなら、あんまり、とぼけられないな。

「わかった。じゃ、何が望みだ?」

「話が早い。まあ、言うなれば、打合せの立ち合いだ。」

そんな訳ないだろ。

「相手の連中が襲ってきたら、やっつけてくれってことか。」

「いいねぇ、話がわかるヤツは嫌いじゃない。」

「報酬は?」

「50だ。」

「いや、100だ。それに、こちらもケガをしない保障はないぜ。」

「どういうことだ。」

「いくら、オレが仕掛けても、相手が全員で発砲したら、間に合わないからな。」

「なるほど。」

「おかげでオレも何回も入院したんだ。」

「わかった。」

「それに、今回だけだぜ。」

「そいつは同意できねぇな。」

「なんでだ?」

「おまえにはこれからずっと付き合ってもらうからな。」

「オレは暴力団じゃないぜ。勘違いしてもらっちゃ困る。」

「必要な時の用心棒になってもらう。報酬はお前のいう通りでいい。」

暴力団の用心棒1回で100万か。

「わかった。オレ流のやり方でやらせてもらう。」

「よし、商談成立だな。早速だが、明後日のやり取りに立ち会ってもらうよ。」

「いきなりかい。まあ、いいや。」

そんなこんなで、オレは一旦帰された。といっても、オレを拉致した場所にだ。3時間近くも経ってるので、かなりお腹が減った。まだ、閉店じゃないはずだから、ちょっとだけ、お願いしよう。そう思って、大将の居酒屋へ行ったのだが、なんと、すでに終わっていた。あまりのショックにしばらく立ち尽くしていたが、仕方がない。オレはコンビニ弁当を片手に部屋に帰った。


 翌日、例の暴力団から連絡が入った。明日の打合せ場所と時間だ。もう嫌とは言えないし、いかなかったら、何されるかわからんしな。オレは今のうちにその場所に行ってみた。オレが隠れる場所なんかないじゃん。だけど、どんなことをするのか教えてもらわないと、タイミングとか、どうしていいのかわからないな。だけど、そのことについては、口が固かった。何かの取引だろうと推測したが、間違っていたらタイミングがずれるかもしれない。どうしようか。


 打合せにオレは、キャップと眼鏡、マスクをして行った。暴力団の親分の斜め後ろに立って、相手を見ることにした。こちらはオレをいれて5人。相手は、6人できた。オレは速攻で、全員の両腕に爆弾を仕掛けた。これで、いつでも爆破できる。


「見かけねぇヤツがいるな。」

いきなり、相手の親分らしきおっさんが言い放った。

「気にすんな。静かに終われば、何もない。」

「そうか。」

お互い黒いカバンを交換した。その場で中身を確認している。だが、相手側は怪訝な顔している。

「お前、だましたな。」

いきなり、懐から何かをだそうとしたんで、オレは相手全員の腕を爆破。みんな、転げまわって、呻いている。

「さすがに、すごいもんだ。」

「さ、引き上げだ。」

このおっさん、オレがいるからって、卑怯な手を使いやがったな。

「こういうのは、なしだな。正当な取引ならまだ知らず、こんなだまし討ちするなら、オレは降りるぜ。」

「わしらの取引自体、正当とは言えんな。」

「だけど、こんなことしてたら、いつまでたってもかたき討ちがおさまらんやんけ。」

「お兄さん、青臭いこと言いなさんな。相手が暴力にうって出ようとしたら、やってくれたらええねん。」

「じゃ、オレは降りるぜ。オレの流儀じゃないからな。」

「あの可愛い看護師さん、どうなるやろか?」

なにぃ~、こいつら、そこまでつかんでいたのか。

「人質か、さすがに卑怯な連中はどこまでも卑怯やな。」

「なんとでも言え、次も頼むで。」

くっそ~、どうしたらいいんだ。オレはその後、すぐにかおりちゃんに連絡を取ってみた。


「どうしたの?」

「いや、なんでもない。かおりちゃんの声が聞きたくてね。」

「そうなの、うれしいわ。」

「まだ、激務続くんだよな。」

「ごめんなさいね、明後日まで無理だわ。」

「わかった。じゃまた。」

ということは、明後日までは無事にいられるってことだ。次の取引は、その明後日だ。まいったな、どうしたら、いいんだ。オレは、やっぱり、彼女なんか作らなければよかったという後悔の念がよぎった。でも、今はそんなことは言ってられない。


「オイ、今回はお互い犠牲者がでないようにしろよ。」

「さあ、それはどうなるかわからんな。相手があってのことだからな。」

「少なくとも、こちら側から変なことすんなよな。もし、こちら側の問題ということがわかったら、オレは何もしないからな。」

「看護師の姉ちゃんが無事でいられるかどうかは、おまえに掛かっていることを忘れるなよ。」

クッソー、むかつく。恐らく、オレの行動も、かおりちゃんの行動も、こいつらに見張られてるんだろうな。どうすりゃ、いいんだ。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月14日

短編小説 「トラブル・アトラクター」 第14話

「おはよう。」

「よく眠れたわ。」

「そりゃ、よかった。」

「起きようか、コーヒーいれるよ。」

「まだこうしてたい。」

かおりちゃんはオレに抱き着いて離れない。まあ、いいか。って、オレにとっても、昨日は初めての体験だった。まあ、かおりちゃんが初めての彼女だしな。素肌に感じるかおりちゃんは、いい匂いだし、柔らかくて気持ちいい。


「かおりちゃんは、オレの初めて彼女なんだよ。」

「えっ、ほんと?じゃ、こうしてるのも初めて?」

「そういうことだね。」

「なんか、意外。」

「結構、遊んでるように見えるだろ?」

「うん。」

「否定せんのかい。」

オレたちは、夕方まで楽しい一時を過ごした。


「明日は早出なの。」

「じゃ、送って行くよ。」

「そうしてほしいのはやまやまだけど、やめとくわ。」

「なんで?」

「だって、また、厄介なことが起こるかも知れないし。」

まあ、そうだろうな。

「じゃ、気を付けて帰れよ。」

「うん、わかった。またね。」


 彼女が帰ったあと、オレは顧客に連絡を取って、仕事の打合せ日時を決めた。また、仕事開始だ。オレはいつものモードに戻った。こうなったら、仕事以外の雑音はシャッタウトだ。打合せ後に仕事のボリュームを見積り、納期との兼ね合いで集中する。結局、オレは20時間没頭して、プログラムを作り続けた。複数のプログラムの単体テストも、結合テストも終わり、バグも修正して、ひと段落したので、一服していると、なんとなく、スマホに目が行った。あれ、電気が入っていない。とっくにバッテリー切れになっていた。


 充電を始めてしばらくすると、たくさんの連絡が入っているのに、気が付いた。顧客は必要なら電話を掛けてくる。それ以外の連絡手段では、オレとコンタクトできないからだ。たくさんの連絡はかおりちゃんからだった。しまったな、こういうことは最初に言っておけばよかった。


「ごめん、仕事モードの時は、メールとか、SNSは一切、シャッタウトするんだ。」

「そうなんだ、返ってこないから、心配になって、何度も連絡しちゃった。」

「こういう時は、電話ってはじめから言っとけばよかったね。」

「わかった、今度からそうする。」

ということで、一件落着だ。


とにかく、オレの方は落ち着いたのだが、かおりちゃんは看護師の激務で大変みたいだ。でも、オレが個人事業主でよかった。彼女の休みに合わせてあげれるからね。さあ、今日は外食でもしようかと、お気に入りに居酒屋で大将の料理を頂きに行った。


 だが、その居酒屋に到着する前に、オレは数人のチンピラに囲まれた。

「ちょっと、顔貸してもらおうか。」

「嫌だと言ったら?」

「そんな選択肢はない。」

オレは両腕を掴まれ、そばにあった黒いバンに連れ込まれた。そこから、どこかに連れていかれたのだ。しかし、なんでこうなるかな。お腹減ってるし。移動中にオレへの危害はなかった。でも、どこまで走るんだろう。窓は黒塗りでまったく外が見えない。小一時間も走っただろうか、ようやく止まったところで、オレは降ろされた。そのまま、近くのビルに連れ込まれることになったのだ。


 エレベータで上がったところの扉をあけると、まあ、ドラマで見るような、明らかに暴力団の事務所っぽい部屋だ。正面にいかにも親分って顔をしたおっさんが座っていた。




(つづく)


posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | トラブル・アトラクター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする