2021年07月30日

短編小説 「AIみちこさん」 第2話

「おはよう。」

「リョウ、宿題できてる?」

「まあね。」

「ちょっと、見せて。」

いつもボクにねだってくるのは、小林英孝(こばやしひでたか)。ボクの親友だ。たいがい、コイツとつるんでいる。

「リョウくん、おはよう。」

「おはよう。」

彼女は幼馴染の高山涼子(たかやまりょうこ)、ボクの涼に「子」が付くか、付かないだけで、名前が似ている。涼子は男っぽい性格で、あんまり女子とつるまない。昼休みだって、ボクと小林と涼子の3人で食べることが多い。


 ボクが部活で遅くなっても、涼子は勝手にボクの部屋で待ってることがあるので、あんまり変なものは置いておけないんだ。ボクがやってる部活は陸上部。あんまり、足が速くないけど、種目は短距離だ。今日も、授業が終わって、みっちり、部活をやって、家に帰った。


「涼子ちゃん、来てるよ。」

「え~、またかよ。」

自分の部屋に入ると、しっかりくつろいでいる。自分はしっかり、着替えてきてる。ということは、ボクんちで晩御飯まで食っていくつもりだ。涼子んちは、両親とも働いていて、二人とも遅くなるときは、我が家に来る。まあ、家が近いせいもあるけどね。


「ちょっと、ボクが着替えるまで、台所でかあさんと話でもしてきなよ。」

「あれ~、恥ずかしがってんの。」

「いいから、いけよ。」

涼子を追い出すと、服を着替えて、カバンから宿題を出して机に置いた。こうしておけば、忘れることはない。

「ご飯よ~。」

「は~い。」

こんな日は、3人でご飯だ。お父さんはいつも遅い。

「さあ、涼子ちゃんも座って。」

「はい。」


 今日は中華だ。チャーハンに餃子、エビチリ、サラダその他もろもろ。

「あとで、宿題、一緒にやろうよ。」

「リョウくん、涼子ちゃんに教えてもらったら。」

「逆、逆、ボクが教えてんの。」

「違うよ。私だよ。」

いつも静かな夕飯が、この時ばかりはやかましい。でも、お母さんはうれしそうだ。食後、ちょっと一服してから、部屋へ上がった。


「ん、じゃ、やるか?」

「今日のは、難しいかな?」

「いや、そんなに難しくなかったと思うよ。」

「よかった。」

30分ほど、真剣に問題を解くと、涼子もほぼ終わりそうだった。

「じゃ、あとで、送っていくよ。」

「ありがとう。」

宿題が終わると、リビングへ戻り、また、3人でテレビを見る。適当な時間になると、ボクが送っていく。いつものパターンだ。


 ようやく、ボクひとりの時間が味わえる。のんびり、部屋でくつろいでいると、不思議なことが起こった。

(リョウサマ。)

いきなり、声が聞こえた。

「えっ、だれ?」

(AI-206111REX)

「はぁ?」

なんじゃ、そりゃ。それにどこに女の人隠れてるの?確かに、声は女性だ。


(回復まで、かなりの時間を要します。回復したら、またお会いしましょう。)

「ちょっと、待って。」

しばらく待ったが、それ以後何も聞こえなくなった。いったい、なんだったんだろう。今の声はどこから聞こえてきたんだろう。でも、その声はそれっきりだった。1日経っても、数日経っても、もう聞こえることはなかった。ボクもそのまま、そのことはほとんど思い出すこともなくなった。



(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | AIみちこさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月29日

短編小説 「AIみちこさん」 第1話

 ボクは学校の帰りに、近くの河原でボーっとしていた。たまにそんなことをする。まあ、ボク流の息抜きだ。子供でもそんなことが必要なことがあるのだ。たまには部活を休みたいことだってあるし、まっすぐ家に帰りたくないことだってある。そんなときは、この河原のお気に入りの場所に座って、ボーっとするのが一番いいんだ。


 見上げると段々空が赤くなってくる。同じようにみえる空も、雲の具合でいろんな景色になる。そんな景色を見てると、周りが少しづつ薄暗くなっていく。ふと、河原に目をやると、なんか、ボクと同じようにボーっと、なんとなく薄明るいところが見えた。多分、見間違いだ。でも、やっぱりなんとなく、薄っすらと光っているようにも見える。ボクは立ち上がり、その場所へ行った。なんとなく光っていたのは、河原の石?だった。こんなにたくさんあるのに、それだけが薄っすらと光っている・・・感じがする。


 ボクはそれを手に取った。とてもなめらかで、ちょうど手のひらに収まる。川に投げれば、どこまでも跳ねていきそうだ。一瞬、投げてみようかと思ったが、やめた。こんな綺麗な石を投げてしまうのは、もったいない。ボクはカバンに入れて、帰途についた。河原沿いを自転車で10分ほど走ると、家に着く。


「ただいま。」

「お帰り。」

「ご飯は?」

「もうすぐ、食べれるよ。」

「今日は何?」

「カレーよ。コロッケカレー。着替えてらしゃい。」

カレーといえば、コロッケカレーなんだよな、うちは。うちのカレーは、恐らく変わっている。多分、普通はニンジンにジャガイモ、タマネギと肉が入っていると思うじゃん。でも、違う。うちのはまるごとのたまねぎを、そのまま入れて、完全に溶け込ませて、あとはトマトと肉なんだ。だから、酸味が強い気がする。まあ、それが我が家の味なんだろうな。


 二階の自分の部屋に、カバンを置いて、着替えると、一階の食卓についた。

「座ってないで、お皿に好きなだけご飯をよそって来なさいよ。」

「はーい。」

そう、我が家は自分が食べる分だけ、自分でつぐ。カレーもだ。あとは、好きなだけ、サラダを自分の器に入れて、好きなドレッシングをかけて食べるのだ。


 食事が終わると、自分の部屋に戻った。英語の宿題があったっけ。カバンを開けて、英語の教科書を取り出そうとすると、

薄っすらとカバンの底が光っている。あ、そうだ、あの石だ。ボクは机のスタンドの明かりの下で、その石をまじまじと見た。やっぱり、綺麗な石だ。こんな石が河原に落ちているなんて、なんとなく不思議な気がした。おっと、宿題の量が多かったんだ。ボクは石を置いて、宿題に取り掛かった。だけど、なんでこんなに多いんだ。一日じゃ無理だろ。文句を言いながらも、なんとか仕上げた。しんど~。今日はもう寝よう。


 翌日、学校に行く準備をしていると、スマホの電池がないことに気がついた。あちゃ~、まじったな。仕方がない、予備電源持っていくか。それだけ、カバンが重くなる。でも、自転車だから、まあいいか。


 その日は相変わらずの一日で、部活もあったので、遅くなった。家に帰るとバタンキューしたかったが、お風呂に入って、さっぱりしたかったんで、のんびり湯につかってた。さすがに浸かり過ぎて、汗が止まらない。クーラーで涼んでから部屋に戻った。部屋の電気をつける前に、机がボーと明るいのに気が付いた。あれ?と思ったが、そうだ、あの石だ。やっぱり、光ってるんだ。その石を握ると何となく、暖かく感じた。ボクはその石を握り、ベットで横になった。なんか、気持ちいい。ボクはそのまま寝てしまった。


 翌朝、いつものように目が覚めた。そういえば、あの石は、と思ったが、見当たらない。確か、握ったまま、寝てしまったんだよな。ベットの上を探したが、ない。どこいったんだろう。よくわからなかった。時間がないから、学校にいく支度をして、階段を降りた。

「ちゃんと、食べて行きなさいよ。」

「わかってるって。」

パンと冷ましたスープと目玉焼きを頬張った。

「いってきま~す。」

「はい、いってらっしゃ~い。」


 ボクはいつものように、自転車にカバンを括り付け、走り出した。すぐに河原の道に入るので、視界が開けて気持ちいい。しばらく走ると、学校に到着する。自転車置き場に置いて、教室へ向かった。ボクは、松島涼(まつしまりょう)、中学2年だ。


続きはここ↓↓↓

(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☁| Comment(0) | AIみちこさん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月02日

短編小説 「占い師ケン」 第2話

 とにかく、オレは夢中で占いをしまくった。なじみのお客さんも増えた。こういう商売は信用が大事で、当たらないとなったら、とたんに客はいなくなる。だけど、当たらないことは絶対にない。だから、口コミでどんどん広がっていく。毎日やっても、絶対に客は来る。コストパフォーマンスは最高だ。


 実家の両親に占い師をやっているというと、そんなヤクザな商売はやめて、まっとうに就職しろってうるさい。ちゃんと個人事業主だし、確定申告もしてる。何も問題ない。だが、両親は全然わかってくれない。まあ、別にそれでもいいけどね。妹の恵子は、オレを支持してくれている。

「だって、兄ちゃんの占い、本当に当たるのよ。すごいんだから。」

まあ、妹の頼みなら、夜の繁華街じゃないところでも、ちゃんとやってあげている。


 ある日、仕事を終えて居酒屋でひとり飲んでいると、満席でもないのに、なぜかオレのテーブルにひとりの女が座った。

「ここ、いいですか?」

なんだ、こいつ。

「別にいいですよ。」

「ご一緒ついでに、一緒に飲みませんか?」

「だいぶ前から飲んでいるから、そんなにご一緒できませんよ。」

「それでもいいです。」

突然、何なんだこの人は?オレはその女をみた。ふ~ん、遺産について悩んでいるのか。

「占いをなされていますよね。」

オレを知ってる?

「私をみてほしいんです。」

「遺産の件ですよね。」

「わかるんですか?」

そりゃわかるよ。

「でも、ここではやめておきましょう。ゆっくり飲ませて下さい。」

「わかりました。」

彼女も飲み物を注文し、食べ物も数品注文した。

「よければ、食べて下さいね。」

「自分の分で、十分ですよ。」


 オレは彼女の状況をいろいろとみていた。結構な遺産が転がり込んでくるみたいだ。

「お名前を聞いてなかったですね。」

「あ、すみません、中川孝子と言います。」

「私のことは・・・」

「占い師のケンさんですよね。」

知ってるんだ。

「じゃ、ここではその話はなしでお願いしますね。」

「わかりました。」


 この人はつい最近まで、遺産のことは知らなかったんだな。シングルだった母親はずっと黙っていたけど、有名資産家との間に、この子は生まれたということか。で、もって、その資産家には子供がいないし、配偶者もいない。お金の亡者の親族だけがいるってことか。この子の母親は亡くなっているから、相続はこの子だけってことだ。オレが占って、数百万ほどもらってもばちは当たらんだろうな。そんなことを考え、のんびり食事をしながら、飲んでいた。彼女もオレのペースに合わせて、食事をしていた。食事が終わって、オレたちは一緒に店をでた。


 さて、どこで話をしようか。

「誰かに聞かれたら嫌なんで、ケンさんのお家でお願いします。」

オレんちか、絶対いやだね。オレはいままで誰も入れたことがない。オレだけの城だからな。仕方ないから、別途借りている部屋へ、いくことにした。普通のワンルームだ。こういうときもあるので、借りっぱなしにしている。月に1回ほど掃除しにいくだけだ。


「どうぞ。」

「お邪魔します。」

ワンルームには、テーブルと椅子があるだけだ。小さな台所があるから、お茶くらいは飲める。

「コーヒーでも飲みますか?インスタントですが。」

「あ、はい、お願いします。」

コーヒーを入れて、テーブルについた。

「さてと、突然、降って沸いた遺産の話をどうしたらいいのか、悩んでいるというわけか。」

「はい。」

「資産家のあなたのお父様は、相続させる子供を探していて、あなたを見つけた。あなたは、まさか自分のお父様が、そんな資産家なんて思いもしなかった。」

「はい。」

「お母さまもそんな話をしてこなかったから、あなたは全然知らなかった。お母さまは亡くなってしまっているから、確認しようがない。」

「よくわかりますね。」

「占い師ですから。」

「あなたは、DNA検査待ちですね。でも、間違いなく、その資産家のお父様のお子様です。」

「そんなことまでわかるんですか?」

「ここから先は、あなたが悩まれていることについてです。」

「はい。」

「お父様は、もうじき亡くなります。」

「えっ、そうなんですか。」

「だから、あなたは、早めに会いにいった方がいいです。」

「わかりました。」

「で、遺産の相続はおやめになった方がいいです。」

「それはなぜですか?」

「必要以上のお金は人を狂わせます。もし、受け取るなら、全額、恵まれない人達とか新型ウィルスで、生活が困窮している人へ寄付してしまいなさい。」

「はい。」

「受け取らないなら、お父様の亡くなったあと、その家にはかかわらないほうがいいです。」

「そうなんですね。」

「必要以上のお金は、ろくなことになりませんよ。」

「わかりました。」


 でも、この人は、オレの忠告を無視した。まあ、仕方がない。それが人生なんだから。彼女の選択は、最悪な事態を迎えた。欲に目がくらんだ親族に殺されたのだ。これ以上、オレは何もしようがない。彼女の選択なんだから。




(つづく)

posted by たけし at 12:00| 兵庫 ☔| Comment(0) | 占い師ケン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする